東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
展覧会・イベント情報 アーティストファイル エッセンス ビジョン スポット
マイページ サイトマップ
Tokyo Art Navigationとは?
TOPICS
TOP
トップ > トーキョー・アートビジョン
トーキョー・アートビジョン
No.032 頭を使ったあとは感覚的に!
語り手:Open Reel Ensemble/和田永さん、佐藤公俊さん、吉田悠さん

Open Reel Ensembleは本来4台の編成。今回は、メンバーのうち3人にインタビュー。写真左から、佐藤公俊さん、和田永さん、吉田悠さん
Open Reel Ensembleは本来4台の編成。今回は、メンバーのうち3人にインタビュー。写真左から、佐藤公俊さん、和田永さん、吉田悠さん

多摩美術大学の学生を中心に活動を展開しているグループ、Open Reel Ensemble。改造したオープンリール式のテープレコーダーを操作し、複数台で音楽を奏でるというパフォーマンスは、大学の課題から誕生したものでした。文化庁メディア芸術祭「学生CGコンテスト」優秀賞受賞後は活動の幅を広げ、独自の道を切り拓いています。今回は、リール奏者の和田永さん、佐藤公俊さん、吉田悠さんに、Open Reel Ensembleの誕生から、活動内容、今後の試みなどについてお話しいただきました。都内各所でライブも予定されているので、ぜひ足を運んでみてください。


Open Reel Ensembleの誕生は大学の課題

 2008年、和田永さんを中心に結成されたOpen Reel Ensemble。その原点は、和田さんがカセットテープに自分の声を録音して遊んでいたという小学校の頃まで遡ります。たまたま映画で見たオープンリール式のテープレコーダーを知人から譲り受け、さまざまなものを録音していたところ、機材が転倒。この破損で「モーターが回らないので動かない。どうしようもないのでリールを手で回したりしていると、変な音が出た。……これは!!」。以降、このレコーダーを使って何か表現したいという思いを持ったまま、多摩美術大学に入学。大学3年時のグループ課題で、本格的な改造がはじまったということですが――

メンバーによって改造されたオープンリールの裏側
メンバーによって改造されたオープンリールの裏側

和田 その時に、たまたま佐藤君とチームを組んだんですね。いろいろとアイデアを出したり提案をする中、僕がいままでに集めてきたオープンリールを何台も大学に持ってきて、グループの仲間にプレゼンしたんです。これ、バンドにできるんじゃないかって。ちょうどその時、僕らはプログラミングや電子工作を勉強していて、オープンリールとドッキングして何かやったら熱いって。それやろう! と盛り上がったのがはじまりです。そこから約2か月かけて、寝る時間も惜しみながらみんなで協力して初号機と演奏曲をつくった。いま思えば地獄のような作業でしたが、変なエネルギーに導かれていました。

佐藤 僕も慣れてないプログラミングを頑張って。朝倉君と岡野さんが黒い台、山下君は基板、リールの改造は和田君、みたいな感じ。

和田 プログラミングは、オープンソースと言って、いろんなサンプルファイルがネットに落ちているんで、それをかき集めて、わからないとこはどんどん詳しい先生に聞いて、手分けしてつくった。そして初めてライブをやったのが2008年の7月。

