東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
展覧会・イベント情報 アーティストファイル エッセンス ビジョン スポット
マイページ サイトマップ
Tokyo Art Navigationとは?
TOPICS
TOP
トップ > トーキョー・アートビジョン
トーキョー・アートビジョン
No.013 作家とともに展覧会をつくる喜びを感じています。
語り手:東京都写真美術館 学芸員 岡部友子(おかべともこ)さん

世界的な評価を受け日本を代表する写真家、森山大道(もりやまだいどう)氏。その「森山大道展」が来る5月13日(火)から東京都写真美術館で開催されます。2年前からその企画チームに加わり、展覧会準備で奮闘しているのが、学芸員の岡部友子さん。「森山大道展」の一番の見どころを語っていただきました。

写真:森山大道氏(写真左)

森山大道氏(写真左)
商業デザイナー経て、1963年にフリーの写真家となる。1967年《にっぽん劇場》で日本写真批評家協会新人賞受賞。1999年サンフランシスコ近代美術館、2003年カルティエ現代美術財団で個展を開催するなど、海外でも幅広く活躍している。2004年ドイツにて写真協会文化功労賞受賞。

2年前からの努力の積み重ねが実現する喜び

 東京都写真美術館では、開館と同時に17名の重点収集作家の作品を集めて個展を順次開催してきました。森山さんもそのひとりです が、90年代は森山さんの展覧会が海外で盛んに取り上げられた時期でもあり、今までタイミングが合いませんでした。ですから、今回の満を持しての個展開催は、多くの方々が待ち望んでいたことでしょう。

 森山さんは、60〜70年代に「アレ、ブレ、ボケ」と形容されるハイコントラストや荒々しい写真表現により一時代を確立し、常に「写真とは何か」を問い続けてきました。いまや世界的な評価も受け、日本を代表する写真家です。今回の展覧会の一番の魅力は、「森山大道展」に向けて2004年から3年の歳月を費やして制作した、最新作《ハワイ》が観られること。2007年に出版された一連の作品は、森山さんがいままでつくりあげてきた独自の世界観を通して、ハワイという被写体をどのように写真の中で表現するか、非常に期待されていたものです。写真の大家でありながら新作を期待できる作家は、非常に稀有な存在といえるのではないでしょうか。

 個展の話があったのは、私が東京都写真美術館に転任してすぐのことでした。ハワイを撮影している最中の森山さんともお会いしました。リクエストの高かった森山さんの展覧会の企画をはじめから担当させていただき、一緒にさまざまなアイディアを出し合いながら進めてこられたことは、最高の喜びだと思っています。

《青山(エロスあるいはエロスではないなにか)》1968年 東京都写真美術館蔵
《青山(エロスあるいはエロスではないなにか)》1968年 東京都写真美術館蔵
《新宿》2001-02年
《新宿》2001-02年

「展覧会はショーである」を地でいく森山ワールド

 今回の展覧会は、2つの仕掛けにより、ちょっと特別な構成になっています。森山さんの写真家としての「足跡」と「現在」を見せるという2本立ての企画です。「I.レトロスぺクティヴ1965-2005」の部門は、森山さんの写真を時代と共にストーリー展開していく形で、東京都写真美術館の収蔵品を中心に1965年から2005年までの活動を網羅。「II.ハワイ」は、2004年から3年間かけて撮ったハワイでの作品を大胆な構成で紹介します。美術館で組み立てる「I.レトロスぺクティヴ1965-2005」に対して、「II.ハワイ」はほとんど森山さんにセレクションや会場構成をお任せして相談しながら進めています。森山さんが自身で展覧会全体のディレクションを行うことは貴重な機会ですので、彼の写真展示に対する空間の構成や考え方などを知るうえでも必見の展覧会ですね。

 森山さんは、「展覧会はショーである」といいます。そういったショーアップ面での特色のひとつが特大プリントを飾ることです。エプソンさんの協力をいただきましたが、4×6メートルのプリントにより、原寸大のハワイの大自然が会場に広がることになります。その他の作品も1×1.5メートルの大型プリントで、全体的にダイナミックに観賞することができます。また、森山さんの要望でもありますが、照明はフラットな白い光を考えています。美術館の展示用のライティングは、どうしても少し暗めで黄色いスポットが当たる感じですが、「影のない部屋をつくる」という考えで照明の当て方にこだわっています。どこまで技術的にできるか、森山さんとコミュニケーションをとりながら頑張っているところです。


昔からのこだわりの場所、そこがハワイ?
《ハワイ》2007年 《ハワイ》2007年
《ハワイ》2007年(写真上・下)

 森山さんに、なぜハワイなのかという疑問を投げかけてみたところ、戦後の真っ只中に小学生だった森山さんは、メディアを通じて嫌というほどハワイが記憶されていて、ある種ずっとこだわっていた場所だったそうです。ハワイを舞台にした映画や歌謡曲などによってつくられたハワイのイメージは、圧倒的にモノクロの世界だったといいます。そして、実際に行ってみると、既視感というよりはかつて昔ここに暮らしていたと思えるような、日本人に通じる、何か土地から感じるものがあったと話してくれました。一般的なハワイのイメージは、日の光が燦々と注ぐ楽園という感じですが、森山さんは何か島独特の暗がりというか、茂みの中の闇のようなものが気になったといいます。当初、どんなハワイが出来上がるか予測がつかなかったそうですが、いままでの森山さんの世界でありながら、大らかなハワイの空気みたいなものも出ていると思います。ハワイの土地の匂いを彼独自の嗅覚で嗅ぎ分ける、作品の中にそういったものが表されています。

「森山大道展」はテーマを2つに分けたことによって、“アカデミックに森山大道を知る”、“ひたすら森山大道の世界を楽しむ”という両面から森山さんの魅力に迫ることができます。写真の勉強を始めたばかりの人で、森山さんの足跡を知りたい人と、今の森山さんが追求している写真に興味を抱く人の両方のニーズに応えられるようにしています。若い人たちにも人気の高い森山さんの過去と現在を一度に見ることができる、絶好の機会だと思います。

次回は...
岡部友子さんの仕事の現場を訪ねます。[5月8日(木)アップ予定]

岡部友子 写真
 
岡部友子
(おかべともこ)

1983〜2002年、東京都庭園美術館学芸員として展覧会事業に携わる。2003〜2005年、(財)東京都歴史文化財団事務局を経て、2006年、東京都写真美術館に配属。2007年から企画係長として勤務。

インフォメーション

◆森山大道論
「森山大道論」淡交社刊 本体価格2,400円
多彩な執筆者による論評に加え、美術館で一般より公募した論文1編を掲載した森山大道論初の試み。代表作品に加え、未発表作品の図版も多数掲載します。

◆森山大道連続対論
5月23日(金) 18:00〜20:00
森山大道 × 大竹伸朗(美術家)進行:笠原美智子(東京都写真美術館学芸員)
5月24日(土) 18:00〜20:00
森山大道 × 多木浩二(美術・写真評論家)進行:清水穣(同志社大学准教授)
5月30日(金) 18:00〜20:00
森山大道 × 金平茂紀(TBSテレビ報道局長)進行:岡部友子(東京都写真美術館学芸員)
定員:各190名
参加方法:当日10時より展覧会チケットをお持ちの方に整理券をお配りします。
※詳細は、東京都写真美術館の公式ホームページ(http://www.syabi.com)をご参照ください。

創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
メールマガジン登録申し込み
デジタルミュージアム
東京・ミュージアム ぐるっとパス2007
詳しくはこちら