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イベント・レポート
No.011
IT社会における文化の今とこれから

ジャーナリストの佐々木俊尚さんとアーティストの増田セバスチャンさんによるトークショーが、来る3月14日、日比谷コンベンションホールで開催されます。そこで開催に先駆け、お二人へのプレインタビューを2回にわたりご紹介。今回は佐々木俊尚さんにお話を伺いました。


先を読むために、過去を知る

テクノロジーの進化と社会構造の関係性を鋭く読み解く、ジャーナリストの佐々木俊尚さん。専門のIT分野にとどまらない幅広い見識や、未来の社会像を鮮明に描き出す卓越した分析力は、どのように培われたのでしょう。

――まず、情報は日々どのような方法で収集し、取捨選択されているのですか?

「インターネットで1日に2000くらいは見出しをチェックしています。Feedly(*註)を使って1000近いサイトに登録してあるので、流れてくる見出しをチェックし、興味のあるものを選んで読む。同じような内容の記事をいくつも読む必要はないので、ひとつ読んだら、あとは変わった切り口で書いているものを探すというやり方です。数十本の記事を読んで、最終的に面白いと思ったものはツイッターで紹介します。自分にとってのメモにもなるので」

仕事で使う機器類は、意外にもPC2台とiPhoneのみという佐々木さん。「情報を集めるのは機械をたくさん使いこなすのとは違うんですよ」
仕事で使う機器類は、意外にもPC2台とiPhoneのみという佐々木さん。「情報を集めるのは機械をたくさん使いこなすのとは違うんですよ」

――膨大な情報と向き合う上で大事なことは?

「自分の価値観や世界観をちゃんと持っていることですね。最近の例で言うと、食文化について知るために、まず食の本を沢山読むわけです。その中で『料理通信』の編集長・君島佐和子さんが書いた『外食2.0』という本が非常に良かったので、その世界観をもとにさらにいろいろな本を読む。そうすると、また新しい食事情が見えてきて、自分の中の世界観が蓄積されていくんです。
 また、この5、6年意識的に行っているのが、歴史を振り返る作業です。たとえば電子書籍が普及するとどうなるかというのは、今の状況だけを追いかけていてもわからないんですよ。書籍には長い歴史がありますから。500年以上前にグーテンベルグの発明によって写本から印刷に変わった時、何が起きたか。それを調べれば、電子書籍がもたらすパラダイムシフトが見えてくる。つまり、先を見るために過去を調べるんです」

――綿々と続いてきた歴史に次の潮流を予測するヒントがあるということですね。

「そうです。電子書籍の普及に対して、紙は大事だとか皮膚感覚で否定的に語る人もいますよね。実は16世紀頃に紙が普及した時も、こんな濡れたら破れるようなぺらんぺらんのものは本じゃないと怒った人は沢山いました。だから自分の皮膚感覚なんて、長い歴史を振り返ればほんの一瞬の出来事に過ぎないんですよ。
 一時期流行ったケータイ小説も、掲示板でのやりとりから物語が編まれるという構造は、純文学を好む人にはくだらなく見えるかもしれません。内容も陳腐ですからね。ところが歴史を俯瞰すると、ケータイ小説は古代の口承文学の文化にかなり近いんです。口承文学は、聞く相手がいて初めて成り立ち、語り継がれていく過程で中身が少しずつ変わって行く。それは掲示板で読者と空間を共有し、そのやりとりで内容が変わって行くケータイ小説の構造とよく似ています。つまり、ケータイ小説は文学がソーシャル化したもので、文学のソーシャル化=口承文学への回帰と見ることもできるんですよ」

*註:Feedlyとは、好きなブログやニュースサイトなどを登録し、その更新情報をまとめて一覧で読むことができるウェブサービス。


グローバリゼーションがアートシーンにもたらす変化

――貴著『レイヤー化する世界』『キュレーションの時代』で、これからは自分の世界観に基づいてピックアップした情報に新たな価値を与えて他者と共有する「キュレーション」が台頭し、それによりメジャーとインディーズの境界線はますます曖昧になると語られています。それをアートシーンに当てはめるとどういうことが考えられるのでしょうか?

