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『Family, Familiar 家族、かぞく』

世田谷パブリックシアター 台本をめぐるワークショップ

イベント・レポート

No.025
event report 25

家族のあり方が多様化しつつあるなか、示唆に富むワークショップが世田谷パブリックシアターで開催されました。「台本をめぐるワークショップ『Family, Familiar 家族、かぞく』を読む」は、同シアターで毎年開催している台本をきっかけに地域の人々がその台本のテーマについて考えをめぐらすワークショップのひとつとして開催。折しも世田谷区では2015年11月から、同性カップルのパートナーシップの宣誓を公的に受領する施策が始まっています。今回はこのような状況を物語の背景にした戯曲を元に、年齢も性別もさまざまな参加者が読み、意見を交わしながらリーディング劇として完成させました。


中学生から70代までの参加者23名が参加した

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2017.01.25

さまざまな家族、それぞれの家族

三軒茶屋にある世田谷パブリックシアターでは、演劇やダンスなどの公演に加え、数々のワークショップを開催している。そのひとつとして8月11日~13日に実施されたのが「台本をめぐるワークショップ」。取り上げられたのは、2016年11月、劇団フライングステージによって上演された『Family, Familiar 家族、かぞく』の戯曲である。なお、この作品がテーマとする家族には、ゲイカップル、レズビアンカップルとその子どもたち、その両親など同性婚をとりまく人々がいる。というのも、劇団フライングステージは、「ゲイの劇団」であると公表する日本では数少ないカンパニーのひとつ。そして世田谷区は、2015年11月から「同性パートナーシップ宣誓」の取り組みを始めた。
ワークショップの進行役を務めた劇作家・演出家で劇団フライングステージ代表の関根信一さんに話をうかがった。
「参加者に繰り返し伝えたことは、自分の台詞を読むにあたって、『相手の台詞をよく聞きましょう』ということ。これは普段、プロの俳優を演出する時にも言っていることです」

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ワークショップ中の様⼦
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幅広い年齢層の多彩な人物を演じることで得られた「気づき」

ワークショップは8月11日から3日間にわたって行われ、最終日の13日はテーマに興味を持った一般の方にも公開する発表会が実施された。
3日間の短期間とはいえ、朝10時から夕方5時までというハードなスケジュール。まず初日は、半日かけて自己紹介を実施。結婚観や家族観をみんなに伝える、まさしく「自己紹介」だ。そしてその後、役は決めずに、一人一人が順番に台詞を読んでいく読みあわせを繰り広げた。ゲイやレズビアンのカップル、彼らの両親や友人、子どもたちをめぐる、現代日本の家族像をさぐる物語である。
続いて2日目は参加者の希望を元に調整した配役を発表。参加者たちの希望には、父親役に女性、母親役に男性が就くというクロスジェンダーなキャスティングもあった。関根さんは言う。
「ジェンダーとは何か、セクシュアルマイノリティとは何か、私からは具体的に何も伝えませんでした。台本をみんなで読み進めるうちに、参加者はいろいろと考えていく。考え方が揺らいでいく、変化していく。そして気づいていく。ですから私の役割は、演出するというよりも、参加者の『気づき』を引っ張り出していくことでした」

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登場⼈物も役者も、性別や年齢はさまざま(左)。
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左⼿前の⼥性が⽗親役、奥の男性が⺟親役を演じた(右)

家族のあり方を問い続けた3日間

そして3日目。午後に発表会を控え、朝から台本を空間化していく作業を続けた。「とにかく短期間ということもありハードな山登りみたいでしたね。もう道のりが険しくて……」
やがて発表会を迎えた。台本を手にしながらも身動きを伴うリーディングが、30名ほどの客の前で繰り広げられた。見る者にもいろいろと「気づき」を与える1時間半だった。この発表会について、関根さんはこう語る。
「どの参加者もモチベーションが高くて、思っていた以上にみんながんばっていました。『低く見積もっていて、ごめん!』と謝りたいくらいですよ」

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公演終了後にワークショップ参加者のトークや、客席との質疑応答が⾏われた
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関根信⼀さん

Text:新川貴詩

Photo:中川周

劇団フライングステージ

「ゲイの劇団」であることをカミングアウトしている日本では数少ない劇団の一つ。1992年の旗揚げ以来、「ゲイ」であることにこだわった芝居を作り続けている。

http://www.flyingstage.com/top.html

『デイ・イン・ザ・シアター ~夏から秋へ、1、2、3!~』1日限りの「演劇&劇場」体験ワークショップ

普段はなかなか入れない、劇場の稽古場での1日限りの演劇体験ワークショップ。
◎日時:2017年9月28日(木)19:30~21:30
◎定員:20名
◎参加費:500円
https://setagaya-pt.jp/workshop_lecture/201707day.html

世田谷パブリックシアターの今後のワークショップ・レクチャー
https://setagaya-pt.jp/workshop_lecture

活動紹介冊子『キャロマグ』などのダウンロード
https://setagaya-pt.jp/workshop_lecture/about/archive/publication.html

[お問い合わせ]
世田谷パブリックシアター学芸
◎TEL:03-5432-1526

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