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TALION GALLERY 上田剛史さん

新進ギャラリストに聞くアートとマーケット

No.001
タリオンギャラリーの上田剛史さん

ギャラリストの声をお届けする新連載。アーティストとの出会い方、作品のどこに注目するのか、アートマーケットの動向など、ギャラリーごとの特色を紹介します。

登場するギャラリストは、一般社団法人日本現代美術商協会(CADAN)に所属するギャラリーの中から、都内でこの数年に設立されたギャラリーの主宰者たち。第1回はタリオンギャラリー(TALION GALLERY)の上田剛史さんです。ギャラリー名のTALIONという言葉には、美術を取り巻く人々、制度や言葉などが新たなつながりをつむぐ原理を見出したいという思いが込められています。高度に批評的な視座で展覧会コンセプトを提示し、複数のアーティストの作品をキュレーションするスタイルが特徴的です。

東京のアートシーンの最前線を切り取る視点はどのようなものなのか。ギャラリストを志す人にも必読のシリーズです。


Text: 新川貴詩
Photo: 中川周

目白に移転。10年目の転機に思うこと

連載の第1回は、いま、ぜひとも足を運びたいギャラリーやアートスペースを紹介していく。まず1回目で取り上げるのはタリオンギャラリー。目白駅と雑司ヶ谷駅の間にあり、オープンして今年でちょうど10周年にあたる。2011年に谷中でオープンし、建物の解体に伴って2014年に目白に移転した。このエリアを選んだ理由とは? 代表の上田剛史さんは次のように語る。

上田  エリアを選んだつもりはなくて、たまたまなんですよ。使い勝手のよい広さがあって、天井高もあって、搬入経路が確保できて、駅からさほど離れずに賃料も抑えたいとなると、都心で条件に合う物件は限られてきます。不動産屋にもいろいろ当たって、いくつか候補の中からここに決まったという次第です。ただ、目白・雑司ヶ谷の地域は谷中の雰囲気に似てるところがありますね。たとえば、昔ながらの商店街があったり、古いお寺があったり。

通り沿いには小さな看板。ビルの地下に下りていくとギャラリーの入口があり、入るとすぐ受付になっている

タリオンギャラリーでは、年に展覧会を8回ほど開催。すべてが企画展だ。去年はコロナ禍で営業自粛もしたが、それでも6本の展覧会を実現。そして、コンセプトや主題が特徴的なグループ展や、2人展や3人展も多いのが特徴だ。
アーティストを選ぶにあたっては、「その作家が取り組んでいる表現手法やメディアに対する認識、あるいは認識が及ばないところへの向き合い方」を重視する。

上田   個展ももちろん実施しますよ。でも2人展、3人展が多いのは、鑑賞者に作品を見てもらいたいからです。個展だと鑑賞者は作品を見ているようで、実は作家を見ている面がある。作品そのものを見てほしい気持ちが僕にはあって、それで2人展、3人展を企画しているとも言えます。でもまあ、作家は個展をやりたがりますけどね。
それから、他のギャラリーと比べて、所属作家以外のアーティストが参加する展覧会が多いのもひとつの特色かもしれません。それも、たった1回だけ参加した人は少なくて、一度関わってもらったら、その後、いろいろと展開していくことが多いんです。いざ展覧会をやってみて、こちらが発見することも多くありますからね。

2021年9月4日から10月3日まで開催された関真奈美、前谷開、松元悠の3人展「船は岸に辿り着けるのか」。展示タイトル、コンセプトも上田さんによるもの。
手前の四点組の作品は松元悠「アルマゲール島(祖母と大叔母の話)」(2018年)。
右壁面は関真奈美の連続する作品。左から「設定」「集合」「模様#1」「模様#2」「模様#3」「模様#4」(全て2021年)。
左壁面、前谷開「Scape」(2021年制作)。
正面左、関真奈美「見本」(2021年制作)。正面右2点、前谷開「Scape」(2021年制作)。
右壁面、松元悠「血石と蜘蛛」(2019年制作)。

アーティストやクリエーターとじっくりと付き合っていくのも、ここの特徴といえそうだ。なお、上田さんは大学を卒業した後、現代美術のギャラリーであるhiromi yoshiiに就職。2、3年勤務した後、29歳の時に独立した。アートに携わる仕事は数あるが、なぜギャラリストを選んだのだろう?

上田   いずれ独立するという思いでギャラリー勤務をしていました。業務があまり細分化されていない職場だったので、さまざまなことに取り組めましたね。ギャラリストは、展覧会のキュレーションもするし、本の出版もできるし、批評もしないといけない。もちろんディーリングも。融通無碍な何でも屋だから、ギャラリストになりました。

「髙柳恵里」作品集(2017年)
テキスト:蔵屋美香、沢山遼、髙柳恵里/デザイン:刈谷悠三+角田奈央/neucitora
二艘木洋行+平山昌尚「ニューホライゾン」(2018年)。
テキスト:副田一穂、中尾拓哉/デザイン:刈谷悠三+角田奈央/neucitora

タリオンギャラリーは出版にも熱心に取り組み、これまでアートブックや作品集などを刊行。二艘木洋行+平山昌尚『ニューホライゾン』や『髙柳恵里』など、非常に凝った装丁の作品集も多い。
ところで、アート愛好者にとってギャラリーは作品を見る場所だけど、アーティストやその卵にとっては、売り込みの場、という面もある。では、上田さんは売り込みを受け付けているのだろうか?

上田   ポートフォリオが送られてきたら必ず見ますね。知人や友人の紹介があれば、直接会うこともありますよ。ポートフォリオを見るにあたって、売れるかどうかは最初に見る段階では考えません。その作家が取り組んでいる表現手法やメディアに対する認識、あるいは認識が及ばないところへの向き合い方、そのあたりに着目することが多いですね。

そろそろ最後の質問だ。10周年にあたり、これからの10年のビジョンはあるのだろうか? 上田さんは朗らかに語った。

上田   ありますよ。でも言いません。ネタバレになりますから(笑)。

上田さん、そしてタリオンギャラリーには、不言実行の意志がうかがえる。

「ギャラリストは長い年月をかけてアーティストとつきあっていく。そこが醍醐味」と上田さん

タリオンギャラリー
住所:東京都豊島区目白2-2-1 B1
電話:03-5927-9858
開廊時間:水~日 11:00 - 19:00
定休日:月、火、祝日
email: info@taliongallery.com

CADAN有楽町
住所:東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル 1F
電話:070-6464-1438
営業時間:火~金11:00-19:00/土、日、祝11:00-17:00
定休日:月(祝日の場合は翌平日)
https://cadan.org/cadan-yurakucho/

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