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トーキョー・アートビジョン
No.015 今年の夏は「スタジオジブリ・レイアウト展」で決まり!
語り手:東京都現代美術館学芸員 森山朋絵(もりやまともえ)さん

写真:森山朋絵

設立当初より所属していた東京都写真美術館から、2007年4月に東京都現代美術館へ転任された学芸員の森山朋絵さん。メディアアートやアニメーション分野で世界的な活躍を見せています。この夏、7月26日(土)から東京都現代美術館で開催される「高畑・宮崎アニメの秘密がわかる。スタジオジブリ・レイアウト展」の1番の見どころについてお話をうかがいました。


「ディズニー・アート展」、「男鹿和雄展」につづく第3弾
「もののけ姫」1997年(c )1997 二馬力・GND
「もののけ姫」1997年(c)1997 二馬力・GND
 東京都写真美術館(以下、写美)では映像部門のシリーズ展を担当し、映像メディア史を紹介する「イマジネーションの表現」「アニメーション」「立体視」「拡大と縮小」「記録としての映像」という基本コンセプトのもと、約20年間に50本以上の企画展・ワークショップを行いました。スタジオジブリをはじめとするアニメーション分野の方々には、写美の準備室時代からいろいろな展示やワークショップに協力いただき、コラボレーションする機会を数多くいただいています。

 今回、東京都現代美術館(以下、現美)で開催する「スタジオジブリ・レイアウト展」は、これまでの経験を活かしたうえで、 新しい視点を取り入れた付加価値のあるものにしたいと思っています。現美のアニメーション展の中でも、知られざる貴重な作品資料を紹介した「ディズニー・アート展」(2006年)、 背景美術に着眼した「ジブリの絵職人 男鹿和雄展」(2007年)に続き、アニメーションを深く知る企画展の第3弾という意味も込めています。特に今年は、新作映画「崖の上のポニョ」の公開とも、 時期を同じくしています。また、スタジオジブリ・日本テレビ・東京都現代美術館の三者が力を合わせて開催するという点も、公的な文化施設からの発信として意義あるものだと考えています。昨年の 「男鹿和雄展」は、おかげさまで大変多くの方にご来場いただきました。多くのお客様に満足していただくために、三鷹の森ジブリ美術館にも企画と運営ノウハウのご協力をいただき、 今年の「レイアウト展」は入場券を日時指定にしています。

アニメーションの画面構成を設計する
「もののけ姫」1997年(c)1997 二馬力・GND
「もののけ姫」1997年(c)1997 二馬力・GND

 「レイアウト」という言葉は、まだ一般的に馴染みがないかもしれません。アニメーションの制作プロセスの「絵コンテ」については、2002年に「絵コンテの宇宙」という展覧会を写美で企画したことがあります。私たちは通常、ミュージックビデオやゲーム、アートアニメーション、TVコマーシャルや映像作品について、完成作品だけしか目にしないので、絵コンテが実際にどう映像になるのか体験できる展示や、「こまねこ」というアニメーションを実際に展示室内スタジオで公開制作するプロセスなどを紹介しました。

 今回の展示では、絵コンテの次のステップである「レイアウト」がテーマになります。昨年の「男鹿和雄展」では、アニメーションの中に流れる時間を止めたところにある背景画の美しさとその魅力を紹介しました。今回は、そこからさらに一歩進んで、アニメーションにおける「レイアウト」というシステムに焦点を当てています。

 多くの人が協力してつくりあげるアニメーションの制作工程は、まず企画・原作や脚本があり、次に、それらを絵にする絵コンテというものがつくられます。そこにキャラクターの表現や、美術などの要素も多数加わりますが、実際に絵を動かす前に、「レイアウト」という重要なプロセスがあるのです。絵コンテは、映画やアニメーション作品の全体の設計図なので、各コマはラフに描かれていることもあります。レイアウトは、絵コンテをもっと具体的にしていく作業で、アニメーションの画面そのものを構成する作業になります。1枚の紙の中に背景やキャラクターの配置、動きの指示やスピードなど、その画面のすべての指示が書き込まれます。

 アニメーションは、アニメーターがキャラクターを描き、動かし、美術スタッフは背景を描くというようにある種の分業だといえます。レイアウトの段階で、メインスタッフが全カットをチェックし、あるクオリティまで引き上げる。そして、別々につくっているものが絶妙な一体感を醸し出す仕上がりになるのは、メインスタッフ全員がレイアウトで同じ情報を共通できるということと、このレイアウトの精緻さのおかげなのです。スタジオジブリのアニメーションのクオリティの高さの秘密ともいうべきこのレイアウトのシステムは、1974年の「アルプスの少女ハイジ」で高畑勲監督と宮崎駿監督が初めて本格的に導入したものといわれています。


