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第8回恵比寿映像祭「動いている庭」[前編]

イベント・レポート

No.006
event report 06

アートと映像のフェスティバル「恵比寿映像祭」が8回目を迎えます。今年のテーマは「動いている庭」。毎年メイン会場となる東京都写真美術館は現在改修工事中のため、会場を隣のザ・ガーデンホールなどに移して開催されます。美術館ではない屋外空間だからこそ展示できる作品も。今回のテーマや見どころ、また恵比寿映像祭の立ち上げなどの裏話まで、東京都写真美術館のキュレーター・岡村恵子さんに聞きました。


恵比寿映像祭キュレーターの岡村恵子さん

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2017.01.06

恵比寿映像祭のはじまりと、時代への呼応

――はじめに、どのように恵比寿映像祭が始まったかについてお伺いします。展覧会ではなく「映像祭」という形になったのはなぜだったのでしょうか。

今年で総合開館20周年を迎える東京都写真美術館は、写真と映像の総合美術館という構想のもと開館しました。両部門の中でも特に映像は、情報や技術の急速な変転により、非常に多様な観点から捉えていく必要があり、通常の展覧会だけではそれらを網羅できない状況になりました。そこで時間を拘束される映像の特性を逆に生かし、時と場所を限定したスペシャルで祝祭的な場を生み出せないかと考え「映像祭」という形態になりました。
昨年の開催日数は10日間でしたが、イベントや地域連携プログラムなどを含めると、平均で1日に約3,000人近い来場がありました。この数は年により変動がありますが、特にイベントの来場は増えている傾向にあります。
また映像祭の存在をより多くの人に知ってもらうため「地域連携プログラム」も第3回から始めました。恵比寿のギャラリーやショップなど今年は13施設に協力いただく予定です。

――毎回ハッとさせられるような切り口でテーマを設定されていますが、どのように決められるのでしょうか。

前回からは学芸員チームの共同ディレクションという形にし、みんなでアイデアを持ち寄り、多くの議論を経て決めています。
時代の変化により、映像祭を立ち上げた頃とは別の段階に議論が移っています。たとえば美術展では、作家の存在を前提として、中心的に考える傾向があります。ですが、映像や新しい技術に拠る表現には、その需要や発信の在り方が年々多様化することで、従来の作家中心の考え方では計れないけれども優れた作例が出てきています。こうした現実に、映像祭としてどう対処するか、というのが課題です。
これらを踏まえて最近は映像を含めた世界の見方、映像を撮る側の視点のあり方なども視野に入れて考えています。

event report 06
シャンタル・アケルマン《No Home Movie》2015
ヨーロッパ実験映画のパイオニア・シャンタル・アケルマンの遺作をプレミア上映

人間中心から、自然とともにつくる世界へ

――今回「動いている庭」も、それに呼応する形で出て来たものでしょうか。なぜ庭なのだろう、自然を射程に入れているのだろうか、と気になります。

「動いている庭」とは、ジル・クレマンというフランスの庭師であり思想家が書いた本のタイトルです。原著は1990年代に出版され、昨年日本語訳が出ました。「庭」は古来より人と自然を結びつけてきたものですが、一般的に人がコントロールしてつくるものというイメージがあります。ですが例えば、人の手が入らない荒れ果てた場所にも庭はあり、それは自然がつくり上げた庭といえるのではないか。そうした視点の転換を庭師として実践している人です。

――つくり手が中心(人工)という考え方ではなく、自然がつくる世界を提示しているのですね。この言葉は、映像のどういう部分にフォーカスしたものになるのでしょうか。

自然と人間の関係性を問いなおし、それを主題としていかに描き、どう残してきたかを示す作品を紹介します。と同時に、単に緑の自然に限らず、現代社会の中で人の手を離れて生成、増殖していくような、自然の摂理に似たネットワークや仕組みを取り入れた表現も扱います。「表現」は人間中心の考え方なので、表現という言葉すら当てはまらないかもしれません。

event report 06
JODI(ジョディ)《GEOGOO》
ネットアートの先駆者として知られる、オランダの2⼈組のアーティスト

従来の映像の枠を逸脱した作品群

――そのテーマに合わせて、どんな作品が出品されるのでしょうか。

特に規模が大きいものだと、恵比寿ガーデンプレイスのセンター広場で展示する中谷芙二子の霧でできた彫刻があります。科学者やエンジニアと開発してできた霧が、風や空気、または来場者の関与によりどのように変化していくかが見られます。 そのほかジル・クレマンの人物像や仕事を知ることができる上映作品や展示、60~70年代のアメリカで盛んになった「ランドアート」の紹介、また「動いている庭」と題したライヴ・イベントも行います。また今回の特徴としては、会場が美術館ではないからこそできる展示もあります。佐々木有美+ドリタの《Bug’s Beat》や銅金裕司の《シルトの岸辺~動く絵》などは展示のなかに虫がいます!

event report 06
ジェームズ・クランプ 《トラブルメイカーズ ランドアートの話》2015
ランドアートを再考する新作ドキュメンタリーの上映
event report 06
平井優⼦《猿婿-The face of strangers》2014[参考図版]
動いている庭―パフォーマンス編
書籍『動いている庭』の翻訳者の⼭内朋樹、ダンサーの平井優⼦、
アーティスト/プログラマーの古舘健が出演

――中谷さんの作品は霧の彫刻ということで、まさに「動いている庭」という感じがします。この作品はどういった面で「映像」なのでしょうか。

中谷さんの作品は、それ自体が自然現象そのものであり、観客は霧を体験することで各自の記憶や想像の中のイメージを喚起されます。最終的に、それを映像と呼ぶか呼ばないかは大きな問題ではないと考えています。テーマに即してこうした作品を敢えて展示することで、従来の映像の枠を逸脱するような観点も入れられたら、と思っています。「恵比寿映像祭」では、メディア環境などにより日々変化していく「映像とは何だろう」という問いを、来場者の皆さんとともに考えていきたいと思います。

event report 06
中⾕芙⼆⼦《潟の太⿎》⾦沢中央公園、1982[参考図版]
中⾕芙⼆⼦のオフサイト展⽰のほか、メイン会場の展⽰、上映、
トーク、ライヴ・イベントやシンポジウムなども。70組以上のアーティストが参加予定

文・構成/佐藤恵美

インフォメーション

第8回恵比寿映像祭 動いている庭

会期2016年2月11日(木・祝)~2月20日(土)※会期中無休
時間10:00-20:00 (最終日は18:00まで)
会場ザ・ガーデンホール、ザ・ガーデンルーム、恵比寿ガーデンシネマ、日仏会館、
STUDIO38、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場 ほか
料金入場無料 ※定員制の上映プログラム、イベント等については一部有料
主催東京都/東京都写真美術館・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) /日本経済新聞社
URLwww.yebizo.com

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