――2020年4月に東京都美術館で開催予定だった「ボストン美術館展 芸術×力」ですが、開幕の約1ヶ月前に開幕延期が決定、その後、中止が決定されました。音声ガイドの準備も進められていた中だったと思います。
上村夏実(以下、上村):予定通り開催ができないかもしれないと聞いたのが、なんと音声ガイド収録の当日だったんです。収録のためにスタジオに入って、さあ収録に臨みましょう、というタイミングで、主催の方から聞きました。アメリカからの作品輸送が難しいということで、止むを得ない事情ではあるのですが……。
――その時どのようなお気持ちでしたか。そこで収録自体が中止になる可能性もあったのでしょうか。
上村:やはりショックでした。私たち音声ガイドのスタッフだけではなく、展覧会に関わるすべての方々が残念な思いでしたし、辛かったと思います。ナレーターを務めた声優の鈴村健一さんと櫻井孝宏さんにも、予定通り開催できない可能性をその場でお伝えしました。「今から収録の予定ですが、実は……」と。お二人はびっくりされながらも「いつかきっと展覧会が実現して、お客さんに届けられる日が来るから、収録を一緒に頑張りましょう」と励ましてくださり、救われる思いでした。今日収録してもお蔵入りになってしまうかもしれない、という不安もありましたが、お二人の言葉も後押しとなり、収録は実施しました。