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トーキョー・アートビジョン
No.033 新進作家に資生堂ギャラリーの門戸を開く
語り手:資生堂企業文化部(学芸員) 森本美穂さん

「新しい価値の発見と創造」という企業理念のもと、メセナ活動の一環として資生堂が主催している公募展「shiseido art egg」があります。これは、公募で入選した新進アーティストに資生堂ギャラリーを発表の場として提供し、個展開催に向けてサポートするというプログラムです。創作活動を続ける上で必要不可欠な「発表の場」ですが、公募を通じて、銀座という場で作品を多くの方に見てもらうことができるのが、shiseido art eggの特長でもあります。今回は、学芸員の森本美穂さんにshiseido art egg についてお話いただきました。


shiseido art eggとは

第1回shiseido art eggより art egg賞 平野薫《untitled -dress-》2007 photo by 加藤健
第1回shiseido art eggより art egg賞 平野薫《untitled -dress-》2007 photo by 加藤健

 資生堂ギャラリーは、1919年初代社長の福原信三によって設立され、本年90周年を迎えています。当初より新進作家に発表の場を提供することを目的とし、資生堂ギャラリーをデビューの場として、後に日本美術史に大きな足跡を残した作家も数多くいます。「shiseido art egg 」は、資生堂メセナ活動の原点に立ち戻り、公募展という活動を通じ、「新たな美」によって時代を切り開く先進性をもったアーティストのキャリアアップをサポートしたいとの想いで2006年よりスタートしました。

 実際に個展ができるのは3組で、資生堂ギャラリーアドバイザーの岡部あおみさん(武蔵野美術大学教授)と水沢勉さん(神奈川県立近代美術館副館長兼企画課長)、そして私たち学芸スタッフで審査をします。さらに3つの個展が終わったところで、art egg賞を1名(組)に贈るのですが、これは展覧会を開催して終わりではなく、展覧会がどうだったのかを次の評価につなげる仕組みなんですね。第4回の今回は、建築家の青木淳さん、画家の児玉靖枝さん、ガラス作家の三嶋りつ惠さんに審査をお願いしています。いい点も悪い点も含めて、作家にキックバックしていくことが目的で、なぜこの作家がart egg賞だったのかをウェブとカタログにまとめ、1つのプログラムが終了となります。


応募と審査について

 今回は20〜30代の方からの応募が中心で、中堅どころの方、40代が少しと60代の方もいらっしゃいましたね。審査は、ポートフォリオでのファイル審査になるので、実際に作品を見る公募展とは見るポイントが異なります。第4回は336件の応募があり、もちろん全部見ますが、サラッと見たときに、その人が何をしたいのか、それが第一印象でわかるものが、次の審査に残りますね。

 例えば、映像も写真も絵画もインスタレーションもと、いろいろな表現で作家活動を続けられている方、たくさんいらっしゃると思うんです。実績のまとめ方もポイントの1つです。また、資生堂ギャラリーは非常に特色のある空間ですので、単に作品を持ってきただけでは、見せきれない部分があります。ですから、どんな風に自分の作品を見せたいのかというプランを重視します。またそのプランが実現可能なものであるかも審査の対象となります。

 やはり、必要なのはプロポーザル力です。今回入選された岡本純一さんは複数回の応募でしたが、前回と全く違うプランだったんです。組み立て方もドラスティックに変えてきて、これは面白いということで入選になりました。昨年art egg賞の宮永愛子さんも複数回目で、資生堂ギャラリーで展示する意義をきちんとプロポーザルされたので入選したという経緯があります。1回落ちたからといってあきらめずに、再度チャレンジしてください。その後は、審査員がそれぞれの考え方で議論をしていくことになりますが、「資生堂ギャラリーで見てみたい」というプランの応募を待っています。

左:第2回shiseido art eggより art egg賞 槙原泰介《flooring》2008
左:第2回shiseido art eggより art egg賞 槙原泰介《flooring》2008

右:第3回shiseido art eggより art egg賞 宮永愛子《地中からはなつ島》2009
右:第3回shiseido art eggより art egg賞 宮永愛子《地中からはなつ島》2009

photo by 加藤健
入選から個展開催まで

 6月に募集をかけ、8月に入選者を発表するのですが、入選作家さんとは、まず契約書を締結します。著作権などの権利関係は複雑になってきていますよね。作家さんとは、今後作家活動を続ける上でどういった認識が必要なのかを知っていただきたいので、契約書を一つひとつ読み解いて確認していきます。それが終わると、すぐ打ち合わせに入ります。プランで応募されていますから、それを軸にどのように具現化するかを話し合います。制作費の中で、やりたいことをどこまで実現させるのかのすり合わせが重要になってくるんですね。

