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いわさきちひろ

アーティスト解体新書

No.020

2018年で生誕100年を迎える画家いわさきちひろ。愛らしい子供たちを描いたちひろの絵本は、今もなお幅広い世代の人々に愛され、親しまれています。才能あるアーティストであり、1児の母でもあったちひろの素顔に迫ります。


Illustration:豊島宙
Text:合田真子

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2017.01.20

いわさきちひろ(1918-1974)

本名・松本知弘(旧姓・岩崎)。生まれてすぐに東京・渋谷町(現・渋谷区)に移り住み、幼少期から絵画や書道に親しむ。戦前は20歳での望まない結婚や夫との死別、戦後は新聞記者などの経歴を経て、28歳で画家を志す。以降、水彩絵の具を駆使した美しく幻想的な童話の1シーンや子供たちの日常を描いた。


画家としてのキャリアをスタートさせたちひろは、1949年(昭和24)、政治思想をともにする7歳半年下の青年・松本善明と出会い、結婚の後、一人息子の猛をもうける。弁護士を目指す夫と一家の生活を絵筆一本で支える多忙さから、愛する息子を長野県松川村の両親のもとに預けることになったときは、7~8時間かけて長野まで頻繁に会いに通ったという。実際に子育てをした経験や子供のスケッチの積み重ねから、ちひろは月齢や年齢の違う子供の姿を描き分けられるまでになった。

画家としての自負から、ちひろは従来の物語中心の絵本とは異なる、絵を中心に展開する「感じる絵本」の制作を試みるなど、革新的な表現を模索していく。また、著作権が確立していなかった当時、原画を許可なく転載・裁断されることもあり、ちひろは出版社に原画の返却を要求するなど作家の権利を主張した。その結果、手元に多くの原画を残すことができ、世界初の絵本美術館であるいわさきちひろ絵本美術館(現・ちひろ美術館・東京)の開館に至った。

子供たちの平和と幸せを願っていたちひろは、ベトナム戦争に心を痛め、1972年(昭和47)から『戦火のなかの子どもたち』の制作を始める。生涯最後の絵本となるこの作品には、自身の戦争体験も反映されている。作中で唯一大人が描かれている《焔のなかの母と子》は、死を覚悟してわが子を強く抱きしめる母親の険しい表情が印象的だ。この絵本が完成して間もなく肝臓ガンが発覚し、息子の結婚式を入院先の病室で見届けたあと、1974年、55歳の若さでこの世を去った。

<完>

協力:ちひろ美術館

いわさきちひろ生誕100年「Life展」

ちひろ美術館(東京・安曇野)では、さまざまな分野で活躍する7組の作家たちとコラボレートし、「Life」をテーマに新しい展覧会のあり方を模索するプロジェクトを開催中です。

https://100.chihiro.jp

ちひろ美術館・東京

いわさきちひろが最後の22年間を過ごした自宅兼アトリエ跡を利用して、1977年に開館。

所在地:東京都練馬区下石神井4-7-2
電話:03-3995-0612/テレフォンガイド:03-3995-3001
10:00-17:00(最終入館16:30)

休館日:月曜日(祝休日は開館、翌平日休館)、年末年始(1月2日から開館)、冬期休館、展示替のための臨時休館日(不定期)
※ゴールデンウィークおよびお盆期間は無休

安曇野ちひろ美術館

1997年、ちひろ美術館・東京の開館20周年を記念して、ちひろの両親が戦後入植した長野県松川村に開館。

所在地:長野県北安曇郡松川村西原3358-24
電話:0261-62-0772/テレフォンガイド:0261-62-0777
9:00-17:00

開館期間:3月頭~11月末
※ゴールデンウィークおよびお盆期間は無休・18時まで開館延長
休館日:第2・4水曜日(祝休日は開館、翌平日休館)、冬期休館
(共通)
大人800円、高校生以下無料
団体(有料入館者10名以上)、学生証をお持ちの方、65歳以上は700円/障害者手帳ご提示の方は400円/介添の方は1名まで無料/視覚障害のある方は無料/東日本大震災の罹災証明書、または被災証明書をご持参の方は無料

https://chihiro.jp

豊島宙(とよしま・そら)

イラストレーター。1980年茨城県生まれ。パレットクラブスクール卒業。

国内外問わず、雑誌、広告、WEB、アパレルを中心に活動中。サッカー関連のイラストレーション、メンズファッションイラストレーション、似顔絵を得意とする。

http://soratoyoshima.net

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