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子どもたちと楽しむ、音楽+美術+理科の総合ワークショップ「いきものスケッチブック」

イベント・レポート

No.045
講師を務めた春畑セロリさん(音楽)、秋田彩子さん(美術)、蝦名元さん(理科)

「いきものスケッチブック プロジェクト」は、音楽・美術・理科を総合した子ども向けのワークショップのシリーズで、2021〜23年にかけて実施されました(主催:音楽之友社)。いきものをテーマにしたピアノ曲集を作るにあたり、ワークショップを通じて子どもたちの発想を取り入れた曲を制作する試みです。このシリーズでは作曲家の春畑セロリ(はるはた・せろり)さんを中心に、それぞれの分野のプロフェッショナルが集結。いきものを音や色で表現するワークショップの様子を取材しました。


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2023.09.05

プロジェクトの経緯

春畑セロリさんは、絶滅危惧種の動物をテーマとした音楽と絵とポエムのコラボレーション曲集『ゼツメツキグシュノオト』(音楽之友社、2018年)の出版をきっかけとして、小学校で『ゼツメツキグシュノオト』を弾く機会があり、理科の先生も招いたワークショップを行いました。そこで手応えを感じたことから、理科、美術の先生を交えた総合的なワークショップを構想しました。その構想が実現した「いきものスケッチブック プロジェクト」は、いきものをテーマにしたワークショップを重ねるなかで、子どもたちと共に、子どもたちの発想力を生かした作曲集を制作することを目指すプロジェクトです。

2021年に開催したワークショップの様子
写真提供:音楽之友社
2021年に開催したワークショップの様子
写真提供:音楽之友社

音楽、理科、美術を融合したワークショップ

このワークショップの特徴は、春畑セロリさんを中心に、理科、美術のプロフェッショナルも講師に招いていることです。子どもたちは専門的な知識を横断的に得ながら、表現する方法を学んでいきました。講師には、進化生物研究所の研究員・学芸員である蝦名元(えびな・つかさ)さんと、ものづくり教室を主宰する秋田彩子(あきた・あやこ)さんが加わり、春畑さんと3名体制。ジャンルを融合したワークショップが都内の会場で2021年11月から計6回行われてきました。

過去6回のワークショップでは、毎回異なるいきものをテーマに設けてきました。1回目は「匂いのある葉っぱ」。香りのする葉について学んだ後、実際に葉の匂いを嗅ぎ、そのイメージを絵と音に置き換えました。2回目は「ちょう」。世界の蝶の標本を見た後、子どもたちは思い思いの蝶を描きます。その後、蝶を音で表現しました。3回目は「くらげ」。くらげの生態を学んだ後、透明感を表す技法を教わりながら絵を描き、くらげのような音を探りました。4回目以降はそれぞれ「サル」「ペリカン」「カエル」をテーマに開催し、いきものをのびのびと表現しました。

集大成 いのちをつなぐ

「いきものにアプローチ! ファイナル」のミニワークその1「夜に咲く花」では、夜に花を咲かせる植物の理由や特徴などを学び、レースペーパーを使った工作を行なった
ミニワークその2「擬態」から。実際に昆虫の標本を見ながら解説を聞く
ミニワークその3「トゲ」では、なぜサボテンや栗にトゲがあるのかを学び、トゲトゲしたものからインスピレーションを得てメロディーを奏でた

そして、いきものの知識を学びつつ美術や音楽の表現に置き換える試みの集大成として、「いのちをつなぐ」をテーマにした最後のワークショップが中目黒GTプラザホールで2023年6月25日に行われました。当日は子どもたちやその親など約100名が集まり、3つのミニワーク「夜に咲く花」「擬態」「トゲ」を体験しました。
たとえば「擬態」のミニワークでは、実際に虫の標本を見ながら蝦名さんからおはなしを聞いたあと、秋田さんが考案・作成した擬態した昆虫が隠れた線画に、色鉛筆で塗り絵。最後には、春畑さんのピアノに合わせて、擬態する虫になったつもりで腕を動かすことで、五感をいっぱいに使ってテーマに取り組みます。それぞれのワークショップは親も交えてみんなで協力し合いながら行われ、終始大盛り上がり。ミニワークのテーマを通じて、「いのちをつなぐ」ことを多角的に学ぶことができました。
「私たちはみんなひとつしかない命を持っています。ひとつしかないけれど、必ずひとつ持っています。それをどう大事にしていくか、みんなで話し合って考えてほしい」とワークショップの最後に春畑さんは子どもたちへ伝えました。

種の入った袋でマラカスをつくってリズムをとる
ピアノの音に合わせて、全員でアンサンブル

ワークショップを終えて——3人の講師より

春畑セロリ(音楽)

春畑セロリさん。背景は、この日の午前中にプレワークとして行われた「みんなで描く大きな絵 ~いきものの暮らし~」で制作した「秋」の絵

過去6回のワークショップは新型コロナウイルス感染症感染防止を考慮して、小学生10名を定員に開催してきました。今日は最後のワークショップだったので、小さなお子様やご両親も対象に、いつも以上の人数で開催しましたが、みなさん生き生きとしていて楽しそうでした。「なんでこんなことを知ってるの?」と思うくらい、理科の質問にも積極的に答えていてびっくり。子どもたちには、この総合ワークショップのように、いろいろなことについて誰かの意見を聞きながら、どうしたらいいのかを考えるような体験をたくさんしてほしいと願っています。

秋田彩子(美術)

秋田彩子さん。背景は「春」の絵

講師の3人は、それぞれの分野で子どもたちのためのワークショップを行ってきていますから、打ち合わせなどはあまりせず、お互いの力を信頼して進めたことも多かったです。子どもたちの発想は自由なので、型に当てはめるよりも、任せたほうがうまくいく。ルールから外れてしまっても最終的にはうまくまとまるので、その子のなすがまま、あるがままにやってもらうように意識しています。背景の絵を描いたワークショップでもそれぞれの四季に咲く植物の絵を描いてもらったのですが、自由に描いてもらった部分もたくさんあります。それでも、春夏秋冬を表現する絵が完成したので驚きでした。

蝦名元(理科)

蝦名元さん。背景は「夏」の絵

美術と音楽の分野のお二人と今回ご一緒させていただき、考え方やアプローチなど、私にとっても学びになることが多くありました。理科的な考えと芸術的な部分との落とし所を探ることなど、難しいと感じる部分もありましたが、同時に楽しくもありました。昨今は横断的な教育が求められています。学びながら、それを音楽にしたり、何かを工作するなど同時多発的に行うことで脳が活性化すると言われています。横断的な学習の機会がもっと増えれば、ガリレオ・ガリレイや、レオナルド・ダ・ヴィンチのような人たちが現れるのかもしれないと思うと、今から楽しみです。

作曲集として刊行予定

「いきものスケッチブック プロジェクト」を通じて得られたアイデアを元に、年内を目指して、いきものをテーマにした作曲集が刊行される予定です。春畑さんは「今日弾いたフレーズやこれまでのワークショップで得られたことをヒントにしながら曲を書き上げたいと思います。科学者の方にサポートしてもらいながら日光や高尾山に取材もしており、そこで聴いた動物の声もアイデアとして詰め込んでいきたいです」と抱負を語ります。今後も、春畑さんのイベントから目が離せません。

Text:吉田杏
Photo:畠中彩

いきものスケッチブック プロジェクト
主催:音楽之友社出版部
講師:春畑セロリ(音楽)、秋田彩子(美術)、蝦名元(理科)
https://ontomo-mag.com/tag/ikimono-sketchbook/

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