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トーキョー・アートビジョン
No.025 画一的な身体イメージを変える
語り手:写真家 鷹野隆大(たかのりゅうだい)氏

セクシュアリティや身体イメージをテーマに作品を発表し続けている写真家、鷹野隆大さんは2006年、『In My Room』で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞。独自の視点で、写真表現を展開しています。今回は、鷹野さんの初期作品が展示されている「アーリーモノクローム展」(日本橋島屋美術画廊X)のお話とともに、写真を撮るようになったきっかけ、制作の原点などについてお聞きしました。

シリーズ〈ca.ra.ma.ru〉より《#38》1996 gelatin silver print 20.3×25.4 cm (c)鷹野隆大/Takano, Ryudai Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon
シリーズ〈ca.ra.ma.ru〉より《#38》1996 gelatin silver print 20.3×25.4 cm
(c)鷹野隆大/Takano, Ryudai
Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon


写真との出会い、影響を受けた作家

 大学3年生のとき、絵が好きだったので描いてみようと思ったんです。街でチラッと見た風景とか人のしぐさとか、すばやく正確にスケッチしたかったんですね。でも、絵って音楽やスポーツと一緒で、身体能力が要求されるじゃないですか。ちゃんと描けないんですよ。そんなときに、芝居をやっている友達から舞台の記録写真を撮ってほしいと頼まれて。たまたま一眼レフカメラを持っていたからなんですけど、やってみたら実に面白い。シャッターを押せば、一枚絵ができるんです。何時間かけても満足に描けなかった絵が、わずか一瞬にして次々にできていくんです。それがたまらなく快感で、これだ! って思いましたね。才能があってもなくてもこれでいこうと。迷いはありませんでした。

 最初は森山大道さんの影響を受けて街でスナップ写真を撮っていたんですが、いつまでやっても森山さんと変わらない。それで、自分にとって本当に大切なことは何だろうと改めて考えてみて、それまで避けてきたセクシュアリティの問題に行き着いたんです。でも世の中に出回ってる性的な写真は自分が見たいものではないし、どうしたらいいのか迷いました。そんなとき、ロバート・メイプルソープに出会ったんです。「性(エロ)」を「美」に昇華した彼の作品には本当に衝撃を受けたし、励まされました。その後、僕が作品を発表しはじめた90年代半ばから後半にかけては、女性写真家がカワイイ写真を撮る、いわゆる「女の子写真」の全盛期でした。けれども僕が撮っていたのは、流れに逆行するような重苦しいモノクロの人物ヌード。誰にも相手にされなかった上に、写真や美術をやっている友達もいなかったので、一人きりで、苦しい時期でした。

シリーズ〈ca.ra.ma.ru〉より《#12》 1996 gelatin silver print 20.3×25.4 cm (c)鷹野隆大/Takano, Ryudai Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon
シリーズ〈ca.ra.ma.ru〉より《#12》 1996 gelatin silver print 20.3×25.4cm
(c)鷹野隆大/Takano, Ryudai
Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon


美的な世界観の創造から、何気ないリアルさへ

 何度か貸画廊で展覧会を開いていたんですが、転機になったのは1999年のツァイト・フォト・サロンでの個展です。1995年から4年間、写真を撮ってはプリントし、オーナーの石原さんに見てもらうということを繰り返していました。断られても断られても通い続けて、1999年にようやく展覧会をさせてもらえました。努力賞、みたいなものですかね。でも、4年間、ほんとに辛かったですよ(笑)。よくめげなかったと自分でも思いますが、自分にはこれしかないと思っていたし、画一的な身体イメージが世の中に流通していて、そういったイメージの押しつけに対する苛立ち、自分の思いを伝えたいという気持ちがあったからモチベーションを維持できたんだと思います。

 その頃の作品をちょうどいま、東京・日本橋高島屋の「アーリーモノクローム」展で展示しています。表に出すのはあのとき以来、10数年ぶりですね。僕はひねくれ者なので(笑)、この〈カ・ラ・マ・ル〉シリーズでは、ステレオタイプな男女の身体美とは違った身体の美しさを表現しようと試みました。この頃は「美」を創造したいという意識が強くて、自分のやるべき仕事は、頭の中でイメージする美を視覚化することだと信じきっていました。そんなある日、余ったフィルムで何気なくモデルさん、と言ってもただの友達ですが、を撮ったんです。できあがった写真のリアルさは、僕が頭の中で構築しようとした世界なんかより、はるかに凄い力があって、負けを認めざるを得ませんでした。以来、僕は自分の美意識を捨てました。被写体にイメージを押しつけるのではなく、被写体を受け入れる方向にベクトルが変わってしまいました。