日本のアニメーションに力を与えたのがレイアウトシステム
「天空の城ラピュタ」1986年(c )1986 二馬力・G
「天空の城ラピュタ」1986年(c)1986 二馬力・G
 今回の展覧会では、スタジオジブリ以前の「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「ルパン三世」などに始まり、「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」などに新作「崖の上のポニョ」を加え、約1000点以上のレイアウトを、体験型の要素も含めて展示します。ジブリ作品の歴史とその変化も伝わってくる展示になります。基本的には線画で表現されているレイアウトは、淡い彩色がされていますが、ドローイングの力が主役だといえます。この線画の魅力は、古くは鳥獣戯画などに見られるとされるアニメーションのルーツをたどり、日本美術の根源的な部分を見せているということができるのではないでしょうか。

 日本のマンガやアニメーションが世界的な人気を得て久しくなりますが、なぜ成功しているのかについての分析はまだ十分だとはいえません。キャラクターがかわいいという魅力もひとつの要因ですが、もっと分野全体を俯瞰してみる必要があると思います。私はメディアアートの未来を考えるとき、教育の問題がとても大切だと思っています。私が、映像分野の仕事に関わり始めた頃から公立学校のメディア教育についての議論が行われていました。子どもたちにどのようなメディア教育をするかを考えていくと、美術大学の人だけがメディアアートをやっていても意味がない。行政とかビジネスの世界で働く人に向けた教育も非常に大切になってくると思います。教育指導要領は10年ごとに改正されますが、2002年から文部科学省は義務教育として映像メディア教育を採用しました。中学、高校の美術の時間の中に、アニメーションやイラストレーション、CG、マンガ、映像、写真を使った表現を取り入れることが必修になったのです。子どもたちが次世代のつくり手・受け手になることを考えて、作品の制作プロセスの重要性に眼が向けられるようになったと思います。メディアリテラシーというものを考えたとき、映像教育は立派な機材がなければできないものではありません。ものをつくる工夫とか手法とか精神というものを知ることが、アーティストになる人もならない人にも、文化行政に携わる人にとっても大切なのです。

今回の展覧会の企画段階では、せっかくアートミュージアムで行うのだから、現代美術としての価値を問うことにも挑戦できたら、と個人的には考えました。制作プロセスにフォーカスしてレイアウト展を行う意義は、映像メディア表現の根幹を問うものになると考えています。日本のアニメーションに力を与えたのがレイアウトシステム。映像メディア教育の面からも、機材の扱い方を中心に教えるメディアリテラシーとはひと味違った考え方、創作作業の進め方についての新しい視点を提案できる展示だと思います。

次回は…
引き続き東京都現代美術館学芸員の森山朋絵さんの多彩な活動を紹介します。[7月10日(木)アップ予定]


  森山朋絵 写真
 
森山朋絵
(もりやまともえ)

東京都現代美術館学芸員(事業企画課企画係主任)/東京大学大学院情報学環特任准教授。筑波大学芸術専門学群博士課程前期修了。在学中からテクノロジーアートなどの企画展や執筆を行う。1989年、東京都映像文化施設(現・東京都写真美術館)の創設に参加し、主に映像展示室(映像工夫館)の設立準備を行う。早稲田大学ほかで教鞭を執りつつ、東京都写真美術館では、映像メディアの企画展・収集・普及を担当した。また、UCLAやバウハウス大学で講義し日本のメディアアートの普及に努め、ゲッティ美術館やMITメディアラボ、独ZKMなど各国から招待を受ける。2003年から欧州でアルスエレクトロニカ・グランプリのインタラクティブアート/ネットヴィジョン部門審査員、2005年から北米でシーグラフの審査員、2008年シーグラフアジアのアート/技術部門議長を務める。

主な企画展:「開館記念展イマジネーションの表現」「映像体験ミュージアム」(東京都写真美術館、全国巡回展)「ミッション:フロンティア」(日本科学未来館共催)「グローバルメディア2005/おたく:人格=空間=都市」「10周年映像展 超[メタ]ヴィジュアル―映像・知覚の未来学」(東京都写真美術館、フランス巡回)「文学の触覚」など。主な著書:『映像体験ミュージアム/ポスト・デジグラフィ』(監修)工作舎、『絵コンテの宇宙』(監修)美術出版社、『Meta Visual』(監修・仏語版)FILIGRANES EDITIONSなど。

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