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オルセー美術館 エミール・ガレの神髄〈後編〉

パブリックドメインで巡る世界の美術館

No.011
《海藻と貝殻の手》1904年 高33.4cm 径13.4cm オルセー美術館
Emile Gallé
La Main aux algues et aux coquillages
1904
Cristal partiellement soufflé et modelé à chaud, inclusions, applications, gravé à la roue
H. 33,4 cm ; L. 13,4 cm.
Don, 1990
© Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt

パブリックドメインとは、著作権を有さない公共の知的財産のこと。世界には、そのような所蔵品をインターネット上で公開している美術館があります。パブリックドメインとなった所蔵品を取り上げ、その魅力をあらためて紐解きます。


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2024.08.20

世界の美術館がオンラインで公開している収蔵品を、テーマを決めて紹介する本シリーズ。前回に引き続き今回もアール・ヌーヴォーを代表する工芸作家、エミール・ガレを取り上げます。2024年はエミール・ガレの没後120年にあたります。後編もオルセー美術館コレクションから、富山市ガラス美術館館長の土田ルリ子さんが選んだ名品を解説します。1890年代以降、ガレの芸術性はいよいよ象徴性を高めて新しい表現を拓いていきます。


(前編はこちら)


「神秘の葡萄」

1892年の《栓付瓶「神秘の葡萄」》もまた、中期のガレの傑作の一つに挙げられます。詩人でありパリ・サロンの中心人物であったロベール・ド・モンテスキウ伯爵は、友人でもあるガレに、できたばかりの詩を贈っていたようです。ガレはそれが自身の創作にとってどれほど重要かを添え状にしたため、感謝の証としてモンテスキウの詩を刻んだこの作品を彼に贈りました。

《栓付瓶「神秘の葡萄」》 1892年 高40cm 胴径12.5cm オルセー美術館
胴下部に書込・年紀:au Comte R. Montesquiou / au bon poète qui inspire les verriers/ 1892 [ガラス工たちに霊感を吹き込む素晴らしい詩人 / モンテスキウ伯爵へ / 1892年]
胴部に陰刻と陽刻で銘:Leurs grappes de clartés, leurs pulpes de lumière, / Raisins mystérieux… / Où l’espalier divin a des treilles de flammes / Dont le feux sont des pleurs et les grains des yeux! / Montesquiou [明かりの房、光の果肉 / 神秘の葡萄よ… / またその神聖なる樹木の垣根は炎の葡萄棚のよう / その火は涙、その実は目だ!/ モンテスキウ]
Emile Gallé
Raisins mystérieux
1892

Flacon, verre à deux couches à inclusions métalliques (or et platine), cabochons appliqués à chaud, décor gravé à la roue, bouchon en verre soufflé opalescent, socle en poirier sculpté et teinté
H. 40,0 ; L. 12,5 cm.
Don Mme Jean Bourgogne et de ses enfants, en souvenir de Jean Bourgogne (1903-1999) petit-fils d'Emile Gallé par l'intermédiaire de la société des Amis du musée d'Orsay, 2000
© RMN-Grand Palais (Musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski

最後のガラス作品《海藻と貝殻の手》

1900年のパリ万博という国際舞台では、こうした象徴性の高いガレの作品が大いに評価され、輝かしい名声を得ました。しかしガレはそれまでの労苦のゆえか、1904年には白血病でこの世を去ることになります。この《海藻と貝殻の手》は、ガレにとって最後のガラス作品となりました。長い間海底に沈んでいた手には貝や海藻が巻きつき、死相を呈する反面、空に手を伸ばして、何とか生きようとする生命への渇望も表れています。ガレの遺言とも言える彫刻的傑作です。

《海藻と貝殻の手》1904年 高33.4cm 径13.4cm オルセー美術館
Emile Gallé
La Main aux algues et aux coquillages
1904

Cristal partiellement soufflé et modelé à chaud, inclusions, applications, gravé à la roue
H. 33,4 ; L. 13,4 cm.
Don, 1990
© Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt

Text:土田ルリ子(富山市ガラス美術館 館長)

富山市ガラス美術館では2024年11月2日(土)〜2025年1月26日(日)、「没後120年エミール・ガレ:憧憬のパリ」を開催します。

オルセー美術館
オルセー美術館の建物は1900年のパリ万国博覧会開催に合わせて建設された鉄道駅舎兼ホテルがもとになっている。1986年、19世紀美術を展示する美術館として改修された。絵画、彫刻、家具、工芸品、建築、デッサン、写真など約7万点が所蔵され、4,000点の作品が常設展示されている。
https://www.musee-orsay.fr/fr

住所:Esplanade Valéry Giscard d'Estaing_75007 Paris フランス
入館料:一般料金(常設展と企画展)オンライン購入16ユーロ、窓口購入14ユーロ ほか

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