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——江戸東京たてもの園:体験と出会いを通して歴史を学ぶ

学校と文化施設をつなぐ、ティーチャーズ・プログラム[中編]

イベント・レポート

No.004
event report 04
概要を説明する⽥中裕⼆学芸員

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2017.01.04

江戸東京たてもの園でのティーチャーズ・プログラムは、半日にわたり石臼ひき・火おこし体験とけんちく体操、そして園内の見学を行いました。年間約50校もの学校を対象に行っているスクールプログラムを体験してもらう内容です。


古民家で石臼ひき・火おこし体験

残暑が厳しい8月末の平日、先生方が江戸東京たてもの園に集合しました。まずは学芸員・田中裕二さんの挨拶からはじまります。
「江戸東京たてもの園に来たことのある方はどのくらいいますか」と田中さん。「……」。誰もいないようです。「では両国にある東京都江戸東京博物館に行ったことのある方は?」。こちらはたくさんの手が挙がりました。江戸東京博物館の分館である江戸東京たてもの園は、建造物を移築し保存する野外博物館。続けて田中さんが園について概説します。
「ここには江戸時代から昭和初期までの建物がありますが、天明家(てんみょうけ)、子宝湯(こだからゆ)、鍵屋(かぎや)、前川國男邸(まえかわくにおてい)などさまざまな建築様式の建物が移築復元されています。こうした建造物の公開のほか、建物の歴史などを紹介する特別展、復元建造物を活用しての下町夕涼みやライトアップ、伝統工芸士による実演や体験といった建物の特徴を活かしたイベントなども行っています」。

event report 04
概要を説明する⽥中裕⼆学芸員

まずは石臼ひきと火おこしの体験。江戸時代の名主役を勤めたと伝えられる茅葺き屋根の「天明家」にて行いました。小学3年生が対象のこの体験、指導を担当したのはボランティアの方々です。
「これからお米を石臼でひいて上新粉をつくります。石臼は2段に分かれているので、子どもが手をはさんだりしないように注意してください。まずはじゃんけんで順番を決めましょう」。
実際の体験学習さながらにはじまった石臼ひき。臼を順にひき始めると「意外と重いですね」と、ある先生。実際に粉々になったお米に「おお!」と歓声があがりました。

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ボランティアの説明を受ける。「ひじろ会」と呼ばれる江⼾東京たてもの園のボランティアは現在約200名。茅葺き⺠家のいろりで⽕を焚いたり、ガイドや普及事業の⽀援などを⾏っている
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[左]上段の⾅を持ち上げて、粉の具合を確認
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[右]何度もひくことで、より細かい上新粉ができる

次に火おこし体験です。「なぜ火をおこすのでしょう」とボランティアさんの解説からはじまります。「火は、生活に欠かせないものですね。お湯をわかしたり、暖をとったり、灯りにしたり、茅葺き屋根の防虫のために煙を起こしたり。そのほかに団らんの場をつくるという大きな役割がありました」。囲炉裏から赤くなった「おき」を取り出し、隣りの部屋の火鉢に入れます。炭を足し、ふう、ふうと息を吹きかけると、やがて炭が赤くなり、火がおこりました。温かい火鉢を囲んでいると、次第に先生方の表情も柔らかくなっていきました。

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[左]囲炉裏を囲み、⽕おこしの説明をきく参加者
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[右]ふう、ふう、息を吹きかけ⽕をおこす
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⽕を囲むと、会話にも花が咲く

建物のいろいろな学び方

こうして約1時間の体験学習を終え、次はけんちく体操の時間。けんちく体操博士の大きな一声ではじまりました。けんちく体操とは、簡単に言うと建築を身体で表現してみようというもの。白熱したこの様子は、次回詳しくレポートします。

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けんちく体操

けんちく体操で身体をほぐしたところで、最後は江戸東京たてもの園の見学。子宝湯や前川國男邸など、けんちく体操で表現した建物をはじめ、田中学芸員の解説付きで広い園内をまわりました。
社会科見学で江戸東京たてもの園に来る予定で参加したという先生は「私が受け持っているのは弱視の生徒が多いので、石臼ひきや火おこしなど実際に触って体験ができる学習は非常に良いプログラムです。建物の見学自体も、匂い、音、触感など、視覚以外でも学び楽しむことができ、良い社会科見学になりそうです」と話しました。

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⽥中学芸員の解説で園内を⾒学

江戸東京たてもの園は歴史や建築を身体全体で学習できる施設。野外博物館のため季節によって様相も変わり、四季の文化を感じることもできます。充実のプログラムに先生方も満足の様子でした。次回は何やら気になる「けんちく体操」を特集します!

文・構成/佐藤恵美

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