東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
HOME トピックス 展覧会・イベント情報 美術館・劇場・活動スペース アーティストファイル アート作品ランキング コラム 支援制度・コンテスト情報
トップ > 西堂行人のトーキョー・シアター・ナビ
 
西堂行人のトーキョー・シアター・ナビ
No.008
『赤道の下のマクベス』(3/6〜3/25)
2008年度の日本の演劇賞を総なめにした舞台『焼肉ドラゴン』(2018年夏映画化。真木よう子、井上真央、桜庭ななみ、大泉洋ら出演)以来、戦後の影の日本史を描いた三部作が伝説的に語り継がれる鄭義信(チョン ウィシン)。新国立劇場に新たに書き下ろした待望の4作目がついに実現!

新国立劇場に鄭義信が帰ってくる。『焼肉ドラゴン』の感動は今もって忘れがたい。日韓の俳優が入り混じり、それぞれの特色を活かした劇の混成は絶妙だった。2008年の初演時は、平昌冬季オリンピックの開・閉幕式の総合演出を担当した梁正雄(ヤン ジョンウン)との共同演出だった。その後、『パーマ屋スミレ』(2012)が上演され、『たとえば野に咲く花のように』(2007)と合せて、第四弾がお目見えする。

今回の舞台となるのは、シンガポールのチャンギ刑務所。戦後まもなくの1947年、ここには戦争犯罪で死刑を宣告された者たちが収監されていた。多くは敗戦国である日本人だが、戦争に動員された朝鮮籍の者も混じっている。彼らは元上司だった日本人に命令されて捕虜を虐待した。その彼らが裁かれようとしているのだ。

鄭義信
鄭義信

戦争には勝利者はいない。戦死者やその家族はもとより、生き残った者たちも何らかの心の傷を負う。戦後になると、勝者と敗者は逆転する。暴力を振るった者は、今度はその罪を暴かれ、裁かれる。国籍を奪われ日本軍の兵士として加害者となった朝鮮人も罪を免れることはできない。

主人公、朴南星(パク ナムソン)は演劇に憧れ、シェイクスピアの『マクベス』に心酔した若者だった。戦後、刑務所の中で彼はこの不条理な境涯をマクベスの物語になぞらえて生き抜く。そしていつか上演することを夢見ている。

残酷で複雑な設定である。しかし死刑囚とはいえ生きている以上、希望がある。鄭義信の描く世界はどんな境遇に陥ろうとも笑いを忘れていない。この芝居は現実の悲惨さにもかかわらず、その境涯を笑い飛ばそうとする登場人物たちのエネルギーが溢れている。池内博之やベテランの平田満ら魅力的な男優9人が揃った。果たしてこの舞台を観て笑えるだろうか? それがこの劇の試金石のように思われる。

(左)池内博之 (右)平田満
(左)池内博之 (右)平田満

新国立劇場 開場20周年記念
『赤道の下のマクベス』

作・演出:鄭義信
出演:池内博之、浅野雅博、尾上寛之、丸山厚人、
木津誠之、チョウ ヨンホ、岩男海史、中西良介、平田 満

[期間]2018年3月6日(火)〜3月25日(日)
[会場]新国立劇場 小劇場(東京都渋谷区本町1-1-1)
http://www.nntt.jac.go.jp/

『赤道の下のマクベス』

西堂行人(にしどう・こうじん) 演劇評論家。明治学院大学文学部芸術学科教授。1954年東京生まれ。78年より劇評活動を開始し、アングラ・小劇場演劇をメインテーマとする。主な著書に『演劇思想の冒険』『韓国演劇への旅』『[証言]日本のアングラ』『唐十郎 特別講義―演劇・芸術・文学クロストーク』(編)など多数。最新刊は『蜷川幸雄×松本雄吉 二人の演出家の死と現代演劇』。

西堂行人(にしどう・こうじん)

創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
デジタルミュージアム
美術館・博物館の収蔵作品2万点以上の
デジタルアーカイブ
東京・ミュージアム ぐるっとパス
詳しくはこちら