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クリエイティブコミュニティを利用する[後編]

アーティスト・サバイバル・メソッド

No.007
ビルの2階にある「reboot」。螺旋階段には、編み師・203gow(にーまるさんごう)の作品。

先輩クリエイターやサポーターによる、アートの制作現場で役立つ情報をお届けします。


クリエイティブコミュニティを利用する[後編]
Reboot(リブート)

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2017.01.07

前回に続き、ものづくり工房や企業が集まる東東京エリアでクリエイターの集うスペースを紹介します。後編では東京メトロ日比谷線入谷駅から徒歩1分の場所にある「reboot」。日本画家から人形劇団まであらゆるアーティストが利用するシェアアトリエです。「reboot」を立ち上げ、まちづくりの実績を多数持つ今村ひろゆきさんに話を聞きました。


ビルの2階にある「reboot」。螺旋階段には、編み師・203gow(にーまるさんごう)の作品。

音も匂いもOKのシェアアトリエ

ガラス張りのエントランスに迎えられ、ニットで彩られた螺旋階段を上がると「reboot(リブート)」があります。ブースで仕切られたシェアオフィスのようなスペースですが、メンバーは必ずしもパソコンを広げて作業しているわけではありません。活動するのはデザイナーや職人、アーティストたち。

「reboot」は2014年、台東区入谷にオープンしました。仕掛けたのは、まちづくり会社ドラマチック代表の今村ひろゆきさん。元サンダル屋をDIYリノベした「LwP asakusa(ループアサクサ)」(浅草)や、シェアアトリエ「インストールの途中だビル」(品川)なども立ち上げ、既存の建物の利活用により、クリエイティブな活動やネットワークを生んできました。その実績から「reboot」のビルオーナーのメトロ設計(株)が、空いているスペースを街のために一緒に活用しませんか、と声をかけられたそうです。

今村ひろゆきさん

「東東京エリアで、モノづくりや場づくりをしている人を盛り上げたい、と2010年から活動してきました。『reboot』で目指したのは、クリエイターが24時間365日使えて、音も匂いも大丈夫という場所をつくること。それからクリエイターが活動しやすいような生態系をつくることでした」

音や匂いを発することは、都会のシェアオフィスでは難しいのが現実。ですが「日々さまざまな音や匂いがあるほうが面白いし刺激になる」と今村さんは話します。奥にあるシェアキッチンでお菓子づくりが行われたり、ワークショップスペースではキャンドル教室が開かれたり、革の商品づくりが行われたりと美味しい匂いや癒しの香り、創作する音もするそうです。

現在9組のクリエイターが入居するブース。「reboot」は4つの会員システムがあり、広さによって料金の違う「ブース会員」、フリーアドレスの「コワーキング会員」、ワークショップ・教室開催者向けの「ワークショップ会員」、キッチンが利用できる「シェアキッチン会員」から選ぶことができる

クリエイターの生態系をつくる

「reboot」に入居するのは、革プロダクトデザイナー、ジュエリーデザイナー、日本画家、和紙職人、パペットシアター、行政書士、編集者、アニメーター、グラフィックデザイナーなどあらゆるジャンルのクリエイターたち。このクリエイターの「生態系」を生むため、今村さんはどのような工夫をしているのでしょうか。

「ここに入るための基準はコミュニケーションをキチンと取れる方かどうかだけ。他は特にありません。メンバーは、2カ月に一度のペースで定例ミーティングも行い、メンバー同士を紹介したり、小さな問題が起きてもそこで解決するようにしています」

2年前から入居しているパペットシアター・Utervision Company Japanは、同じメンバーである和紙職人・東京和紙にオーダーメイドで和紙を発注したこともありました。

「私たちにとっての利点は、こうしたコラボレーションが生まれることはもちろん、1階のスペースSOOO dramatic!(ソードラマチック)が地域の方に開いていてパペットの公演に適していることです」と制作を担当しているともい江梨さん。最寄りの入谷駅から近いこともイベントでお客さんを呼びやすい一因だと言います。「パペット公演のチラシの配布や設置先、区の担当者を今村さんに紹介してもらったりしています」と、ともいさん。

パペットシアター・Utervision Company Japanの活動スペースと、ともい江梨さん。次回の公演は「子どものためのパペットシアター『モモ』」

公演日:1/27(土)/会場:インストジオ(中延駅から徒歩1分)

https://atorie-tane.jimdo.com

https://utervision-jp.jimdo.com/

まちに刺激され、生まれた「reboot」

メンバー同士はもちろん、地域や外部とつながる機会も設けています。誰でもrebootを体験利用やメンバーとの交流ができる「オープンオフィス」という日をつくったり、1階のイベントスペースSOOO dramatic!(ソードラマチック)で「入谷家の食卓」という一品持ち寄りの交流イベントやトークイベントをしたり。今村さんが「このメンバーに会ってほしい」と思う企業や行政を連れてきて直接紹介することもあります。このようにさまざまな方法でクリエイターを支援する原動力はどこからくるのでしょうか。

「僕は浅草に住んでいますが、まちの影響は大きいかもしれません。モノづくりのまちとは知らなかったけれど、浅草を歩いていると革屋さんから革の香りがしたり、工場の軒先で型抜きされた製品を見たり、と日々モノづくりに出会うんです。また、このあたりはアーティストやクリエイターもたくさん住んでいてどんどん交流の輪が広がり友人が多くできました。それで自然とモノづくりや芸術やデザインが身近に感じ、好きになりました。でも僕は手先が不器用でつくる側になれない(笑)。だから応援側にまわって、モノづくりを楽しむ人たちが活用できる場所と機会を提供することで、この地域全体がいよいよモノづくりや表現活動が盛んになればと思っています」

コワーキングスペースと、奥にはキッチンスペース。

Text:佐藤恵美
Photo: 中川周

reboot(リブート)
◎住所:東京都台東区下谷1-11-15 2階 reboot

[お問い合わせ]
まちづくり会社ドラマチック
◎TEL: 03-6231-7619 / FAX: 03-6231-7612
◎E-mail:reboot_ws@sooo-dramatic.com
http://www.reboot-iriya.info/

【東東京エリアでものづくりに触れよう!】
台東区、墨田区、江東区、足立区、江戸川区、葛飾区、荒川区の7区を含む東東京エリアには、ものづくりをしているアーティストや職人さんに触れ合えるイベントや場所、プロジェクトがたくさんあります。
※詳細はそれぞれウェブサイトでご確認ください

ものづくり横丁
毎週第1土曜日に、鳥越のおかず横丁(東京都台東区鳥越1丁目付近)にて開催。くるみボタン専門店、箔押し職人や活版印刷の工房などが参加し、ワークショップや物販、季節のイベントなどを行う。
https://www.facebook.com/monoyokocho/

浅草エーラウンド
毎年春・秋の3日間ずつ「革のまち」である浅草・奥浅草エリアを中心に、革靴工場や問屋、材料屋、ショップなどを巡るツアーやワークショップ、マーケットなど80~100社が出店し開催。浅草発の革のデザインプロダクト「+d x TOKYO L」も商品化し推進
http://a-round.info
http://www.tokyo-l.com

イッサイガッサイ東東京モノづくりHUB
「CREATION IN EAST-TOKYO」を合言葉に、創業者をサポートする創業支援ネットワーク。イベント・助成金・不動産情報のほか、創業者インタビューも掲載。
https://eastside-goodside.tokyo

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