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トーキョー・アートビジョン
No.016 限りないメディアアートの可能性を探求する
語り手:東京都現代美術館学芸員 森山朋絵(もりやまともえ)さん

写真:森山朋絵

森山朋絵さんは、東京都現代美術館における学芸員の仕事とともに、東京大学や早稲田大学、UCLAなど国内外で教鞭をとり、メディアアートについての教育を行っています。また、海外美術館の客員学芸員や国際展の審査員を務めるなど多角的な活動をしています。今回は森山さんの多彩な活動についてお話をうかがいました。


国際展で日本の若手アーティストが活躍
アルスエレクトロニカ・トロフィーとドナウイベント
アルスエレクトロニカ・トロフィーとドナウイベント
 ルネサンス美術などの美術史を専攻した私が、今、メディアアートを中心に活動しているのは不思議な気がします。幼いときに訪れた大阪万博と、筑波大学在学中に、キャンパスのそばで開催されたつくば科学万博が、大きく影響していると思います。また、1970年の大阪万博パビリオンのプロデュースやつくば博でも先駆者として活躍した前衛グループ「実験工房」(1950年代設立)のメンバー山口勝弘らが、私の先生でした。アート&テクノロジーを彼らに学んだ同世代(岩井俊雄、明和電機ら)が現在メディアアートの世界で活躍し、今はその教え子世代も活躍しています。私も学生時代から少しずつ映像やアニメーションに関心を持つようになり、1989年に東京都写真美術館(以下、写美)の設置準備室に学芸員として参加しました。

 日本のメディアアートは、国際的な舞台で非常に高く評価されていますが、国内での認知度は低いのが現状です。2007年のミラノサローネのTOYOTAアートエキシビジョンで注目された平川紀道さんや木本圭子さんなど、優秀なアーティストを多く輩出しているにもかかわらず、日本では活躍の場がまだ十分とはいえません。一方で、文化庁メディア芸術祭/学生CGコンテスト出身の若手作家も健闘し、メディアアートの国際展であるアルスエレクトロニカの若手発掘部門「ネクストアイディア」において、初回(2004年)の上位3位はすべて日本の学生でした。

 メディアアートの国際展には、主なものが2つあります。アメリカのシーグラフ(SIGGRAPH)は、全米電算機協会が主催しているデジタルアート/技術の祭典。毎年8月に行われ、35周年を機に、アジア大会をスタートさせます。今年、私がアートと技術の議長を務める第1回シンガポール大会に続き、来年は論文入賞者の多い日本で開催されます。オーストリアのアルスエレクトロニカ(Ars Electronica)は毎年秋に開催され、私は2003年から数度、選考委員を務めています。もともとは、ブルックナー音楽祭に対抗して、デジタルミュージックの町おこしとして始まりました。今は、メディアアートの一大フェスティバルとなり、7部門(コンピュータアニメーション/ビジュアルエフェクト、インタラクティブアート、コンピュータミュージック、デジタルコミュニティーズ、アンダー19、ネクストアイディア)で構成されています。

 毎年独自のテーマ展が開催され、5日で約10万人もの人が集まります。84年に冨田勲さんのドナウイベントがNHKで放送されたので、記憶にある方も多いと思います。坂根巌夫先生の紹介のもと、河口洋一郎、坂本龍一×岩井俊雄、藤幡正樹、八谷和彦、池田亮司、刀根康尚、明和電機、三輪眞弘など、多数の日本作品が受賞の実績を持っています。来年2009年に30周年を迎えて新美術館も設立され、日本との交流も併せて今後も重要な発信の場となるでしょう。

ジャンルを超えた新しい表現領域
「ミッション:フロンティア」展 2004年
「ミッション:フロンティア」展 2004年

 日本の芸術や学問の領域については、専門的に絞った掘り下げ精神のような面を感じます。油絵は油絵、彫刻は彫刻といったような、ひとつのジャンルを超えることは許されない雰囲気がかつてはあったのではないでしょうか。もっと、各領域を等間隔に行き来する自由度を持てればと思います。メディアアートは、それが可能な分野だと思っています。そのひとつの提案として行った企画展が、昨年開催した「文学の触覚」でした。純文学の作家とメディアアーティストのコラボレーションによって、違う領域でありながら、共感覚的な新しいものが生まれる展覧会になりました。今後、巡回展として日本の各地で開催したいと考えています。写美で行った内容に加えて、それぞれの地域の文学者とメディアアーティストが新しい作品をつくり、成長していくメディアとしての展覧会をめざしたいと思っています。ヴェネチア建築ビエンナーレの「OTAKU」展(2005年)を日本に持ってきたときや、「超[メタ]ヴィジュアル」展(2005年)フランス巡回の際にも感じたことですが、展覧会は一過性のものではなく、場所を移すことによって成長し、観る人の受け止め方が変わり、制作者もさまざまな発見と学びがあります。

