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ずかんミュージアム銀座

新しいアートスポット

No.007

動物や魚、昆虫などの生き物に出合えるミュージアムが、2021年7月、銀座にオープンしました。その名も「ずかんミュージアム銀座」。北半球から南半球まで地球上のあらゆる場所に生息する生き物たちが、実際の環境を再現した空間に現れます。テクノロジーとクリエイティビティにより実現した、これまでにない新しいミュージアムを体験レポートします。


地球の時間と空間が一つに詰まった、新感覚のミュージアム

「ずかんミュージアム銀座」は、数寄屋橋交差点に面した商業ビル、東急プラザ銀座の6階にあります。ここは、図鑑に載る地球上のさまざまな生物に出合い、その息づかいに触れられる場所です。多様な生物が共存する空間や時間をめぐりながら、自然を五感で体験できることから、子供から大人まであらゆる世代に好評を博しています。

最初の部屋では円形のスクリーンに囲まれ、オープニング映像が始まる

まずチケットを購入すると、「記録の石」とよばれる端末を1組につき1台持ち、図鑑の世界へ入っていきます。円形のスクリーンに囲まれた部屋でオープニング映像が流れると、さあ冒険の始まりです。ミュージアムは、森、清流、川と湖、アリの目線、草原といった5つのゾーンに分わかれ、その中を自由に散策していきます。それぞれのゾーンに生息する動物や昆虫を「記録の石」で記録し、その出合いを楽しみながら、生き物の生態を学ぶことができます。

生き物に近づくと「記録の石」にヒントが浮かびあがる。生き物がそのヒントに書いてある行動をとったときに「記録ボタン」をタップすると記録でき、生き物の名前や行動の理由を教えてくれる

このミュージアムを立ち上げたのは、佐々木ホールディングス株式会社、株式会社小学館、株式会社エイド・ディーシーシー、株式会社ドリル、株式会社電通、株式会社サニーサイドアップ、株式会社朝日新聞社の7社からなる合同組合。立ち上げに関わった株式会社エイド・ディーシーシーの九里昌宏(くのり・まさひろ)さんは、「図鑑の出版社のなかでも老舗の株式会社小学館と協力し、デジタルエンターテインメントのチームと図鑑出版社の長所を合わせた、『地球の生命』をテーマにした体験型ミュージアムの実現を目指すことになりました」と話します。2002年の初版以来、累計発行部数1100万部を超える『小学館の図鑑NEO』の編集部が、生物やその環境に関する学術的な側面まで、全面的にバックアップしました。

ずかんミュージアム銀座のゼネラルプロデューサー、九里昌宏さん(株式会社エイド・ディーシーシー 事業開発本部)
「ディープフォレストゾーン」にて。北半球に生息するヘラジカ。生き物には近づきすぎると、警戒して逃げてしまうので注意

遊びながら自然に学習できる、アカデミックエンターテインメント

そうしてできたずかんミュージアム銀座には、親子はもちろん大人同士で来場する人も多く、幅広い世代の来場者がありリピーターも多いといいます。

このミュージアムをつくるにあたり、こだわった点は「本物らしさ」です。デジタル技術を用いた体験型のミュージアムやイベントは、日本国内でほかにもありますが、ずかんミュージアム銀座の特徴は、地球の生命を学術的に伝えている点です。生き物の姿形や動きはもちろん、生息する森の草木や水辺などの環境の表現にもこだわっています。こうしたアカデミックな知見に基づく反面、リアルすぎることで見る人に恐怖を与えないよう、絵としての表現のバランスも工夫されています。

「アントビューゾーン」では、虫の足音に合わせて椅子も振動し、アリの目線を体感できる。アリやコガネムシなど人間にとっては小さな昆虫も、ここでは迫力ある生き物だ
「アンダーウォーターゾーン」では、川や湖に棲む生き物を水の中にいるような体感で観察できる

そして、時間の経過によって風景が変わっていくのも見どころです。ずかんミュージアム銀座の世界では、1日の時間が1/60に凝縮されているため、24分間で1日が移り変わっていきます。昼と夜、また季節によっても出合える生き物が変わっていくのです。

草原に棲む生き物がいる「ワイルドフィールドゾーン」。上の写真は昼、下の写真は夜の風景。夜空の星も美しく、生き物を探さずに、空間でたたずむだけの過ごし方もいい

自分が出合った生き物たちによってエンディングが変わるのもリピーターが増える一因となっています。会場に設定されたセンサーにより位置情報が把握されることで、記録の石が生き物をガイドしてくれますが、その自分だけの軌跡が最後の部屋でストーリーとなって蘇ります。大きな地球が映るディスプレイに記録の石をセットすると、集めた生き物たちが地球に帰っていくシーンが描かれます。

最後の部屋では、円形スクリーンに囲まれた空間の中央に、大きな地球のスクリーンがあり、記録の石をセットする。セットした部分から、記録した生き物たちが飛び出し、地球に帰っていく

そのエンディングを終えると、どの生き物を記録したかが一覧となった「記録の証」がプリントされ、そのなかから1種類の生き物は「オリジナル生き物カード」として、お土産にもらえます。さらにミュージアムショップでは、ミュージアムで出合った生き物が1冊にまとめられた『公式生き物図鑑』も。「オリジナル生き物カード」にはシールがついていて、『公式生き物図鑑』にある台紙に集められるため、コレクション欲がくすぐられるのもリピーターをよぶ一因かもしれません。そこには生態や特徴がより詳細に記載されているので、家に帰って復習すると、学習効果にもつながるでしょう。

左から、エンディングを終えると1枚もらえる「オリジナル生き物カード」、「記録の証」、『ずかんミュージアム銀座 公式生き物図鑑』

体験したのは約1時間ほどでしたが、その何倍も長く感じられたのは、この世界では時間が1/60に凝縮されていたせいかもしれません。そして、地球には多様な生き物が生息していることを改めて実感した時間でした。ずかんミュージアム銀座は、大人も童心に返り、生き物との出合いに夢中になれる場所です。

Text: 佐藤恵美
Photo: 畠中彩

インフォメーション

ずかんミュージアム銀座

住所東京都中央区銀座 5-2-1 東急プラザ銀座6階
TEL03-6228-5611
営業平日 11:00~19:00
土・日・祝 10:00~19:00
入場料大人(18歳以上)2,500円ほか
URLhttps://zukan-museum.com/

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