──上野さんがフルートに出合ったのは何歳のことでしたか?
上野 8歳の時に、母に連れられてモーツァルトのフルート協奏曲をコンサートで聴いたのが出合いでした。香川県の高松市民会館という歴史のあるホールでの公演です。その時の強烈な印象は今でも忘れられません。どのあたりの席でどんな角度から聴いていたか、すべて覚えています。それがフルートに一目ぼれした瞬間で、情景が脳裏に焼き付いています。
母がピアノ教室をやっていたこともあり、ピアノは2歳から始めていたのですが、なぜかそれよりも心掴まれてしまった。すぐに「フルートを始めたい」と親に言いましたが、なかなか習わせてはもらえず。自分が本気だということを猛アピールするために、毎朝早起きして新聞を取ってきて、フルートに関する記事があれば赤ペンでグルグルっとマークをしたり、フルートが出る番組があれば録画して大音量で流し続けたり、フルート貯金箱を作って祖父母の家に行くたびに「お願いします」とお小遣いを入れてもらったりと、あの手この手でしたね(笑)。それを2年間やり続けました。
──すごい情熱ですね! では、2年後にようやく念願叶って始められたのですね。
上野 はい、10歳でようやく「これは本気だ」ということで、習わせてもらうことができました。先生を探し始めたところ、香川県はわりと芸術が盛んで、すぐに良い先生に出会えました。その先生の教えは、今振り返っても私の原点といいますか、とても大事なことを伝えてくださいました。たとえば「夕焼け小焼け」を吹くなら、まずは「夕焼けってきれいだなぁ」と感じる心を大切にしようね、という教育。「技術的な力はあとからでもつけられるから、感じる心、表現したいという思いを育てよう」というお考えのもと、指導してくださったのです。幼い頃、母がよく歌を歌ってくれていたので、馴染みのある童謡などから習い、とてもスムーズに入っていけましたね。とにかくフルートが大好きで大好きで、「もう練習やめなさい」と言われるまで吹き続けていました。