 こうして〈ヨコたわるラフ〉というシリーズがスタートし、「さらにリアルへ」という視点で制作したのが〈Human Body 1/1〉シリーズです。これはフィルム上に等倍で身体を転写し、そのフィルムを切ってつなぎあわせて原版をつくり、密着プリントしたものです。引き伸ばさずに身体を写そうとすると、こうする以外に方法が思いつきませんでした。何故そんな手間のかかることをしたのかというと、三次元の世界をリアルに平面に再現しようとしたとき、例えば遠くにいる人物を何センチに引き伸ばせば正確なんだろうと考え出したら急にわからなくなってしまって、それでとりあえず等倍に写しておくことにしたんです。作品は、自分の体を見ているような位置にカメラをセットしているんですが、等倍ということは等身大なので、この写真を見た人が、他人の体と接続したような感覚を抱いてもらえたら面白いなあという気持ちも持っています。いま思いましたけど、このシリーズ、フィルムのつぎはぎは、作品を持ち込んでは断られていた当時のボロボロの気持ちかもしれないですね(笑)。

シリーズ〈Human Body 1/1〉より《#24》 1999 gelatin silver print 61.0×50.8cm (c)鷹野隆大/Takano, Ryudai Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon
シリーズ〈Human Body 1/1〉より《#24》 1999 gelatin silver print 61.0×50.8cm
(c)鷹野隆大/Takano, Ryudai
Courtesy: Yumiko Chiba Associates/Zeit-Foto Salon


information

■RYUDAI TAKANO EARLY MONOCHROME
制作の原点ともいえる初期作品〈カ・ラ・マ・ル〉、〈Human Body 1/1〉シリーズを再構成して展示している。

会期: 2009年4月15日(水)〜5月4日(月・祝)10:00〜20:00
会場: 日本橋高島屋6階美術画廊X
(東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B1出口より)

■鷹野隆大 個展 おれと
肌の色合わせのために、作家がモデルと一緒に裸になって撮影した写真を展示。同時期に写真集の刊行も予定している。

トークショー:4月29日(水・祝)18:00〜20:00
山下裕二×鷹野隆大「不況バンザイ、アート撲滅!」
会期: 2009年4月28日(火)〜6月9日(火)12:00〜20:00
会場: NADiff a/p/a/r/t(JR恵比寿駅東口出口より徒歩6分)

■公開制作 記録と記憶とあと何か
会期中、作家自身が街に出てスナップ写真を撮影しプリントするという、モノクロ作品の制作過程を公開。また、ワークショップ、アーティストトークなどの参加プログラムも行う予定。

会期: 2009年5月23日(土)〜7月20日(月)10:00〜17:00
会場: 府中市美術館
(京王線府中駅、京王線東府中駅北口、JR中央線武蔵小金井駅よりバス)

※休館日、他詳細は各会場の公式ホームページ、または下記よりご確認ください。
ユミコチバアソシエイツ
http://www.ycassociates.co.jp

次回は…
引き続き鷹野隆大さんに、撮影するという行為、写真というメディアの今後などについてお話しいただきます。[5月28日(木)アップ予定]

 
鷹野隆大(たかのりゅうだい) 写真
 
鷹野隆大
(たかのりゅうだい)

1963年、福井市生まれ。1987年、早稲田大学政治経済学部卒。写真家。大学在学中より制作をはじめ、1994年から都内のギャラリーで個展を開催。2006年、第31回木村伊兵衛写真賞受賞(受賞作『In My Room』2005)。セクシュアリティや身体イメージをテーマにした作品〈ヨコたわるラフ〉〈男の乗り方〉〈ぱらぱら〉に加え、日常風景を撮影した〈毎日写真〉シリーズなどを発表している。2008年、「液晶絵画Still/Motion」(東京都写真美術館)では、映像作品を展示。作品は、国内にとどまらず海外でも展観されている。2009年7月20日(月)まで、府中市美術館にて「公開制作 記録と記憶とあと何か」が開催される。

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