東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
HOME トピックス 展覧会・イベント情報 美術館・劇場・活動スペース アーティストファイル アート作品ランキング コラム 支援制度・コンテスト情報
トップ > アーティスト・サバイバル・メソッド
 
アーティスト・サバイバル・メソッド
method 08
学び舎に集う[前編]
目白漆學舎

技術の習得には途方もない時間を要する漆芸。目白漆學舎は、プロの作家を目指す若手漆芸家たちが、技術を磨いたり知識を深めたりするためにスタートした場所です。前編では代表の室瀬智弥さんに、目白漆學舎をはじめ、漆やそれを学ぶことについてお話を伺いました。

目白漆學舎の体験教室は、週に数日、漆、蒔絵、金継ぎと3つの教室を開講。子供からお年寄りまでさまざまな世代の人が一緒に漆を学ぶ。日々研鑽を積む若手漆芸家が講師を務めることもあり、人気でなかなか空きが出ない
目白漆學舎の体験教室は、週に数日、漆、蒔絵、金継ぎと3つの教室を開講。子供からお年寄りまでさまざまな世代の人が一緒に漆を学ぶ。日々研鑽を積む若手漆芸家が講師を務めることもあり、人気でなかなか空きが出ない

日本人と漆の歴史は縄文時代から

東京・目白の閑静な住宅街の一角にある目白漆學舎(めじろうるしがくしゃ)。ここは漆を専門とする人もしない人も、さまざまな人が出入りする漆の学び舎です。

目白漆學舎の庭にあるウルシノキ

ウルシノキから樹液を採取するときに使う「タカッポ」という器

目白漆學舎の庭にあるウルシノキ(左)。右の写真はウルシノキから樹液を採取するときに使う「タカッポ」という器

そもそも漆とはどんな素材なのでしょう?目白漆學舎の母体となる「目白漆芸文化財研究所」の代表、室瀬智弥(むろせ・ともや)さんに伺いました。
「ウルシノキという木から採取する樹液で、どんな環境下でも溶けにくく腐りにくい素材です。他の自然素材に比べると、接着力と塗膜の強さに関しては群を抜いています。そのため、食器のような身近な生活用品から、寺社などの歴史的建造物まで幅広く使用されています。縄文時代の出土品からも漆製品が発見されるなど、日本では数千年以上も昔から身近な存在として親しまれてきました」

目白漆學舎の母体となる「目白漆芸文化財研究所」の代表・室瀬智弥さん
目白漆學舎の母体となる「目白漆芸文化財研究所」の代表・室瀬智弥さん

室瀬さんは人間国宝の漆芸作家・室瀬和美(むろせ・かずみ)さんを父親に持ち、ご自身も作品を制作しています。子供の頃は漆の道を歩むことは考えていなかったそうですが、徐々に漆の奥深さや可能性に惹かれ、大学卒業後、漆芸を生業にすることを志しました。
「漆は『日本文化の背骨』といっても良いくらい歴史ある素材。それなのに明らかになっていないことが多くあり、そこに魅力を感じています」と室瀬さん。

目白漆芸文化財研究所では文化財の保存・修復の仕事も。「漆は漆でなおす」というコンセプトのもと熟練の技術が生かされる*
目白漆芸文化財研究所では文化財の保存・修復の仕事も。「漆は漆でなおす」というコンセプトのもと熟練の技術が生かされる

学校を卒業しても学べる場所を

目白漆學舎では漆芸のプロや、プロを目指す人が切磋琢磨できる活動に力を入れています。というのも「学校を卒業した後に漆の技術や表現力を高めていく環境がなかなかない」のです。
「現代では、漆芸の技術は美大や専門学校で習得する人が多いですが、それはあくまでファーストステップの場所。プロの漆芸家になるには、学校での知識や経験だけでは足りないのです。とはいえ近年は弟子入りできるような環境も少なく、ひとりではなかなか学ぶ機会もありません。母体である目白漆芸文化財研究所は、父親の世代が立ち上げました。実はそのころから漆を学ぶ場をつくりたい、と常々考えていたようです。ようやくその思いが結実したのが目白漆學舎です」

塗り見本。手前から奥に従って漆が塗り重ねられており、通常10層ほど重ねる
塗り見本。手前から奥に従って漆が塗り重ねられており、通常10層ほど重ねる

研鑽のためのネットワークづくり

情報や知識を交換したり、ともに深めたりするため1〜2カ月に一度、勉強会も開催。さまざまな専門家をゲストに迎え、その都度メンバーを変えて集まっています。
「漆に限らず、あらゆる素材の研究者や技術者、漆を仕入れている卸業者などさまざまな方をお呼びし、毎回そのテーマに興味のありそうな方に参加のお声がけをしています。工芸に関するさまざまなネットワークのハブとしても、この場所を育てていけたら」

漆の装飾に使う螺鈿(らでん)の材料となる貝の殻

貝の殻(左写真)の真珠層を薄く削ったもの

漆の装飾に使う螺鈿(らでん)の材料となる貝。貝の殻(左写真)の真珠層を薄く削ったもの(右写真)を文様の形に切って漆面にはめ込む

目白漆學舎はスタートして3年目。「いつかは漆の学校としてさらに多くの人が学べる場所になれたらと思っています。スタッフの人数も限られていたり、ほかの仕事もあったりで急には難しいのですが。その土壌をいまつくりつつあるところです」と室瀬さんは今後を語ります。
ここで腕を磨く20〜30代の若手スタッフは3名ほど。彼らは目白漆學舎で働き学びながら、漆芸家として独立を目指しています。
後編ではスタッフとして所属する若手漆芸家の吉田秀俊(よしだ・ひでとし)さんに、アーティストとして生きていくための術を伺います。

金継ぎや蒔絵(まきえ)の材料となる金粉。粒の形によって数十種類の金粉がある
金継ぎや蒔絵(まきえ)の材料となる金粉。粒の形によって数十種類の金粉がある

文:佐藤恵美
写真:中川周(*以外)

目白漆學舎
目白漆學舎

◎住所:東京都新宿区下落合4-22-11

[お問い合わせ]

創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
デジタルミュージアム
美術館・博物館の収蔵作品2万点以上の
デジタルアーカイブ
東京・ミュージアム ぐるっとパス
詳しくはこちら