「塗りにも一生、蒔絵(まきえ)にも一生。漆芸は突き詰めると一生かけても時間が足りないほど奥深い技なんです」。そう話すのは漆の世界に入って8年目の若手漆芸家、吉田秀俊(よしだ・ひでとし)さん。新潟県出身、31歳の吉田さんは、学生時代は電気工学を専攻していました。その後、電子部品に関する仕事に就き、漆の道へ転身を決めたのは24歳のとき。茶道の師範だった祖母の影響で、幼い頃に見た漆芸品の魅力が忘れられなかったそうです。
「黒い漆に金粉や青い貝。祖母が使っていた茶道具を見て、子供ながらに美しいと感じた記憶があります」