東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
展覧会・イベント情報 アーティストファイル エッセンス ビジョン スポット
マイページ サイトマップ
Tokyo Art Navigationとは?
TOPICS
TOP
トップ > トーキョー・アートビジョン
トーキョー・アートビジョン
No.031 オープンリールで描く風景
語り手:Open Reel Ensemble/和田永さん、ICC学芸員/畠中実さん

Open Reel Ensembleは、オープンリール式のテープレコーダーをコンピュータ制御し、演奏・パフォーマンスを行うグループです。昨年度の文化庁メディア芸術祭協賛事業「学生CGコンテスト」インタラクティブ部門で優秀賞を受賞し、各地でライブ活動を展開。10月17日にはICCのトーク&ライブに出演し、彼らの楽器《コンポジション・イン・モーション》は11月15日まで展示されています。今回は、Open Reel Ensembleの和田永さん、ICC学芸員の畠中実さんに、展示に至るまでのお話などをお聞きしました。


ICCでの作品展示に至るまで

ICCに展示中の《コンポジション・イン・モーション》。Open Reel Ensembleは、多摩美術大学に在籍中の和田永さんを中心に、大学で結成されたグループ。メンバーは複数名在籍し、ライブごとに異なるリール奏者がこの機材を駆使して音楽を奏でる
ICCに展示中の《コンポジション・イン・モーション》。Open Reel Ensembleは、多摩美術大学に在籍中の和田永さんを中心に、大学で結成されたグループ。メンバーは複数名在籍し、ライブごとに異なるリール奏者がこの機材を駆使して音楽を奏でる

畠中 去年、多摩美術大学の講評会に呼ばれた時に、Open Reel Ensembleを見たのが最初ですね。演奏されている音楽自体は、その時見た限りではもうちょっとやりようがあるんじゃないかとか、いろんな感想はあったんですけど、オープンリールを使ってこんなものをつくっていること自体は、すごく面白かったですね。でも、その時は直接話はしてないんだよね。

和田 してないですね。

畠中 初めてオープンリールを見た時に、その存在自体が全くわからなかったわけでしょ。自分が経験として、実際にそれを見たことがないとか触ったことがないものに対してどういうアプローチをとるのかって、面白いですよね。本人たちはファンタジーだとか架空の音楽史だとか言っていますが、それはすごくまっとうな態度だと思うし、実経験の伴わない機械が存在するということのリアルさを感じましたね。

和田 先日、大学で僕の新作のパフォーマンスの発表を行ったんですが、それを見た教授が「原始人が初めて機械を触っているようなものを感じた」と言ったんです。それは、オープンリールと同じように、古い機器を本来とは異なる使用方法で楽器として演奏する、というパフォーマンスだったんですが、整然と並ぶ機械に対して僕の動きがとても原始人ぽかったんだと思います。あ! いま、新たなビジョンがスパークしました!

畠中 いま?(笑)

和田 キューブリックの「2001年宇宙の旅」という映画で、猿が突如現れたモノリスに触ると、その猿が進化して武器(道具)を手に入れるじゃないですか。でももしあの時、モノリスが音を発したら!! もしかして楽器を手に入れるんじゃないかなと。触った瞬間に音が出たら、何度か触って、そのうちに音でリズムを刻むように「演奏」をはじめたりして。何だかわからないものに対する反応や発見って言うんでしょうか。道具ってもちろん人間の身体に合わせてつくるわけですが、逆に人間の側がそのインターフェースに合わせて変化していく、ということの可能性を僕の大学の先生も説いていました。未知の道具には、発見や創造が隠されているように感じます。逆によく知っているものも、他にどんな使い方があるだろう? と考えてみるのも面白いのかも。

畠中 そういう、自分が知り得ないものにアプローチするというスタンスは、探究心を広げていった方が面白いので、何も言わない(笑)。例えば、オープンリールの使用方法をある程度わかっているのとわかってないのとでは発想の違いが出るのは当たり前だと思う。余計な知識を植え付けてしまうと、せっかく面白くなる可能性のあるものも、面白くなくなってしまう危険性もあるし。いまは、Open Reel Ensembleだけのファンタジーをつくっていった方が面白い。今回の展示は好きなようにやってもらってますが、陰ではいろいろ言ってたりして(笑)。

和田 怖いです(笑)。


Open Reel Ensembleが目指すもの

畠中 あんまり口出ししない方がいいと言うのは、オープンリールやテープレコーダーを使うと、どうしてもテープ・ミュージックというものを連想してしまって、ミュージック・コンクレートやテリー・ライリーやブライアン・イーノでもいいんですが、テープ・ミュージックの歴史に当てはめてしまうから。ただ、それを知っているか知らないかわからないけど、あえてそういうものに言及せず、あくまでもテクノロジーからその機材にアプローチしてますよ、という振りをしているようなといころが憎いよね。

和田 オープンリールは手に入れた当初、好奇心でいじっていました。心惹かれたのは「物質性」と言うのでしょうか、あの6mmの茶色の帯の中に音が入っている……ということがやっぱり不思議で面白かった。そして、リールやテープそのものを触ると音が変化するので、自分の手でもって音にダイレクトに介入しているという感覚がありました。それがとても直感的で快感だったんです。そして、それは素手で演奏する鍵盤楽器や打楽器と同じだなと思いました。ですから、純粋に道具や楽器としての可能性の宇宙に引き込まれていったわけです。まだ使えるし、使いたい。先人達が何をやったかということには興味がなかった。けれど、どうせ手を出したからにはその境地を目指してやる!!(笑)

畠中 ずいぶん大きく出たね(笑)。彼らがたどり着けなかった境地って何だと思う?

