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西堂行人のトーキョー・シアター・ナビ
No.009
『最後の炎』(4/14〜4/28)
ブレヒトの社会演劇を後継する現代劇作家と目されるデーア・ローアーによる衝撃作。過酷な苦しみとわずかな希望を抱えてもがく人々の“生”を、独自の詩的かつ叙事的な言葉であぶり出します。「歴史の教科書には記されないような、小さな記憶を丹念に拾い集めたようなセリフを足掛かりにしつつ、現代という時代、私たちという存在を確かにアトリエ空間に浮かび上がらせたい」(演出の生田みゆき)。

1937年に創設された文学座は、新劇としては最古の劇団で、昨年80周年を迎えた。
この劇団のモットーは、文学としての戯曲に基いた舞台の創造である。文学座は本公演とは別に、実験的な試みを並行させている。それが「文学座アトリエの会」である。ここから数多くの名作が生まれたが、なかでも20世紀の演劇シーンを一新したベケットの『ゴドーを待ちながら』はその極致だろう。言葉を大事にする伝統を持つ劇団が最新のドイツ戯曲に挑む。デーア・ローアーの『最後の炎』がそれだ。
紛争地から帰還した兵士は、サッカーに興じる少年がパトカーに轢かれるシーンをたまたま目撃する。そこから劇は、多くの人たちの発言で埋め尽くされる。少年の家族やパトカーを運転していた警官ら多彩な登場人物。彼らが織りなす対話が真実をあぶり出す。だがこの劇の妙味は、対話以外に語られるト書きとも詩ともつかぬ内的モノローグだ。俳優たちはこの言葉たちをどう舞台に外化するのか。

ダイアローグともモノローグとも違い、ト書きとも台詞とも異なる散文的なテクスト。ドイツでは劇作家ハイナー・ミュラー以来、劇作家たちはこの種のテクストをごく普通に書くようになった。こうした言語の実験が、従来の劇作の幅を拡げた。しかし、それをどうやって上演に結びつけたらいいのか。1980年代以後、これが現代演劇に突きつけられた課題となった。
ローアーは1964年生まれで、これまで日本でも『タトゥー』や『無実』『言葉のない世界』が上演されてきた。『最後の炎』も、2009年に新国立劇場でリーディング上演(演出=森 慎太郎)が、2011年には大阪の劇団エイチエムピー・シアターカンパニー(演出=笠井友仁)によって日本初演が行なわれている。

生田みゆき
生田みゆき

ここ数年、ローアー劇の静かなブームが劇界に流れている。老舗劇団がこうした実験作にどう挑むのか。若手演出家、生田みゆきの手腕が試される。

『最後の炎』稽古場風景
『最後の炎』稽古場風景

なお5月20日(日)18時より、座・高円寺 地下3階 けいこ場2にて、作者ローアー氏を迎えてシンポジウムが開催される。パネリストは劇作家・演出家の瀬戸山美咲、演出家の生田みゆき、司会は翻訳家で演劇評論家の新野守広。

文学座4月アトリエの会
『最後の炎』Das letzte Feuer

作:デーア・ローアー
訳:新野守広
演出:生田みゆき
出演:倉野章子、高橋紀恵、大場泰正、松井工、鬼頭典子、
上田桃子、西岡野人、奥田一平

[期間] 2018年4月14日(土)〜28日(土)
[会場] 文学座アトリエ(東京都新宿区信濃町10)
http://www.bungakuza.com/saigonohono/index.html

『最後の炎』
  • 倉野章子
  • 大場泰正
  • 鬼頭典子

左から、倉野章子、大場泰正、鬼頭典子

西堂行人(にしどう・こうじん) 演劇評論家。明治学院大学文学部芸術学科教授。1954年東京生まれ。78年より劇評活動を開始し、アングラ・小劇場演劇をメインテーマとする。主な著書に『演劇思想の冒険』『韓国演劇への旅』『[証言]日本のアングラ』『唐十郎 特別講義―演劇・芸術・文学クロストーク』(編)など多数。最新刊は『蜷川幸雄×松本雄吉 二人の演出家の死と現代演劇』。

西堂行人(にしどう・こうじん)

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