「グローバルメディア2003/2005」展フライヤー
「グローバルメディア2003/2005」展フライヤー

 2004年には「ミッション:フロンティア」(日本科学未来館共催)という企画展を行いました。映像メディアを駆使して、人類に残された最後の未知の分野である「宇宙」「深海」「脳」などを探求する試みを行いました。この展覧会をきっかけとして、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の方々とともに、国際宇宙ステーション「きぼう」における日本の宇宙芸術ミッションのプロジェクトをお手伝いする機会を得ました。国際宇宙ステーションで無重力空間でのアート実験を行うのですが、真の「宇宙芸術」を成立させ面白くしようと、今年3月に意見交換会を行いました。宇宙での実験では、非常事態を意味する色は使えないなど制約はありますが、芸術系・技術系を問わず多くの方が参加し、さまざまなアイデアや課題が検討されました。科学・工学系との融合「ハイブリッドアート」とともに、ひとつの新しいプラットフォームになるのではと思います。


国際的な議論のステージで発言していく
「映像体験ミュージアム」展より展示風景
「映像体験ミュージアム」展より展示風景
 メディアアートは紙メディアだけでは表現しきれないものです。美術館という空間を飛び出し、今後ますます重要な役割を果たすようになるでしょう。かつて、メディアアートを誰もがつくる・見ることが難しい時期もありました。今はそれを乗り越え、日常の中で、またはビジネスと直結する部分でも注目され、ゲームやデザイン、IT家電など、産業としてのニーズが生まれ、開発も行われています。ITプロダクトは、メディア教材やパブリックアートとともに、次世代のあり方として期待されています。しかし、その一方で、アートの領域としての正当な評価は足りないと感じています。学問としての体系化・確立もこれからで、今後はアカデミックな価値をさらに探っていく必要があると思います。

 ICC(NTTインターコミュニケーションセンター)が企業によるメディアアートの先端的発信の場だとすれば、東京都の公立美術館である現代美術館や写真美術館だからこそできる役割もあります。写美は映像メディアの文化施設としては日本初のもので、幻燈機や影絵からバーチャルリアリティまで多数の収蔵品があり、教育的な体験型展示や、映像文化史を等距離に往来する多様な見せ方が可能です。施設間連携でより豊かな活動を展開することも可能になると思います。

 メディアアートの展示は、電源の位置や照明、設営日程などの物理的な条件を考慮しなければなりません。今後は、さらにノウハウを広く伝えていかなければならないと思います。写美では通常の展示替えは3日程度でしたが、メディアアートの場合は機材や調製の点から十分な準備の時間を必要とします。先日、現代美術館で開催された大規模な「SPACE FOR YOUR FUTURE」では、展示替えに十分な日数を設け、メディアアート部分の機材・人材提供で企業との社会連携を得たことも成功の一因だと思います。これからの文化施設では、企画や収蔵品の内容・マネジメントだけでなく、人的ネットワークやノウハウの共有がより重要な要素になっていくでしょう。

 今後も、美術館では学芸員として質の高い展覧会や収集活動をめざすと同時に、社会連携や教育分野にも力を入れていきたいと思います。国際審査の席や、P.ゲッティ美術館やMITメディアラボなどの滞在中に「日本的なもの」への評価や従来の日本のイメージと実態とのギャップを実感しました。異なる領域や人をつなぎ、現状の面白さや可能性を正しく発信することが、私の役目だと思っています。研究活動の継続が難しい日本の学芸員と、専門職としてのキュレータの違いを考えさせられることもありますが、既存のイメージだけでない魅力や日本固有の表現の可能性を発見し相互に伝えるためにも、国際的な議論のステージで発言を続けていきたいと思っています。

  森山朋絵 写真
 
森山朋絵
(もりやまともえ)

東京都現代美術館学芸員(事業企画課企画係主任)/東京大学大学院情報学環特任准教授。筑波大学芸術専門学群博士課程前期修了。在学中からテクノロジーアートなどの企画展や執筆を行う。1989年、東京都映像文化施設(現・東京都写真美術館)の創設に参加し、主に映像展示室(映像工夫館)の設立準備を行う。早稲田大学ほかで教鞭を執りつつ、東京都写真美術館では、映像メディアの企画展・収集・普及を担当した。また、UCLAやバウハウス大学で講義し日本のメディアアートの普及に努め、ゲッティ美術館やMITメディアラボ、独ZKMなど各国から招待を受ける。2003年から欧州でアルスエレクトロニカ・グランプリのインタラクティブアート/ネットヴィジョン部門審査員、2005年から北米でシーグラフの審査員、2008年シーグラフアジアのアート/技術部門議長を務める。

主な企画展:「開館記念展イマジネーションの表現」「映像体験ミュージアム」(東京都写真美術館、全国巡回展)「ミッション:フロンティア」(日本科学未来館共催)「グローバルメディア2005/おたく:人格=空間=都市」「10周年映像展 超[メタ]ヴィジュアル―映像・知覚の未来学」(東京都写真美術館、フランス巡回)「文学の触覚」など。主な著書:『映像体験ミュージアム/ポスト・デジグラフィ』(監修)工作舎、『絵コンテの宇宙』(監修)美術出版社、『Meta Visual』(監修・仏語版)FILIGRANES EDITIONSなど。

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