和田 ひとつには見せ方もあると思うんです。同じ切り口でも違ったパフォーマンスや音楽、同じギターでもこう弾いたらウェス・モンゴメリー、こう弾いたらジミ・ヘンドリックスということもあるように、編成や楽器(道具)は同じでも違った何かを生み出せる可能性は常に残されていると思うんです。だから、テープ・ミュージックという潮流があるとしたら、そこにもっともっといろんなドラマが生まれてもいいんじゃないだろうか。だから僕は過去の先人たちも惚れ込んだ「テープ」を使って、現在の情報技術も取り入れながら、更にいろんなことに挑戦していきたいなと燃えています。そしてやっぱり、テープ独特の音色やこのデカいデッキが僕を魅了してやまない。

展示とパフォーマンス

デッキの制御を担う一部分。メンバーによる手づくり
デッキの制御を担う一部分。メンバーによる手づくり

畠中 文化庁メディア芸術祭の時は、展示じゃなくてパフォーマンスですよね。だけど今回は展示期間も長いので、毎日通ってもらうこともできない。パフォーマーがいなくても、オープンリールが作動するような展示にできないかっていうリクエストをしました。

和田 来た人がその場で適当に操作して、そこで偶然に生まれる状況がつくれたらいいなと思って、ある程度の制限はかけているんですが、動かせるようにしました。録音機のスイッチのバリエーションを制御することが、ひとつの作曲行為になるような感じで、楽しんでもらえたらと。

畠中 制御系はバッチリだと思うんだけど、音声の信号系って制御できないのかなと。いま、それがテンキーで制御系はコントロールできるんだけど、例えばAのレコーダーに入ったものがBのレコーダーに入ってきて、みたいに音声信号系をコントロールしたら、作曲ができちゃうんじゃないかと。それができたらすごい。

和田 それ、次のマシンでできるようになります(笑)。

畠中 実際、アンサンブルで演奏することが作品の最終的な形みたいなところがあるので、現在展示している方法はあくまでも仮設のものなんですね。この記事の掲載時には終わってしまっていますが、10月17日の演奏を見せたいっていうのもひとつの目的です。

和田 今回は、あらかじめ用意したバッキングトラックのようなものを使わずに、その場の音とリールだけでどこまでできるか、ということにも挑戦したいなと思っています。ひとりの人の声や言葉、あるいはひとつの音から何ができるかとか、そういうシンプルなコンセプトを出発点に構想中です。とあるライブで即興的な演奏をやったのですが、その楽しさを再確認したので、その場の音とリールだけで音をどこまで構成できるかということも追求したい。自分たちも発見したいし驚きたいんです。ICCを皮切りに年末にかけて、実験型で追求型の、自分たちがやってみたいと前々から盛り上がっていたことをどんどんやっていけたらなと思っています。

畠中 オープンリールをやっているのはいまだけかもしれないし、また違うものがスパークしたりするんでしょうから、いろいろやってほしいですね。オープンリールに限らない、変な発明家みたいな。

和田 精進します。

Information

■オープン・スペース2009
エマージェンシーズ!012 和田永《コンポジション・イン・モーション》を展示。入場無料。
会期/2009年11月15日(日)まで
休館日/月曜日(祝日の場合は翌日)
時間/10:00〜18:00
場所/NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
http://www.ntticc.or.jp/index_j.html

■5+1:ジャンクションボックス
Open Reel Ensembleとしてライブに出演。Special Guest渡邊琢磨 aka COMBOPIANO。
日程/2009年11月22日(日)
場所/原宿 Vacant
http://www.cpue.org/2009/index.html

■HARAJUKU PERFORMANCE + 2009
12月19日〜23日に開催されるイベントの「世代横断型パフォーマンスライヴ」に出演。
日程/2009年12月22日(火)、23日(水・祝)
場所/ラフォーレミュージアム原宿(ラフォーレ原宿6F)
http://www.lapnet.jp/eventinfo/special/lm/hpp/index.html

※時間、チケットなどの詳細は各ホームページよりご確認ください。

次回は…
引き続きOpen Reel Ensembleのメンバー(和田永さん、佐藤公俊さん、吉田悠さん)をご紹介します。[11月26日(木)アップ予定]

 
和田永(わだえい) 写真
 
Open Reel Ensemble
和田永(わだえい)
1987年東京生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科4年に在籍中。2008年"Open Reel Ensemble"を結成し、楽器の制作・プログラミング・作曲・演奏までを手がける。「第14回学生CGコンテスト」インタラクティブ部門で優秀賞受賞。「SIGGRAPH Asia 2009」 Art Gallery入選。日々、創作活動に没頭中。
新作パフォーマンス・音楽作品「Braun Tube Jazz Band」にて、平成21年度[第13回]文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞受賞。

http://crabfeet.
blogspot.com/

畠中実(はたなかみのる) 写真
 
畠中実
(はたなかみのる)
1968年東京生まれ。NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)主任学芸員。96年に開館準備よりICCに携わる。主な展覧会に「サウンド・アート-音というメディア」(2000)、「ダムタイプ:ヴォヤージュ」(2002)、「サウンディング・スペース」(2003)、「ローリー・アンダーソン 時間の記録」(2005)、「サイレント・ダイアローグ」(2007)など。
創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
メールマガジン登録申し込み
デジタルミュージアム
東京・ミュージアム ぐるっとパス2007
詳しくはこちら