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東京都現代美術館「MOTコレクション コレクション・オンゴーイング」ギャラリートークをレポート!——前編

イベント・レポート

No.008
event report 08
⼤友良英+⻘⼭泰知+伊藤隆之《without records - mot ver.2015》2005/2015

長期休館前の最後の展示として、現在、東京都現代美術館では3つの展覧会を行っています。今回はそのうちの常設展「MOTコレクション」をピックアップ。毎日14時から1時間ほど無料(要チケット)で行われているギャラリートークに参加し、その様子をレポートします。


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2017.01.08

ボップ・アートと紙の仕事

展示替えのたびに「見応えがある」と評判の高い常設展「MOTコレクション」。今期は開館当初から積極的に収集されてきたポップ・アートや、展示する機会自体が稀少な紙の作品、さらに特別展示として豊嶋康子と辰野登恵子を中心に紹介しています。
では、早速ギャラリートークへ。館内のアナウンスで常設展示室の入口に集合すると、ほかの参加者も徐々に集まってきました。本日のトークを務めるのは、開館時よりガイドを担当するベテラン、竹内美枝さんです。竹内さんをはじめギャラリートークを行うガイドスタッフは、皆ボランティアで活動しています。
ひとつ目の部屋は大友良英+青山泰知+伊藤隆之によるインスタレーション《without records - mot ver. 2015》。レコードのないプレイヤーが回り出し、音を奏でる作品です。「金属やプラスチック、ゴムなどで加工されたプレイヤーそのものの音を使い、歌や音楽を奏でるのではない、別の役割を与えられた作品です」という竹内さんの説明を聞きながら、ギャラリートークの参加者たちは森のようにプレイヤーが林立する展示空間を歩いて鑑賞していきます。

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⼤友良英+⻘⼭泰知+伊藤隆之《without records - mot ver.2015》2005/2015

続いて、ポップ・アートを展示した部屋へ移動します。壁面にはビビットな色彩がまぶしい、見覚えのある人物が。竹内さんは参加者に質問をします。
「ここに描かれている人は誰かわかりますか」。
「下から風が吹いていて……」。
「そうです、マリリン・モンローという女優です」。
アンディ・ウォーホルによるマリリン・モンローの10点のシルクスクリーンについて、説明が続きます。「メディア社会の消費について、有名人を反復することで表しています。これらは並べ方に決まりはなく、ほかの美術館ではまったく違うように並んでいることもあるんですよ」。いきいきとした表情で話す竹内さんにトークに、皆引き込まれていきます。

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アンディ・ウォーホルの作品について説明をする⽵内さん
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アンディ・ウォーホル芸術財団の寄贈による新収蔵品の前で
© The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc.

「さあ、次の部屋へ進みましょう」。
続いて、イギリスを代表するポップ・アートの作家、デイヴィッド・ホックニーの部屋へ移ります。
「こちらをご覧ください」と竹内さんが指したのは、ホックニーのフォト・コラージュの作品。「同じ人物の写真が連続して貼ってあります。どれも角度や仕草が違いますね。カップをもったり、お茶をのんだり、お話をしたり。表情もさまざまです。この空間でいろいろなことが行われていることや、時間の経過が見て取れます」。

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デイヴィッド・ホックニー《ボブ・ホルマンに話しかけるクリストファ・イシャウッド, 1983年3⽉14⽇, サンタ・モニカ》(1983年)の前で

グレーのカーペットが敷かれた次の部屋は「紙の仕事」と題された展示室。ここで展示されているのは、光や温度、湿度などにデリケートで頻繁に展示することのできない作品。紙でできた椅子の前で皆の足が止まりました。デザイナー・吉岡徳仁の《Honey-pop》です。
「本当に紙でできているの? 信じられない」と参加者のひとり。
「折り畳むと約1cmの厚さになる紙でできています。『ハニカム』という蜂の巣の構造を模して、実際に座れるような強さに設計されているんですよ。いまは吉岡さんご本人が座った形になっています」。「座ってみたいねえ」「値段が気になる」といった感想が飛び交いました。

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吉岡徳仁《Honey-pop》(2001年)の前で

さらにある作品の前で、竹内さんは問いかけます。「これは一体何をしてこんなに真っ黒になったのでしょうか。タイトルには日付と場所のような情報が記されています」。
「紙をあてて上からこすったように見える」というコメント。
「フロッタージュという技法を用い、地面や壁に紙を置き、鉛筆でこすったものです」。
「道路の標本ですね!」
「そうなんです!地面や壁にはそのまちの歴史や文化が見える」と、竹内さんは手にしたファイルを取り出し「岡部さんはこんな感じで制作しています」と制作中の写真を見せてくれました。

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岡部昌⽣の作品の前で

その後も紙の部屋やベトナム出身の写真家、アン・ミー・レーの展示室での鑑賞が続きました。いよいよ次は、特別展示の豊嶋康子の展示室。続きは後編をお楽しみください!

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照屋勇賢《Notice - Forest: Madison Avenue》2011
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アン・ミー・レー《被害対策訓練、軽巡洋艦 ナッシュビル、
ダカール、セネガル、「陸上の出来事」シリーズ》(2009年)の前で

文・構成/佐藤恵美

インフォメーション

コレクション・オンゴーイング

会期2016年3月5日(土)~5月29日(日)
休館月曜日(2016年5月2日、23日は開館)
開館時間10:00-18:00 ※入場は30分前まで
会場東京都現代美術館 常設展示室
展示作家ウィレム・デ・クーニング、トーマス・デマンド、デイヴィッド・ホックニー、ロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホル、トム・ウェッセルマン、オノサト・トシノブ、太田三郎、辰野登恵子、照屋勇賢、豊嶋康子、福島秀子、吉岡徳仁 ほか
主催東京都、東京都現代美術館
※「スタジオ設立30周年記念 ピクサー展」、「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」も開催中(ともに2016年5月29日まで)。各展覧会のチケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます
URLhttp://www.mot-art-museum.jp/

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