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HAGIWARA PROJECTS 萩原ゆかりさん

新進ギャラリストに聞くアートとマーケット

No.003

ギャラリストの声をお届けするこの連載では、アーティストとの出会い方、作品のどこに注目するのか、アートマーケットの動向など、ギャラリーごとの特色を紹介します。

登場するギャラリストは、一般社団法人日本現代美術商協会(CADAN)に所属するギャラリーの中から、都内でこの数年に設立されたギャラリーの主宰者たち。今回は2021年に東京都現代美術館にもほど近い場所にオープンした「HAGIWARA PROJECTS」。木目がむき出しの壁面という特徴的な空間のなかで、地主麻衣子や土肥美穂、早川祐太、今井俊介、城戸保、額田宣彦、ザック・プレコップら、映像、絵画、写真など国内外のアーティストの個展を開催しています。代表の萩原ゆかりさんが提案する、若いアーティストの効果的な売り込み方とは……。


Text: 新川貴詩

Photo: 中川周


アートファンの立ち寄りやすい場所

東京都現代美術館がある清澄白河には、いくつものギャラリーがある。その中でも、ぜひとも立ち寄りたいのがHAGIWARA PROJECTSだ。
オープンしたのは2021年3月だが、ここに移転するまでは渋谷区初台が拠点だった。初台では東京オペラシティアートギャラリーやNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]が近くにあった。いずれもアートファンがちょっと寄り道するには絶好の立地条件と思われるが、実際はどうなのだろう? HAGIWARA PROJECTSの代表、萩原ゆかりさんは語る。

萩原 初台の頃と比べ、お越しいただけるお客さんの幅が広がりました。人気のギャラリーも何軒かありますし、東京都現代美術館と合わせて回られてお見えになる方が多いです。ここ最近は美術館に行っても以前と違う若い人を多く見るようになりました。若いコレクターや、コレクター志望の方が熱心に足を運ばれているように感じます。

初台から拠点を移して、清澄白河に2021年に開廊

ここのギャラリーは、若手や中堅のアーティストを中心に、絵画も写真も映像作品も扱う。日本人の作品を展示したり、海外作家の作品も紹介。個展を中心に年間に5〜6本の展覧会を実施する。

萩原 ギャラリーの重要な役割のひとつは、アーティストの新作を展示し、見ていただくことです。

2021年5月21日から6月18日まで開催された「尾竹隆一郎展」

では、どんな基準でどのようにアーティストを選ぶのだろう?

萩原 各アーティストからの紹介が多いのですが、美大の卒業制作展に足を運んだり、海外の展覧会やアートフェアに出品しているアーティストにコンタクトしています。選ぶ基準としては、作品だけではなく、作品に対する姿勢や感覚を共有できるかということも考えたりしています。

すると、ポートフォリオの持ち込みには対応してくれるのか? アーティストのタマゴたちにとっては、気になるところだろう。萩原さんは、きっぱりと答えてくれた。

萩原 私がおすすめするのは、どのようなかたちであれ、作品を展示して、「見に来て下さい」と声をかける方が、ポートフォリオを持ち込むより、だんぜん良いと思います。実物を展示し、見ていただいた方がそのアーティストのやりたいことがより伝わりやすいですからね。

今井俊介 《untitled》 2020年 カンヴァスにアクリル絵具 62.5 x 50 cm
今井俊介 《untitled》 2020年 カンヴァスにアクリル絵具 90 x 72 cm

同世代のアーティストを紹介したいと独立

萩原さんは、HAGIWARA PROJECTSをみずから立ち上げる前は都内のギャラリーに勤務していた。だが、次第に独立を意識するようになる。大きなきっかけとなったのは、東日本大震災だ。

萩原 地震当時は都内の勤務先にいましたが、大きく揺れる中、やりたいことをやらないまま死ぬと後悔するかもしれないという思いがよぎりました。勤務先のギャラリーは、海外のアーティストが9割近く。同世代の日本のアーティストたちも含めて仕事がしたいという気持ちも募ってきていたところで、独立を考え始めました。

そして、わずか2年後の2013年に独立を実現する。さらに移転したのは冒頭のとおり。
なお、現在のギャラリーは空間にも特色がある。塗装をしていない、木目がむき出しの板をそのまま壁として利用。クールな空間を見せている。

萩原 新たな出発なので、ちょっと違うことに挑戦してみようと思いました。今のスペースの床がコンクリートだし、ガレージ的な雰囲気を出してみようと思って壁を木にしました。作品の背景としてはかなり強い印象ですよね。アーティストには木目に負けない作品をつくってほしいという希望もこめてこの壁にしてみました。やってみて満足したのですが、意外にメンテナンスが大変です。アーティストも木の壁に苦戦しています。そのうち白くしようと思っています。

木目のギャラリー空間を見たいなら、いまのうちにHAGIWARA PROJECTSに出かけたい。

ギャラリーの内壁は全面木目調。
「こうすれば売れる、というようなアドバイスはしません。アーティストのつくりたいものや新しい表現がどうすればより伝わるかを一緒に考えます」と萩原さん

HAGIWARA PROJECTS
住所:東京都江東区常盤1-13-6-1F
開廊時間:水-土 12:00 - 19:00
https://www.hagiwaraprojects.com/

CADAN有楽町
住所:東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル 1F
電話:070-6464-1438
営業時間:火~金=11:00-19:00/土、日、祝=11:00-17:00
定休日:月(祝日の場合は翌平日)
https://cadan.org/cadan-yurakucho/

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