1890年に刊行されたジョン・アシュトンによる『Curious creatures in zoology』は、『奇怪動物百科』(高橋宣勝翻訳、博品社、1992年)として翻訳もされた書籍。古来の書物に描かれた生き物が収録されています。そのなかのひとつ、詩人スルーパーが描いたギリシャ神話の巨人族キュクロープスは怪物的で、日本の妖怪のよう。この神は単眼で、製鉄を司ります。日本にも鍛冶の神で単眼の天目一箇神(あめのまひとつのかみ)がいます。この神が零落した存在ともいわれる一本だたらは、単眼で一本足の怪物。鉄を生成するには熱く溶けた鉄を見つめ、フイゴを踏み続けなければならず、片目片足を損傷してしまうこともありました。鉄にまつわる神や妖怪が単眼一本足なのはそのことが反映されているといいます。スルーパーの怪物の足は重なっているだけで、ひょっとすると一本足ではないかもしれませんが、時代も土地も違うギリシャの神と日本の妖怪の姿に共通項があることは非常に興味深いものです。
ジョン・アシュトン『Curious creatures in zoology』よりビショップ・フィッシュ