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トーキョー・アートビジョン
No.022 今いる立場は、必然の上に成り立っている
語り手:アーティスト 西尾康之(にしおやすゆき)氏

《Crush セイラ・マス》2005年 (c)創通エージェンシー・サンライズ/西尾康之
《Crush セイラ・マス》2005年 (c)創通エージェンシー・サンライズ/西尾康之
アーティストとして作品を発表し続けている、西尾康之さん。その作品は、現在開催中の展覧会「ネオテニー・ジャパン―高橋コレクション」(札幌芸術の森美術館/上野の森美術館に巡回)だけでなく、1月10日(土)から始まる個展「DROWN」(山本現代)で実際に鑑賞することができます。今回は、人生のさまざまな岐路をターニング・ポイントとせず、アーティストとして生きる道を歩んでこられた西尾さんに、大学卒業から現在に至るまでの創作と葛藤についてお話しいただきました。

バブルという時代と創作活動

 大学を卒業したころ、世の中はバブルの絶頂期で、別に無理をしなくても食べていけるような時代。卒業後は、造形屋のようなことをしていました。例えば、博物館の模型をひとつつくると、その後半年間は、自分の作品をつくってしかも貸画廊で発表できるという、創造の欲求と発表の場を得ることができるような状態でした。個展のことが雑誌にちょっと掲載されたり、評論家の人が接近してきたりと、それなりの反応はありました。しかしバブルが崩壊、そんなころに子どもができたりして、生きていけない状況になってしまった。このまま仕事に専念するかという岐路に立ち、作品をつくる方法論を考えたとき、作家になって作品を売って生活するという立場にならないとどうしようもない、と。どうしたらいいかと考えると、公募展に出して、突破口を見つける方法論しか見あたりませんでした。

 そのころは、夜中に仕事をして昼間に作品をつくるという生活をしていました。理解のある職場で、「個展があるので休みます」と言って休ませてもらえたり、少し休みをもらって集中して制作することもできました。そうやってつくった作品を公募展に出そうと思い、椹木野衣さんが審査員を務めるキリンコンテンポラリー・アワードに応募しました。結果は奨励賞。そのあと岡本太郎美術大賞に入選し、賞はいただくのですがなかなかデビューの手応えがない。それで「これがダメならもう美術は辞めよう」と、最後の砦として村上隆さんが主催するGEISAI#1に作品の応募を決めました。

《蟻塚、ジオラマ》1999年 キリンコンテンポラリー・アワード奨励賞受賞作品。
《蟻塚、ジオラマ》1999年 キリンコンテンポラリー・アワード奨励賞受賞作品。
《ジャイアンティス》2002年 「GEISAI#1」グランプリ受賞作品。
《ジャイアンティス》2002年 「GEISAI#1」グランプリ受賞作品。

背水の陣でとったGEISAI#1のグランプリ

 GEISAI#1に応募したとき、僕は36歳でした。自分より10歳以上も若いアーティストが中心の公募展へ作品を出すことに、恐怖感や負い目みたいなものを感じていたのは確かです。10年前の作品見ると「古い」と感じるように、僕の作品を見て「古い」と思われるんじゃないだろうかとか。ですが、公募展に出すと決意をした時期がそもそも遅いことと、家族を養うという状態。背に腹は代えられないと、出品を決意しました。それにGEISAI#1の開催場所が東京タワーのホールで、東京タワーといえば僕の主要なモチーフでもありまして、僕のためにあつらえた公募会場のような、チャンスも感じていました。そこで、大きな女性が東京タワーのようなものにまたがっている作品《ジャイアンティス》を、急遽制作して出品したんです。GEISAI#1に出すために、賞をとるためにつくって、結果「金賞」をいただきました。

 結局、ターニング・ポイントをむかえることなく、いまこうして美術でやっていけているのは、縁や運も大きいと思います。「天才は天才と気づいている」と言いますが、僕もその気持ちをもってなにか貴重なものをつくる思いで創作に臨んでいました。でも、それだけで食べていけるわけではない。それを手放すタイミングに気づく縁や運もあるでしょう。美術作家として生活しているといっても、単身赴任先のアトリエ小屋にはトイレがない(笑)というようなサバイバルな生活です。でも美術作家としてやっていけることは極めて幸運だし、なかなか手に入れられない縁や運によっていまがあると思うので、ありがたく思っています。

「優麗」展示風景 2006年
「優麗」展示風景 2006年
《ディメンション》2007年
《ディメンション》2007年

インタビュー・文/藤田千彩
画像/photo: 木奥恵三 (c)西尾康之 Courtesy of YAMAMOTO GENDAI

次回は…
漫画家、長尾謙一郎さんを紹介します。[2月12日(木)アップ予定]

 
西尾康之 写真
 
西尾康之
(にしおやすゆき)

1967年、東京生まれ。1991年、武蔵野美術大学彫刻科卒業。1999年、キリンコンテンポラリー・アワード奨励賞。2000年、岡本太郎美術大賞入選。2002年、GEISAI#1金賞受賞。粘土を指で押しつけたくぼみに石膏などを流し込み、型を抜き取る独自の手法、陰刻鋳造によってさまざまな立体作品を制作。2005年に開催された「GUNDAM」展では、6メートルの大作《Crash セイラ・マス》を発表。〈ジャイアンティス〉シリーズ、〈幽霊〉シリーズなどの絵画作品も手がけている。主なグループ展に、2004年「六本木クロッシング2004」(森美術館)、2006年「ライフ」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)、2008年「来た!!ジャパニーズ・アーティスト・ミーツ・インドネシア」(ジョグジャカルタ)などがある。2009年1月からの個展は、3年ぶりの開催となる。

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