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トーキョー・アートビジョン
No.038 早くものをつくる人になりたかったんです
語り手:フォトグラファー 蜷川実花さん

写真集『FLOWER ADDICT』より
写真集『FLOWER ADDICT』より

雑誌、広告、映像と、様々な媒体で活躍中の写真家、蜷川実花さん。その作品には、「花」「金魚」「女性」などのモチーフが極彩色の世界に展開し、見る者を圧倒する力があります。今回のインタビューでは、デビューのきっかけとなった公募展のひとつであり、本年度から審査員を務められる「写真新世紀」(6月10日まで作品募集中)についてお聞きしました。コンペに参加する意義、受賞してからの動き方など、経験に基づく貴重なメッセージです!


公募展応募のきっかけと受賞後の変化

写真新世紀優秀賞作品「Happiness Self Portrait 1996」
写真新世紀優秀賞作品「Happiness Self Portrait 1996」

 学校で勉強することよりも早く現場に出たくて、とにかくものをつくっている中心部にいきたいという思いがありました。蜷川幸雄の娘ということもあったので、早く個人として認識してほしかった。とにかくずっと焦ってました。大学生の時に、「ひとつぼ展」と「写真新世紀」に作品を出したのは、そういったことも関係しているんじゃないかと思います。「ひとつぼ展」は公開審査なので、審査員の投票が目に見えてわかるんです。本当に何票差で負けたというのが。あと1票だったのにとか、何でこの審査員は投票してくれないんだとか。それが悔しくて、グランプリをとるまでは出し続けようと思い、4回応募しました。コンペのいいところは、やっぱり作品単体で評価されるのが心地よかったから。当時の公募は熱くて、時代、メディア、世間の人たちが新しい表現や人を求めていたというのが肌で感じられました。実際、賞をとったらすぐ場を与えられる可能性が高かったし、公募展で受賞することが写真家と仕事に直結していました。

 コンペで賞をとるというのは、通過点でしかありません。だけど、やっとスタート地点に立てたと思い単純に嬉しかったです。受賞直後は注目してもらえる確率が高いので、そのタイミングでどんどん作品を発表したり、営業に行くべきだと思います。自分のことを思い返すと、賞をとてもうまく使いきったなと。ボーっとしていると時間はすぐ過ぎていくし、そうこうしてるうちにみんなすぐ忘れますからね。旬なうちに戦略的に動く。あとは、実力でねじ伏せていけばいいんです(笑)。よく覚えているのが、「写真新世紀」受賞前にも何度か雑誌社に営業の電話をしていたんですが、受賞してからやっと担当者につないでもらったことがあって。ああ、知ってる人はちゃんと知ってるんだなと。受賞によって認知されるということを体感しました。


作品づくりと仕事としての撮影

 コンテストに応募する時は、まずは本当に自分が撮りたいものを撮る方がいいと思います。その後、例えば何かの賞でデビューして、仕事をする。それは「撮りたいものを撮りたいタイミングで撮っていいものにする」という状況が、「何月何日何時、誰々さんを1時間で撮ってください」とすべて他人に決められた条件の中で撮影しなければならなくなるということ。自分の持ち味を仕事で撮る作品に移行するまで、とても時間がかかると思うんです。これが「スタジオで働いていました、師匠についていました」でデビューすることと、公募展でデビューすることの決定的な違いですね。私がいちばん苦労したのもここです。もともとセルフポートレートを撮っていたので、営業に行って作品を見せると「じゃあ、他人を撮ったらどうなるんですか?」って、そりゃそうですよね。1週間後に友人を撮影して、また同じ編集部に持ち込んでいました。そこらへんはとにかく、数をこなして乗り越えたのかなと。

 作家よりの子がデビューして撮影を仕事にすると、よく「こんなことがやりたいんじゃない、自分の表現が全くできない」と悩んだりしていますが、自分ひとりだったら絶対やらないようなシチュエーションに出会えたり、そういったことをやるからこそ見える新しい視点というのが、やっぱりあるんです。私は単純に写真を撮るのが好きだし、仕事も好きなので、シャッターを押して暮らせるなら絶対その方が楽しいし健全だと思いました。もちろん仕事として続けていくことは、簡単なことではありません。デビューする大変さよりも、純度を保ち、同じテンションを継続する方がずっと大変です。私自身、2008年からの個展「蜷川実花展―地上の花、天上の色―」で自分の表現を1周したという感覚があって、今は2周目のトラックに入ったというか。これから意識的に無意識になるというか、自然に楽しくやっていきたいと思っています。