佐藤 オープンキャンパスの時。

和田 偶然その場にいたメンバーで結成されたと言うか。でもすごく楽しくて。

佐藤 思った以上に。

和田 その時初めてリールを使ってセッションしたわけです。複数台でやるとまさにバンドみたいで。

佐藤 合わさった時の高揚感みたいなものがすごくあったよね。

和田 それで、もっといろんな人に見てもらった方がいいんじゃないか。反応があるんじゃないかということで、文化庁の学生CGコンテストに応募してみたんです。

佐藤 そしたら嬉しいことに受かって。そこからは和田君と2人で更なるバージョンアップを図るために制作を続けたんです。

文化庁メディア芸術祭(国立新美術館)での演奏風景

文化庁メディア芸術祭(国立新美術館)での演奏風景

文化庁メディア芸術祭(国立新美術館)での演奏風景

空想の音楽史とオープンリール

 学生CGコンテストでは、和田永さん、佐藤公俊さん、朝倉卓也さん、山下連さん、岡野沙有さんの連名で優秀賞を受賞。その後Open Reel Ensembleに参加したのが、吉田悠さん。和田さんと吉田さんは同じ高校出身。別のプロジェクトでも活動を共にしています。民族音楽を漁っては「11拍子のリズムや白鍵黒鍵の間の音があったりすると、それが僕たちにとってとてもファンタジック」(和田)、「日常にないものと出逢った時に、もっといろいろな形があっていいんじゃないか。あるんじゃないか」(吉田)という二人。そういった世界を「空想の音楽史」と呼び、それがひとつのテーマになっているそうで――

和田 オープンリールは、もともと録音して再生するための機械ですが、僕らの世代からは考えられない大きさで、何か異国のものを目の前にしているファンタジックな感覚だったんです。オープンリールが音に関係していることは間違いないので、それを楽器として扱いアンサンブルを行うカルチャーを空想するわけです。ああ、これはたくさん持ち寄って爆音を演奏する音楽会を開くためにあるんだ、なんてことを話したり。

吉田 オープンリールを使っていた、当時の人の姿を映像などで見ると、いかにも不便な機械を平然と扱っていて、やはりどこか異世界のようで。技術の進歩に伴って淘汰されていった余分な要素に、違う魅力を感じますよね。

和田 オープンリールって結局、捨てられていったものじゃないですか。もうあんなにでかくなくていいわけで。既存の利用価値が失われた時、他に何に使えるのか。つまり空想と言っているのは、他の価値を見つけたらどうなるか。僕らが、デジタル制御を取り入れているのは、単にそうすると便利かどうかというよりも、あのリールの存在自体がそのまま違う目的の道具として特化されていたら? そういう発想なんです。あくまでも磁気録音の技術が主軸にあって、そこに次の技術を付け加える、というような。

吉田 そういう面で現実を見ると、必ず規格は新しくなって、いままでのものと取って代わるということが何度も起きる。そのうちDVDやデジカメを古い文化だと感じる世代が出てきそう。そんな時に、その技術を捨てずに何かに活かすみたいな発想があると、また面白い発見があるのかも。

和田 単線的な歴史観に、何か別の視点を与えていく、といった感じです。

最終的には情熱、パッション!

 さまざまな思いが内包されたオープンリール。しかしメンバーが最も楽しんでいるのは、そのパフォーマンスです。「つくる段階では頭を働かせますが、最終的なアウトプットは、グルーヴ感みたいなところに行き着くって言うか。その場でセッションしている時の感覚的な心地よさや抑揚、そういうところに行き着く」(和田)。今後の活動が期待されるOpen Reel Ensembleの音、演奏、その可能性とは――

ライブでは、オープンリールだけでなく、ピアノやギターなどの楽器とアンサンブルも
ライブでは、オープンリールだけでなく、ピアノやギターなどの楽器とアンサンブルも

和田 オープンリールは、コンパクトなデジタル機器ではできないことが表現できるけど、できることは数少ない。それを駆使してどこまでできるか。やっぱりリールにしか見せられないことをやろうと。手で触ったら音が歪むし、戻したらその分だけ戻ってと、それが目でわかる。

佐藤 そこがラップトップとは違って、お客さんに見せる時も、こうやっていじっているからこうなるっていうのがわかりやすくて、やってる方も面白い。難しい曲では、こっちは意識を集中させて演奏してるんだけど。

和田 メディア芸術祭以降はiPhoneで遠隔操作もするんですけど、それはオープンリールの音と回転がカッチリ合っているという、あのローテクならではの光景を見せるためでもあるんです。律儀に動作を繰り返したり、勝手に音を取り込んだり。それは機械と人間たちのセッションでもあって。それが噛み合った瞬間の一体感。

