──木版画に魅せられたきっかけからお話いただけますか。
祖父が日本画材屋の番頭をしていて、うちには日本画や浮世絵の画集があり、それはよく見ていました。ただ、惹かれたのは浮世絵の木版画ではなく、高校生の頃好きになった、萩原朔太郎や北原白秋などの大正時代の詩集の挿絵でした。同じ木版画でも、詩集の挿絵は浮世絵とは全く違う、心象風景を版に刻む創作版画です。「こういう表現があるんだ」と感動して、自分もやってみたいと思いました。
──では、制作も高校生から?
いえ、私が通った定時制高校では、当時の美術の先生がおそらく木彫専門の方で、そもそもの科目名が「美術」ではなく「木彫り」だったのです(笑)。彫刻刀は使いましたが、高校でやったのは木版画ではなく立体の木彫。版画を本格的に学んだのは高校卒業後、武蔵野美術学園(2018年に閉校)に入ってからです。版画が学べる進学先というと私は美大しか思い浮かばなかったのですが、母が買ってきてくれた赤本が私にはちんぷんかんぷんで。美大は諦めて他の学校を調べるうちに見つけたのが、面接だけで入れる武蔵野美術学園でした。