東京・目白の閑静な住宅街の一角にある目白漆學舎(めじろうるしがくしゃ)。ここは漆を専門とする人もしない人も、さまざまな人が出入りする漆の学び舎です。
学び舎に集う[前編]
アーティスト・サバイバル・メソッド
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学び舎に集う[前編]
目白漆學舎
技術の習得には途方もない時間を要する漆芸。目白漆學舎は、プロの作家を目指す若手漆芸家たちが、技術を磨いたり知識を深めたりするためにスタートした場所です。前編では代表の室瀬智弥さんに、目白漆學舎をはじめ、漆やそれを学ぶことについてお話を伺いました。
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日本人と漆の歴史は縄文時代から
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そもそも漆とはどんな素材なのでしょう?目白漆學舎の母体となる「目白漆芸文化財研究所」の代表、室瀬智弥(むろせ・ともや)さんに伺いました。
「ウルシノキという木から採取する樹液で、どんな環境下でも溶けにくく腐りにくい素材です。他の自然素材に比べると、接着力と塗膜の強さに関しては群を抜いています。そのため、食器のような身近な生活用品から、寺社などの歴史的建造物まで幅広く使用されています。縄文時代の出土品からも漆製品が発見されるなど、日本では数千年以上も昔から身近な存在として親しまれてきました」
室瀬さんは人間国宝の漆芸作家・室瀬和美(むろせ・かずみ)さんを父親に持ち、ご自身も作品を制作しています。子供の頃は漆の道を歩むことは考えていなかったそうですが、徐々に漆の奥深さや可能性に惹かれ、大学卒業後、漆芸を生業にすることを志しました。
「漆は『日本文化の背骨』といっても良いくらい歴史ある素材。それなのに明らかになっていないことが多くあり、そこに魅力を感じています」と室瀬さん。
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学校を卒業しても学べる場所を
目白漆學舎では漆芸のプロや、プロを目指す人が切磋琢磨できる活動に力を入れています。というのも「学校を卒業した後に漆の技術や表現力を高めていく環境がなかなかない」のです。
「現代では、漆芸の技術は美大や専門学校で習得する人が多いですが、それはあくまでファーストステップの場所。プロの漆芸家になるには、学校での知識や経験だけでは足りないのです。とはいえ近年は弟子入りできるような環境も少なく、ひとりではなかなか学ぶ機会もありません。母体である目白漆芸文化財研究所は、父親の世代が立ち上げました。実はそのころから漆を学ぶ場をつくりたい、と常々考えていたようです。ようやくその思いが結実したのが目白漆學舎です」
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研鑽のためのネットワークづくり
情報や知識を交換したり、ともに深めたりするため1~2カ月に一度、勉強会も開催。さまざまな専門家をゲストに迎え、その都度メンバーを変えて集まっています。
「漆に限らず、あらゆる素材の研究者や技術者、漆を仕入れている卸業者などさまざまな方をお呼びし、毎回そのテーマに興味のありそうな方に参加のお声がけをしています。工芸に関するさまざまなネットワークのハブとしても、この場所を育てていけたら」
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目白漆學舎はスタートして3年目。「いつかは漆の学校としてさらに多くの人が学べる場所になれたらと思っています。スタッフの人数も限られていたり、ほかの仕事もあったりで急には難しいのですが。その土壌をいまつくりつつあるところです」と室瀬さんは今後を語ります。
ここで腕を磨く20~30代の若手スタッフは3名ほど。彼らは目白漆學舎で働き学びながら、漆芸家として独立を目指しています。
後編ではスタッフとして所属する若手漆芸家の吉田秀俊(よしだ・ひでとし)さんに、アーティストとして生きていくための術を伺います。
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目白漆學舎
◎住所:東京都新宿区下落合4-22-11
[お問い合わせ]
目白漆芸文化財研究所
◎TEL:03-3954-1815
◎E-mail:info@urushigakusha.jp
http://www.urushigakusha.jp/
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