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フランク・ロイド・ライト

アーティスト解体新書

No.047

今回の「アーティスト解体新書」はアメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867-1959)を取り上げます。浮世絵を愛好し熱烈な日本フリークでもあったライトは、「帝国ホテル二代目本館(現在は博物館明治村に一部移築保存)」や「自由学園明日館」を手がけています。芸術、建築、デザインだけでなく、教育や都市計画までも視点を広げ、世界を横断して活躍しました。筧菜奈子さんのカラフルなイラストレーションで、ライトの生涯とエピソードを紹介します。

Illustration:筧菜奈子
Text:千葉真智子(豊田市美術館)

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2024.01.23

日比谷にある帝国ホテルは3代目。2代目の建物を手がけたのがアメリカ人建築家フランク・ロイド・ライト(1867-1959)です。アメリカ以外でライトの建築が実現したのは、カナダとここ日本だけです。目白駅の最寄りにある自由学園と聞けばご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。1905年の初来日を含め、ライトには7回の来日経験があり、とりわけ初期の建築は、日光東照宮などの寺院建築と類似した平面プランや、日本家屋に似た深い軒と水平方向の広がりが特徴となっています。さらに、浮世絵にならって、遠近対比のはっきりした建築ドローイングを描き、歌川広重の大コレクターにしてディーラーでもあったという、かなりの日本フリークなのでした。

近代建築の巨匠とされるライト。そう聞くとマッチョなイメージばかりが膨らみますが、面白いことに教育熱心な母親のもとに生まれたライトは、進歩主義教育に専心する女性たちに共感し、彼女たちのために小学校や幼稚園を設計しています。自由学園もその一つです。ライトは人生で4度の結婚をしていますが、最初の妻キャサリンは自邸に幼稚園を開設し、2番目の妻のマイアーは、女性運動の指導者エレン・ケイを翻訳紹介した人。そして、4番目の妻オルギヴァンナはフランスの思想家グルジエフのもとで学んだ才女で、彼女の協力を得てライトは1932年、自給自足をしながら建築の教育と実践を行う建築学校「タリアセン・フェローシップ」を始めることになりました。

ライトは素材にも強い関心を示しました。帝国ホテルには、栃木県の大谷石と愛知県の常滑に工場を開いて特別に製造してもらった「すだれレンガ(スクラッチタイル)」が大胆に使われました。柔らかな大谷石は加工しやすく、表面に大胆な装飾模様を彫り込むこともできました。コンクリートに可能性を見出したのもライトの面白いところです。一見すると人工的で冷たい印象を受けるコンクリートですが、ライトはその土地にある砂利を混ぜたり、可変的な性質を生かして、その土地にふさわしい模様を表面に施したりしました。ニューヨークのグッゲンハイム美術館のような螺旋状のユニークな形ができたのも、コンクリートのそうした可変性に目をつけたからこそです。

ライトは1934年に「ブロードエーカー・シティ構想」を発表して以来、継続的にこの未来都市について検討を重ねました。その最大の特徴は、田園と都市機能とが融合していることです。ライトは、マイル・ハイ・イリノイのような高層ビル(1,600メートルもある!)のプランも提言しましたが、それはビルが乱立する都会の姿とは大きく異なり、一つのビルに必要な都市機能を集約することで、自由な大地が確保できるからでした。ライトは人々が自然や農業から切り離されることのない豊かな世界を描きつづけました。車や小型飛行機、テレコミュニケーションがあれば、人々は容易に遠くへ移動し、あるいは遠隔で交流を深めることができます。まるでコロナ時代を経験した私たちの未来を予言しているようではないでしょうか。

開館20周年記念展/帝国ホテル二代目本館100周年
フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
2024年1月11日(木)〜3月10日(日)
*会期中一部展示替えがあります
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
時間:10:00~18:00 ※2月2日(金)、3月1日(金)、8日(金)、9日(土)は20:00まで開館
休館日:水曜日(3月6日は開館)
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/24/240111/

《フランク・ロイド・ライト、タリアセンにて》1924年 コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館 フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ蔵 The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | AveryArchitectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

フランク・ロイド・ライト

ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと並び、「近代建築の3大巨匠」とも称される。ライトが設計した建築物は1,000を超えるといわれており、建築の一部は世界文化遺産にも登録されている。建物の高さを抑え、地面と水平に伸び広がる様式「プレーリースタイル(草原様式)」を生み出した。

筧 菜奈子(かけい・ななこ)

イラストレーター、現代美術・装飾史研究者。東海大学教養学部講師。美術に関する研究を行うとともに、イラストレーション、漫画制作を手がけている。主要な著書に『めくるめく現代アート』『いとをかしき20世紀美術』など。
https://zigzaqro.com/

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