では、どんな基準でどのようにアーティストを選ぶのだろう?
萩原 各アーティストからの紹介が多いのですが、美大の卒業制作展に足を運んだり、海外の展覧会やアートフェアに出品しているアーティストにコンタクトしています。選ぶ基準としては、作品だけではなく、作品に対する姿勢や感覚を共有できるかということも考えたりしています。
すると、ポートフォリオの持ち込みには対応してくれるのか? アーティストのタマゴたちにとっては、気になるところだろう。萩原さんは、きっぱりと答えてくれた。
萩原 私がおすすめするのは、どのようなかたちであれ、作品を展示して、「見に来て下さい」と声をかける方が、ポートフォリオを持ち込むより、だんぜん良いと思います。実物を展示し、見ていただいた方がそのアーティストのやりたいことがより伝わりやすいですからね。
萩原さんは、HAGIWARA PROJECTSをみずから立ち上げる前は都内のギャラリーに勤務していた。だが、次第に独立を意識するようになる。大きなきっかけとなったのは、東日本大震災だ。
萩原 地震当時は都内の勤務先にいましたが、大きく揺れる中、やりたいことをやらないまま死ぬと後悔するかもしれないという思いがよぎりました。勤務先のギャラリーは、海外のアーティストが9割近く。同世代の日本のアーティストたちも含めて仕事がしたいという気持ちも募ってきていたところで、独立を考え始めました。
そして、わずか2年後の2013年に独立を実現する。さらに移転したのは冒頭のとおり。
なお、現在のギャラリーは空間にも特色がある。塗装をしていない、木目がむき出しの板をそのまま壁として利用。クールな空間を見せている。
萩原 新たな出発なので、ちょっと違うことに挑戦してみようと思いました。今のスペースの床がコンクリートだし、ガレージ的な雰囲気を出してみようと思って壁を木にしました。作品の背景としてはかなり強い印象ですよね。アーティストには木目に負けない作品をつくってほしいという希望もこめてこの壁にしてみました。やってみて満足したのですが、意外にメンテナンスが大変です。アーティストも木の壁に苦戦しています。そのうち白くしようと思っています。
木目のギャラリー空間を見たいなら、いまのうちにHAGIWARA PROJECTSに出かけたい。