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トーキョー・アートビジョン
No.027 本当に美しいものはどこか歪んでいる
語り手:アーティスト 清川あさみ(きよかわあさみ)さん

針と糸をつかった独自の表現「写真に刺繍を施す」という手法で、広告からアート作品まで手がける清川あさみさん。10代のころから雑誌の読者モデルとして活躍した清川さんは同世代の女性から多くの支持を受け、現在ファッション誌などの連載で刺繍によるアートワークを発表。7月には東京都庭園美術館、水戸芸術館の展覧会に作品を出品されます。今回は、展示に向けた新作と連載作品を同時進行で制作中の清川さんに、アーティストとして活躍するまでのお話しを伺いました。


目の前にあったのが、針と糸だった

 高校まで淡路島で育ち、文化服装学院への入学を機に上京したんです。東京はおもしろいなあって思いましたね。その頃は、学校に行きながら雑誌のモデルをしていたんですが、モデルの仕事が忙しかったので、学校をさっさと終えて放課後はモデルの仕事に行くという日々。もともと「みんなと同じことを同じ時間にする」のが苦手だったので、課題は早く出して早く帰る! 課題も作品もゴールが見えているので、あくまで絵を描いているように、針と糸を動かしているだけです。きっかけは、ある日持っていた油絵具を全部捨ててしまい、改めて絵を描こうと思ったとき、目の前に針と糸しかなかった。それで、キャンバスに油絵具で色を塗るのと同じように写真に刺繍をするようになったんです。発表していくと、絵を描いている人からも「これはどうやってるの?」と聞かれたり、いろいろな反応があっておもしろいです。

清川あさみ《Complex-voice》2007年 写真、刺繍糸
清川あさみ《Complex-voice》2007年 写真、刺繍糸


作品のモチーフ、女性という存在

 作品のモチーフに女性が多いのは、いままでの環境が大きいですね。3人姉妹でしたし、母、おばあちゃん、近所の人……、モデル時代も女性に囲まれての仕事。とにかく私の周りには女性が多かったんです。女性というのは、日々、身体の変化がサイクルしているし、本当にきれいなものはどこか歪んでいたりするもので、そこに私はエロスを感じてしまいます(笑)。きれいなものも汚いところもひっくるめて、興味がつきない対象です。自分も女性なので「愛してあげたい」という気持ちと、私が作家として制作するからには「女性にグサッと刺さるような作品をつくりたい」という思いから、女性をモチーフにすることが多いのかもしれません。「縫う」という行為は女性が抱えている美しさやコンプレックスを、針と糸でとどめておきたいということの表れ。できあがった刺繍のテクスチャや温度感も、絵具やこれまであった画材とは違う感覚があり、見る人は誰もが不思議に感じるようです。〈美女採集〉というシリーズは、アイコンとして女優をつかっています。卑弥呼やクレオパトラ、武将の妻が縁の下の力持ちになるときもあるように、どの時代でも女性は強いし、美しい。だからこそ私は、現在トップで活躍している女優さんを美術館に保存されているような状態で、美しい瞬間をとどめておきたいんです。

清川あさみ《Complex-skin》2008年 写真、ビーズ、刺繍糸
清川あさみ《Complex-skin》2008年 写真、ビーズ、刺繍糸

コンプレックスという普遍的なテーマ

 7月から2つの展覧会に参加します。1つは東京都庭園美術館の「Stitch by Stitch 針と糸で描くわたし」展。もう1つは水戸芸術館で「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」展です。「Stitch by Stitch」展では、〈Complex〉シリーズの新作を出します。写真に写っているのは10代のかわいい女の子ですが、私が刺繍することで女性のコンプレックスである「肥満」や「毛」、「老い」といったものを表現しています。もちろん私にもコンプレックスはありますので、一時買い物ばかりしていた私自身の「物欲」をテーマにした作品もあります。でも、こういったコンプレックスは、自分だけのものでなく女性が持つ普遍的なものだと思うんですね。ですから、自分のコンプレックスをそのまま作品にしているわけではないんです。あらゆる世代の女性に共感してもらうだけでなく、男性にもなにか感じ取ってもらえたらいいですね。ちょうどいま「手で創る」展のために、10メートルのドレスを制作しています。展示空間に置いたときに包まれる感覚になりたくてこのサイズなんです。ドレスは結婚式の白いドレスという女性の欲望でもあり、生や死といったことも意味しています。私自身が描いた「女性の手の骨の絵」をプリントした特殊な生地で一からつくっていて、「きれいになりたい」という気持ちと同じくらい「恐怖」や「狂気」が感じられると思います。

清川あさみ《pathos》(パトス)2009年 コットン、ポリエステル
清川あさみ《pathos》(パトス)2009年 コットン、ポリエステル

information

■手で創る 森英恵と若いアーティストたち
ファッションデザイナーの森英恵氏が選ぶ、次世代の作家たちの新しい表現作品を紹介する展覧会。

会期: 2009年7月11日(土)〜8月16日(日)
会場: 水戸芸術館現代美術センター

http://www.arttowermito.or.jp/

■Stitch by Stitch ステッチ・バイ・ステッチ 針と糸で描くわたし
日本の作家たち8組による現代美術展。針と糸を使いながら、全く異なるテーマと表現世界が東京都庭園美術館で展開される。

会期: 2009年7月18日(土)〜9月27日(日)
会場: 東京都庭園美術館

http://www.teien-art-museum.ne.jp/index.html

インタビュー・文/藤田千彩

次回は…
引き続き清川あさみさんに、どのように作品世界を形成されていくのか、これからのビジョンについてお話しいただきます。[7月23日(木)アップ予定]

 
清川あさみ(きよかわあさみ) 写真
 
清川あさみ
(きよかわあさみ)
1979年、兵庫県淡路島生まれ。文化服装学院在学中より、モデルとして人気を得て連載やスタイリングを手がける。現在、糸や布を使ったアート作品、衣装、空間、映像、イラストレーションを創作するアーティストとして多方面で活躍中。そのオリジナルな手法と世界観をもつ作品を発表し続け、世代をこえて注目されている。また、数々のCDジャケットや広告のアートディレクションを手がけている。主な著書に、絵本『幸せな王子』『人魚姫』(リトルモア)、作品集『caico』(求龍堂)など。現在、『Zipper』(祥伝社)、『FRaU』(講談社)、『すばる』(集英社)などの連載で作品を発表している。

http://www.asamikiyokawa.c
om/

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