佐藤 あれはヤバい。

和田 これまでに、生のピアノトリオともコラボして、リールが生楽器の音をその場で再構成していくみたいなパフォーマンスをしたり、サマソニでは弦楽四重奏と合奏したり、そういうライブや音楽会がないなら開くしかない、みたいなノリでやってます。いまはひとつの方向性に固定したくないっていうのもあるので、これから打楽器奏者と一緒にやるのもいいし、指揮者がいて工場のごとく並んだ100台のリールを演奏するのもいいな。リールがタワーみたいに積み上げられているのもいいな(笑)。

吉田 ビジュアルが先行して勝手にワクワクしてるよね。でも、僕もいろいろと想像するんだけど、何故かそこには人間がいる。それはきっと、人々のコミュニケーションの中から生まれる音楽や物事に僕自身が興味があるからなのかも。いくら空想にふけっても、どこかそこにはリアリティがある気がする。

佐藤 それとオープンリール自体、とても柔軟だから、いろんなことができるし。ジャンルに縛られていない気がします。

吉田 楽器(道具)を何に使うかは、使う人次第だよね。

佐藤 古いけどいろんな可能性を秘めてると思います。

和田 もう全部やるしかない! やるぞ!!(笑)

ブラウン管を利用した新しいパフォーマンスも考案中という和田さん。今後の展開はブログなどでチェックを

ブラウン管を利用した新しいパフォーマンスも考案中という和田さん。今後の展開はブログなどでチェックを

ブラウン管を利用した新しいパフォーマンスも考案中という和田さん。今後の展開はブログなどでチェックを
Information

■HARAJUKU PERFORMANCE + 2009
12月19日〜23日に開催されるイベントの「世代横断型パフォーマンスライヴ」に出演。
日程/2009年12月22日(火)、23日(水・祝)
場所/ラフォーレミュージアム原宿(ラフォーレ原宿6F)
http://www.lapnet.jp/eventinfo/special/lm/hpp/index.html

※時間、チケットなどの詳細は各ホームページよりご確認ください。

 
Open Reel Ensemble 写真
 
Open Reel Ensemble
2008年、和田永と佐藤公俊を中心に結成。メンバーは複数在籍し、イベントによって出演者が異なる。2009年、文化庁メディア芸術祭協賛事業「第14回学生CGコンテスト」インタラクティブ部門で優秀賞を受賞(和田永、佐藤公俊、朝倉卓也、山下連、岡野沙有)。「SIGGRAPH Asia 2009」Art Gallery入選。2009年11月15日までNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)「オープン・スペース2009」にて、オープンリールを展示。現在、都内各所でライブ活動を展開中。
 
和田永
(わだえい)
1987年生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科4年に在籍中。産卵家。2008年「Open Reel Ensemble」結成。楽器の製作・プログラミング・作曲・演奏まで手がける。また「蒸気青月楽団」を主宰し音楽活動を展開。日々、創作活動に没頭中。
新作パフォーマンス・音楽作品「Braun Tube Jazz Band」にて、平成21年度[第13回]文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞受賞。

http://crabfeet.
blogspot.com/

 
佐藤公俊
(さとうきみとし)
1988年生まれ。多摩美術大学情報芸術学科3年に在籍中。「Open Reel Ensemble」結成時からプログラミングや演奏に携わっている。DJとしてSountrive(サウントライブ)という名義で活動するほか、映像と音響を用いたエレクトロ・ユニットElesophia(エレソフィア)としても都内でライブパフォーマンスを行っている。

Info:
http://sountrivalism
.blogspot.com/

Myspace:
http://www.myspace
.com/elesophia

 
吉田悠
(よしだはるか)
1987年生まれ。武蔵野美術大学映像学科4年に在籍中。2009年より「Open Reel Ensemble」にリール奏者として参加。和田永と共にバンド「蒸気青月楽団」で活動するほか、兄弟3人のジャズバンド「花掘レ」や個人の音楽・映像制作活動も精力的に行い、複数の受賞歴を持つ。現在は音と映像の共鳴地点をテーマに制作活動中。

花掘レ(HANAHORE):
http://hanahore.tn.st
蒸気青月楽団:
http://bluemoon.tn.st/

創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
メールマガジン登録申し込み
デジタルミュージアム
東京・ミュージアム ぐるっとパス2007
詳しくはこちら