──「建築とアートを巡る」で都内を中心に建築やアートの魅力を発信している坂田綾緒さん。どういった経緯で活動をスタートさせたのですか。
もともと建築や展覧会巡りが好きで、2011年からInstagramに写真を投稿するようになりました。これが性に合っていたようで、続けていくうちに建築やアート巡りに特化した見せ方のほうがいいのではないかと思い、2015年頃から現在のかたちになりました。
さらにリール(動画)を主体にしてから閲覧数の伸び率が上がりましたね。写真で捉えきれないものを表現できるので動画の編集も楽しいです。編集はiPhoneです。
──どういった動機で活動していますか。
ありがたいことに今はたくさんの方に見ていただいていますが、建築やアートを世の中に広めなくちゃ!という使命感を持って投稿しているわけではありません。動機は非常にシンプルで自分が好きだから建築もアートもたくさん訪れます。それを整理して投稿しているだけ。実は赴くままだと投稿数がどんどん増えてしまうので、フォローいただいている方がうるさく感じないようセーブしているくらいなんです(笑)。
──ブログの投稿からは建築にもアートにも精通しているのがうかがえます。
美術大学を卒業後、アートと建築の業界でそれぞれ10年以上働いてきました。展覧会には年間で2〜300件は訪れています。近年の東京都写真美術館や東京都庭園美術館、東京都現代美術館の展覧会はほぼ全部みていますね。建築もアートも好きなので、美術館が一番フィットします。でも、私は建築家でも美術の専門家でもない。いわば「裏側もちょっと知っている愛好家」の目線ですね。
──写真はスマートフォンで撮影されているのですね。
一眼レフカメラは持っていなくて、全てiPhoneで撮影しています。重くないですし、高く掲げたり床に置いたりと機動力を生かした撮影もできます。それに、カメラにこだわるとゴルフのクラブみたいに際限がなさそうですしね(笑)。
また、作家や作品に対してリスペクトがあるので、基本的に撮ったあとはトリミング以外の加工はしません。とくにアート作品を加工するのは、アーティストに対して失礼になると感じています。その分、撮影するときの構図にはこだわります。
──最後に、建築で注目するポイント、撮影のテクニックを教えてください。
1. 空間の広がりを感じさせるものを入れる
窓や階段、廊下、鏡といった、空間の広がりや奥行きを感じさせるものを入れるとスケール感が出てきます。とくにアーチの曲線、屋根や階段の直線が途中で切れるように撮影すると、画面の外にもずっと広がっているように見えます。
2. こだわりのある細部の装飾
エンブレムや文字といった小さなモチーフには、建築家のこだわりが表れます。美術館では、キャプションのフォントや大きさ、素材なども気にして見ています。なので、美術館に行くと撮影するところが多くて忙しいんですよ。
3. グリッドを表示して構図を決める
美大ではデッサンスケールという枠を使って構図を決めます。B3の画面にモチーフ全体は収まらないので、どこを切り取って描くかを訓練してきました。それが原点で、自分の感覚で画角は決めています。同じようにiPhoneの画面にグリッドを表示して水平・垂直を合わせます。カッチリとした構図が好きですね。
4. カメラ設定は2倍率、明るさは暗くする
レンズを2倍率にして引いた距離で撮影すると、レンズの歪みが出ません。また、画面は暗めにして撮影しています。そのほうが窓からの光が美しく撮影できます。明るすぎると白飛びしてしまうので、作品を撮るには良くないですね。
5. スケールを感じさせる
建築のスケールがわかるように心掛けています。一番わかりやすいのは人物を入れることです。建築模型ではスケールがわかるように人形を置くのですが、それと同じですね。たいてい自分が人物として入っています。その場合は構図を決めてから家族に撮ってもらっています。
次回は、アートにまつわる建築の代表格とも言うべき渋谷区立松濤美術館で、坂田さんと一緒に空間の魅力を発見していきます。