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アーティストが多角度からとらえた清澄白河

MOTサテライト 2017春 往来往来

イベント・レポート

No.020
深川資料館通り

下町風情あふれるまち並みに、現代美術のギャラリーや話題の珈琲店が次々とオープンする注目のエリア「清澄白河」。東京都現代美術館がこの地域に開館して20年あまり。休館中の美術館がまちへ出て、初のアート・プロジェクトを展開しました。


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2017.01.20

住む人、住まない人から見たまち

地下鉄の清澄白河駅から地上に出ると、早速「MOTサテライト」の看板が!そのサインに導かれるまま進むと、一つ目の作品mi-ri meterの「清澄白河現在資料館」が現れました。ここでは清澄白河に縁のある人たちへのインタビュー映像が、複数のモニターで紹介されていました。
「僕ら本当にルーキーみたいなもんですから」「やっぱりアートに勝っちゃったのがコーヒーですね」。さまざまな世代の人たち、またこの地域に住む人、住まない人たちが皆「清澄白河」について語り、複数の視点から見たまちが浮かび上がります。

かつて駄菓⼦屋だった空き店舗に「清澄⽩河現在資料館」という看板

清澄白河にまつわる言葉と文字

「清澄白河現在資料館」から、店舗が立ち並ぶ深川資料館通りに出ました。店舗の軒先には、初春の風にはためくのれんがちらほら。こののれんは、詩人のカニエ・ナハとデザイナーの大原大次郎による作品「旅人ハ蛙、見えない川ノ漣」です。カニエ・ナハがその場所を読み解き、地域の歴史や東京都現代美術館の収蔵品などを連想させる詩を制作。それを大原大次郎が文字にし、のれんにデザインしました。(展覧会期間中、深川資料館通りの店舗をはじめ、神社や珈琲店など周辺の17カ所に設置)

左は呉服店の⽥巻屋ののれんには「ちのいたまはきつもじしこやまやかな 蕉芭」の⽂字。反対から読むと、松尾芭蕉の句になっている。右はあづま屋⽂具店ののれん。

現在のまちから浮かぶ過去と未来

深川資料館通りを抜けてしばらく進むと、旧印刷所の建物では2人のアーティスト、松江泰治と花代の展示があります。
1階の展示、松江泰治の「JP-13 kiba」では、現在の「木場」である新木場から清澄白河地区までを撮影した空撮写真やパノラマ写真が並んでいました。撮影されているのは現在のまちですが、「木場」という地名の通り、江戸時代から運河で木材を運び都市を形成してきたまちの面影が切り取られています。巨大なプリントにも関わらず、隅々までピントがあった写真。この地に住む人たちの生活、変わりゆく都市の様子が伺える作品です。

左は、松江泰治《JP-13 02》(2017年)、右は《TYO 6212》の展⽰⾵景

アートとコーヒーでひと休み

次にブルーボトルコーヒーや、オールプレス エスプレッソなど珈琲店が立ち並ぶ話題のエリアへ。アライズ コーヒー ロースターズにはカニエ・ナハ+大原大次郎の作品も。店内に展示されているクサナギシンペイの絵画作品を見ながらコーヒーを1杯。「この辺り、最近は洋菓子店も増えているんですよ」と、オーナー。こだわりの豆と焙煎、そしてオーナーの人柄が魅力で、小さな店内はお客さんでいっぱいでした。

左はアライズ コーヒー ロースターズ、右はオールプレス エスプレッソの店内。両店ともカニエ・ナハ+⼤原⼤次郎ののれんがさがる。

記録と記憶の関係

香り高いコーヒーでリフレッシュし、アートをめぐるまち歩きを再開。飯山由貴+remo[NPO法人記録と表現とメディアのための組織]の作品が展示されていたのも旧印刷所。暗い室内にはブラウン管に映し出された住民が持っていた昔のまち並みや暮らしぶりを映した映像や、テーブルに投影された顔を描く映像が置かれていました。アーティストの飯山由貴とremoが、それぞれの方法で、清澄白河を舞台に「過去の記録」と「人の記憶」の関係に取り組んだ作品です。
清澄白河駅を降りて約2時間、運河に囲まれた地域をぐるりとめぐる「往来往来」の散歩は終了。作品を介して、清澄白河というまち、または都市そのものが持つさまざまな側面を知ることができました。そして、最前線の文化を携えながらも下町の風情を残すこの地域には、都会の喧騒や忙しさから一呼吸置けるような、穏やかな時間が流れていました。

左は飯⼭由貴《顔》。台の上に置かれた冊⼦『あとを追う』はremo[NPO法⼈記録と表現とメディアのための組織]による作品の⼀つ。右はスペース「リトルトーキョー」の3階での展⽰、クサナギシンペイ「荒野へ」。

深川資料館通り

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