「音楽は先行事例としてわかりやすいんですが、ギニアでヒップホップを歌っている人がいるとします。ギニアの音楽市場はたぶん数百万人くらいでしょうから、その中で売れてもたかが知れていますよね。でもYouTubeにアップすれば世界中で聴くことができ、さらにそれを社会的な影響力のある人が偶然聴いて紹介すれば一気にワッと広まる可能性がある。今年グラミー賞を受賞したロードがまさにそうでした。つまり、マスにならないローカルなコンテンツも、グローバルな基盤で流通することにより、その価値が再認識されるという構造です。
 さらに、それによって新しい文化の衝突や融合が起きるということも重要な点です。東京都現代美術館のキュレーター・長谷川祐子さんが、今、現代アートで面白いのは、第三世界のアーティストが沢山いるイスタンブールだとおっしゃっていました。たとえばパキスタンで細密画を描いている女流作家が、伝統的な西洋文化と出合うことによって新しいものを生み出す。そういうことが実際に起きているそうです。どちらか一方に飲み込まれるでもなく、自国で地味に消費されるでもなく、交互の作用が起こる。それがグローバリゼーションのメリットなんですよ」

『レイヤー化する世界−テクノロジーとの共犯関係が始まる』(NHK出版新書)情報技術の革新が進む中、この先にはどんな世界が待ちうけているのか。テクノロジーの文明史を踏まえ、未来の社会像を鮮明に描き出す
『レイヤー化する世界−テクノロジーとの共犯関係が始まる』(NHK出版新書)
情報技術の革新が進む中、この先にはどんな世界が待ちうけているのか。テクノロジーの文明史を踏まえ、未来の社会像を鮮明に描き出す

『キュレーションの時代―「つながり」の情報革命が始まる』(ちくま新書)シェア、ソーシャル、チェックインなどの現象を読み解きながら、人と人とのつながりを介して情報をやり取りする社会構造の本質をえぐった一冊
『キュレーションの時代―「つながり」の情報革命が始まる』(ちくま新書)
シェア、ソーシャル、チェックインなどの現象を読み解きながら、人と人とのつながりを介して情報をやり取りする社会構造の本質をえぐった一冊

――アーティストの在り方もこの先変わってきそうですね。

「とても難しいので一概にどうなるとは言えませんが、音楽の世界ではiTunesなどの楽曲配信サービスによってレコード会社が衰退し、その結果ミュージシャンの収入が激減して食べて行けるのはごく一握りの人だけになりました。ところが今、アメリカではインターネットラジオPandoraの登場で、状況が少し変わりつつあります。Pandoraは一度楽曲を選択すると、それに似た曲やそのアーティストにちなんだ曲を自動的に選んで流し、その回数に応じてミュージシャンにお金が支払われる仕組みになっています。これによって、二極化されていたミュージシャンの収入層に中間領域が生まれ、十分生計が立てられる程度の収入を得る人が現れ始めたのです。そういう例もありますし、プラットフォームを活用することで専門的なコンテンツを海外に打つハードルは低くなってきたので、アートもこれからいろいろな可能性があると思いますね」

佐々木俊尚

佐々木俊尚
ささき・としなお

1961年、兵庫県生まれ。88年、毎日新聞社入社。岐阜支局、中部報道部を経て、東京本社社会部。事件記者として警視庁捜査一課、遊軍などを担当する。退職後『月刊アスキー』編集デスクを務め、2003年よりフリージャーナリストに。ITと社会の相互作用と変化をテーマに、執筆・公演活動を展開。近年の主な著書に『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『「当事者」の時代』(光文社新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス、2月27日発売予定)などがある。
http://www.pressa.jp/


TANアートイベント
増田セバスチャン×佐々木俊尚 トークショー
「世界が注目するジャパンカルチャーの現在と未来」

開催日:3月14日(金)
場所:千代田区立日比谷コンベンションホール
http://hibiyal.jp/hibiya/access.html
時間:19:00〜20:30
参加費:無料
対象:13歳以上
定員:200名(定員に達し次第締め切り)
お申込み締切り:3月7日(金)

お申し込み
E-mail : tan@dmail.plala.or.jp
*参加者全員の氏名、電話番号(複数人の場合は代表者のみ)を明記してください。お申し込みから3日以内に、メールにて詳細をご連絡いたします。迷惑メールの受信規制をされている方は、「tan@dmail.plala.or.jp」からのメールを受信できるよう、ご設定ください。

お問い合わせ
美術出版社Tokyo Art Navigation アートイベント担当
TEL:03-3234-2155 10:00〜18:00(土日休み)

インタビュー・文/杉瀬由希

 
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