 1月に個展を開催する曽谷さんは、「鳴る音」というタイトルで、作家が色を選ぶときに脳内に浮かぶという和音を視覚化させることが今回の展示プランになっています。絵を描かずにカッティングシートやビニールシートでギャラリー全体を埋め尽くすんですが、概算したところとても制作費内には収まらない。そこで、私と作家と施工の専門スタッフで、どうしたらコストダウンできるか、プランを実現するにはどうしたらよいかを話し合いました。今回は、曽谷さんのプランに賛同し、素材の提供など何社もの企業様にご協力いただいたこともあり、このプランが実現できることになりました。ご協力いただいた多くの皆さまには本当に感謝しています。

 入選から展覧会まで、短い方で半年弱で展覧会をつくっていきます。完全に展示プランが固まると、照明や施工、展示の専門スタッフと最終調整です。展示に入ると、様々なアイデアを出す作家にスタッフは、こういう素材でこういうことをするとこういうことが起きるとか、これだったら大丈夫じゃないのとか。より丁寧に、作家が得心できるような方法を提示してくれます。スタッフの協力無くしても成り立たないプログラムだと思っています。

作家、展示プランによって空間が変化する資生堂ギャラリー内観

作家、展示プランによって空間が変化する資生堂ギャラリー内観

作家、展示プランによって空間が変化する資生堂ギャラリー内観
今年の見どころ

 これから曽谷さんの色と音の波紋をリンクさせた展示がはじまり、2月は岡本純一さんです。彼は、大小ふたつの展示室の間に壁面を立て、障子によって出入りするという作品で、通常世界と非現実世界、明と暗といった生活の中にある二極の世界を表現、体感できる仕組みをつくります。鑑賞者に体験させることで思考を促す装置という点が面白く、評価が高かったんですね。3月の村山悟郎さんは、絵画の領域の人ですが、絵画を、描画するという行為と、その行為を受け止める環境としての支持体(キャンバス)の関係から考えている作家だと思います。麻紐を編み、下地を引き、そこへ描画する。その状態を見てさらにこの行為を繰り返すという独自のシステムで巨大な平面作品を制作しています。数本の麻紐から膨大な時間と様々な要素を編みこみながらまるで細胞分裂を繰り返して成長する生物のように展開していく、システマティックでありながら神秘的な作品です。今回は、3本見ていただくとギャラリーの空間の変化がよくわかるので、ラインナップとしてもなかなか楽しいものではないかと思います。

 shiseido art eggの最大の特色は、作品を多くの方に見ていただけることです。展覧会に来られた方からお褒めの言葉をいただくと、私たちも作家以上に喜んでいたりします。何より嬉しいのが、入選作家の3人がすごく仲良くなってくれることです。ひとりがニューヨークに行ったら、それを見に行ったり、情報交換をしたり。art eggの展覧会には、毎年卒業生(過去の入選者)がレセプションに顔を出してくれるので、そこで代を越えて作家同士の横のつながりができるんです。今後も、そういった関係性がつくれる場になったらいいなと思います。

Information

第4回 shiseido art egg展
本年度の入選者3名の個展を、2010年1月より順次開催。3人がつくりだす三様の世界を見ることで、作品を鑑賞するだけでなく、展示方法によって様変わりする資生堂ギャラリーの空間の変化も楽しむことができます。公募への応募を考える方には、オススメの展覧会。

■曽谷朝絵展 2010年1月8日(金)〜1月31日(日)
■岡本純一展 2010年2月5日(金)〜2月28日(日)
■村山悟郎展 2010年3月5日(金)〜3月28日(日)

会場:

資生堂ギャラリー
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビルの地下1階

開館: 11:00〜19:00(平日)、11:00〜18:00(日・祝)
休館: 毎週月曜日
入場: 無料
http://www.shiseido.co.jp/gallery/html/

次回は…
第4回shiseido art eggに入選された3名、曽谷朝絵さん、岡本純一さん、村山悟郎さんをご紹介します。[1月28日(木)アップ予定]

 
shiseido art egg 写真
東京銀座資生堂ビル外観。地下1階が資生堂ギャラリー
 
shiseido art egg
2006年より毎年、株式会社資生堂が主催している公募展。新進アーティストに資生堂ギャラリーを3週間無料で開放し、展覧会開催までのサポートを行う。応募にあたって展示プランの提出もあり、審査員は作品のクオリティだけでなく「資生堂ギャラリーという空間で何をどのように表現したいのか」を評価のひとつとして審査を行い、3人(組)のアーティストを選出する。入選者は、資生堂ギャラリーの学芸員や専門スタッフと一緒に展覧会をつくることで、作品を発表するためのノウハウも学べる。展覧会終了後、3つの個展からshiseido art egg賞が選出される。
 
森本美穂
(もりもとみほ)
資生堂企業文化部で学芸員としてギャラリーの企画に携わる。shiseido art eggには立ち上げから携わる他、「第六次椿会」「津田直展」「北原愛展」など、様々なジャンルの展覧会を担当している。
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