東京オペラシティアートギャラリーでの個展「蜷川実花展―地上の花、天上の色―」会場風景
東京オペラシティアートギャラリーでの個展「蜷川実花展―地上の花、天上の色―」会場風景

「写真新世紀」審査員として

写真集『NINAGAWA SHANGHAI2010』より
写真集『NINAGAWA SHANGHAI2010』より

 自分が出てきた公募展で、今年から審査員を務めるというお話をいただいた時はビックリしました。荒木経惟さんたちの次を継ぐ、これにて私は成人式を終えたなと。元服した気がしましたね(笑)。「写真新世紀」では以前ゲスト審査員として2005年と2009年の2回審査に参加していて、荒木さんの写真に対する愛情や考え方に、いろいろ思うこともありました。最初の審査では、短い時間に1300点以上の作品を見なければならなくて、本当に呼吸を止めて見るような勢い。応募者の作品を見ていると、どれだけの思いがそこに込められているかがわかる分、すごく重かった。その時の審査員は女性が私ひとりだったので、男性の見方と違うところ、みなさんが取りこぼしそうなところを選ぼうと審査にあたりました。

 コンテストの審査は「はい次、はい次」と、どんどん見なければならないんです。審査員も万全のコンディションですべてを見られるわけではないので、必ずしも公平とは言えない。作品を見る順番で見え方が変わる場合もあるし、運も大きいかもしれない。だけど、審査員の体調が悪いとか、並んでいる順番が悪いとか、それで変わってしまう順位ならば所詮そんなものかなと思います。圧倒的な作品って、こちらがどんな状態でも、どんなにはじっこに置いてあっても、見つけられるもの。いい作品って、そういうものなんですよね。この場で見なければ好きな作品なのになと思うこともありますが、圧倒的でない限りその場その場の選び方は変わるものだと思います。でも、公募の審査、世間での見方って、こういうことなんです。結局一歩外に出れば、すべて平等に進むことなどありえないですから。

 写真家としてデビューすると、「写真新世紀」で言えば、審査員である私も、佐内正史さんも、大森克己さんも同じ土壌に並ぶことになるんです。その中で勝ち抜いていくのは大変だと思いますが、全然不可能なことではなく、仕事も来ます。今回の公募では、やっぱりドキッとするようなもの、追い上げられる危機感を感じさせるものを見てみたいと思っています。なんてことを当時の審査員の方も言ってましたね、今思い出しました(笑)。


Information

写真集『Lumen07 NINAGAWA BAROQUE』より
写真集『Lumen07 NINAGAWA BAROQUE』より

■ニナガワ・バロック/エクストリーム
NADiff全館を会場に、各フロア、異なるテーマで蜷川作品を展開。地下1階では、東京のドラァグクイーンやパフォーマーを撮り下ろしたシリーズ〈TOKYO UNDERWORLD〉を。1階ではブックフェア、2階では写真集『FLOWER ADDICT』、『NINAGAWA SHANGHAI2010』から数点を発表。3階では、蜷川実花責任編集の雑誌「Mgirl」で撮影した沢尻エリカの写真を展示。4階のカフェでは、映像作品を公開予定。
・会場:NADiff A/P/A/R/T(東京都渋谷区恵比寿1-18-4)
・会期:4月28日(水)〜5月30日(日)
・時間:12:00〜20:00
http://www.nadiff.com

 
蜷川実花(にながわみか) 写真
 
蜷川実花
(にながわみか)

東京生まれ。フォトグラファー。1996年、第7回写真「ひとつぼ展」グランプリ、第13回公募「写真新世紀」優秀賞。2001年、第26回「木村伊兵衛写真賞」。2004年、小山登美夫ギャラリーで初個展。2006年、VOCA展にて「大原美術館賞」受賞。2007年、初監督を務めた映画「さくらん」公開。2008年、個展「蜷川実花展―地上の花、天上の色―」(東京オペラシティアートギャラリー)開催。その後、岩手、鹿児島、兵庫、高知の4会場を巡回し、約18万人を動員。これまでに40冊以上の写真集を刊行し、近作として『FLOWER ADDICT』(美術出版社/2009)、『NINAGAWA SHANGHAI2010』(MdN/
2010)、『Lumen07 NINAGAWA BAROQUE』(artbeat publishers/2010)など。2010年秋にはアメリカ・リッツオーリ社から300Pを超える大型写真集を発売予定。

http://www.
ninamika.com
(PC)
http://ninami
ka-m.com
(携帯)
http://www.tomio
koyamagallery.com

(小山登美夫ギャラリー)

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