東京のアートシーンを発信し、創造しよう。

MENU
MENU

アンリ・マティス〈前編〉

アーティスト解体新書

No.048

今回の「アーティスト解体新書」は20世紀美術最大の巨匠の一人、アンリ・マティス。北フランスに生まれ、フォーヴィスム(野獣派)の中心的な存在として活躍、後世の作家たちにも多大な影響をあたえています。前編では、鮮やかな色彩や色面を組み合わせる作風が確立した、作家の前半生を追います。


Illustration:筧菜奈子
Text:米田尚輝(国立新美術館)

Share
2024.05.02

アンリ・マティス(1869-1954)は北フランスの町で生まれ、その後にパリへ赴きます。パリの国立美術学校などで学びつつ、ルーヴル美術館で巨匠たちの模写にも励みました。1905年、南フランスのコリウールでアンドレ・ドランとともに屋外制作を行い、絵具を混ぜることのない分割主義の技法の実験を行います。この年の10月、彼はパリのサロン・ドートンヌに幾つかの油彩を出品します。自然とはかけ離れた色遣いと荒々しい筆遣いから、作品はある評論家から「野獣たち(フォーヴ)」と評されました。「フォーヴィスム」の誕生の所以です。

マティスは1917年、南フランスのニースへ赴きます。最初はホテルに滞在して制作していましたが、1921年にはシャルル=フェリックス広場のアパルトマン兼アトリエを借ります。いつも装飾芸術に多大な関心を寄せ、東洋のオブジェを大量に収集し、アトリエを変えても手放すことはありませんでした。彼はシャルル=フェリックス広場のアトリエで、仕切り幕、絨毯、肘掛け椅子、家具調度品などを綿密に配置し、モデルに東洋風の衣装を着せてオダリスクを主題とした一連の油彩画を描きました。

(後編へ続く)

マティス 自由なフォルム
2024年2月14日(水)~5月27日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室 2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
時間:10:00~18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火曜日 ※ただし4月30日(火)は開館
https://matisse2024.jp

アンリ・マティス

ル・カトー=カンブレジに生まれる。パリに出て法律を学ぶが22歳で画家を志し、国立美術学校のギュスターヴ・モローの教室で指導を受ける。新印象主義的な表現を経て、「フォーヴィスム」誕生の中心的役割を果たす。その後はデッサンと色彩とを融合する「切り紙絵」へ到達。1948年から4年間にわたり携わったヴァンスのロザリオ礼拝堂は集大成となった。

筧 菜奈子(かけい・ななこ)

イラストレーター、現代美術・装飾史研究者。東海大学教養学部講師。美術に関する研究を行うとともに、イラストレーション、漫画制作を手がけている。主要な著書に『めくるめく現代アート』『いとをかしき20世紀美術』など。
https://zigzaqro.com/

公式アカウントをフォローして
東京のアートシーンに触れよう!