代々木公園へと上がっていく緩やかな坂道に、トーキョーワンダーサイト渋谷(以下、TWS渋谷)が誕生したのは2005年。それから12年にわたり約200回以上の展覧会やイベントを開催し、最先端のカルチャーが集まる渋谷から、あらゆるジャンルにおける新たな才能の発掘と、多くの実験的なクリエイションを生み出してきました。
そのTWS渋谷最後の夜。縁のあるアーティストや常連のお客さまをはじめ130名ほどの来場者が集まり、会場は熱気に包まれました。
身動きがとれないほど多くの来場客で埋め尽くされた空間で、西原尚(にしはら・なお)さんのパフォーマンスが始まりました。見慣れたものを素材にしたごく普通の音に身体性とコンテクストを加え、聞く人の可能性を追求する作品制作やパフォーマンスを行う西原さん。
トタンでできたバラックのような小屋に、さまざまな音が仕掛けられた自らのインスタレーション作品《音の生活》を舞台に「みなさん、こんばんは」と語り始めます。右手にシンバルを持ち、背中にはロウソクを立てた太鼓。背中に手を回し、そっとロウソクに火を灯します。「最後ということがさみしーよーな、気もしますけど、やってーみーたいー」と語り言葉がやがて歌のようになり、シンバルと笛の音が鳴り出しました。
笛を吹き、おもむろにトタン屋根を外して引きずったり、鈴を手に「誰かー、いますかー」と小屋を1軒ずつ回ったり。韓国の縦笛にドイツの縦笛、キューバの太鼓、中国のシンバルなど世界各地の楽器を使いながら、音と音楽のパフォーマンスを披露しました。