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イベント・レポート
No.073
フリーペーパーの世界 vol.2 PASSION

2021.8.18

フリーペーパーの世界を探るシリーズの2回目のテーマは「PASSION」。情熱をもって興味を掘り下げ、その面白さを伝えるフリーペーパーを紹介します。今回取材したのは、『縄文ZINE』。キャッチコピー「都会の縄文人のためのマガジン」のとおり、都市文化に慣れた現代人に向けて縄文の面白さを伝えています。2015年にスタートしてこれまで12号まで発行しています(2021年7月現在)。デザイン事務所を営みながら、『縄文ZINE』の編集長を務める望月昭秀(もちづき・あきひで)さんにお話をうかがいました。

『縄文ZINE』バックナンバー。最新号(2021年3月発行、写真右下)の表紙は井浦新さん。インタビューも掲載している
『縄文ZINE』バックナンバー。最新号(2021年3月発行、写真右下)の表紙は井浦新さん。インタビューも掲載している

「縄文時代がおもしろい!」からスタートしたフリーペーパー

――第1号が創刊されたのが2015年。最新号含めてこれまで12号発行されていますが、『縄文ZINE』を始められた動機はなんでしょうか?

10年ほど前に縄文にハマり、縄文時代に関連する展覧会やシンポジウムをめぐっていたのですが、どこにいっても若い人の姿がなく縄文ファンの高齢化を勝手に憂いていました。友人に「縄文時代っておもしろいんだよ」と話しても「なんか古いし、ダサいかも」と感じられてしまって、なかなか共感を得ることもありませんでした。それで、このおもしろさを整理して、共有したい! と思って、フリーペーパーをつくろうと思ったのです。

――ブログやYouTubeなどもありますが、なぜフリーペーパーという紙の媒体だったのでしょうか?

縄文時代って、お金がなくて物々交換や贈り合いで生活が成り立っていた時代です。値段をつけず「物」としてあるほうが、縄文にはあっているなと。それから、自分が書籍や雑誌のデザインの仕事をしていたから取りかかりやすかったというシンプルな理由もあります。

縄文と現代のポップカルチャーをコンセプトに、あらゆる企画が繰り広げられている。望月さんが手がけるのは、デザイン・編集・執筆・イラストなど幅広い
縄文と現代のポップカルチャーをコンセプトに、あらゆる企画が繰り広げられている。望月さんが手がけるのは、デザイン・編集・執筆・イラストなど幅広い

――望月さんの本業はデザインのお仕事ですが、編集もされているのでしょうか。

『縄文ZINE』では、基本には縄文とポップカルチャーを融合させることを目指しています。たとえば、縄文時代に「M-1グランプリ」があったことを想定した漫才の台本、遺跡とキラキラネームの関係、土器絵描き歌、考古クッキング、カップ焼きそばと土器文化圏のつながりなど、企画もちょっと特殊で……。ですので事務所内で編集とデザインを担っているのは、ほぼ私だけなのです。

――それは驚きました。これまでに特にうまくいったと感じられる企画はありますか?

よかったのは、1号目からスタートした「土偶×読者モデル(読モ)」で「ドグモ」という企画です。女性誌の読者モデルに、土偶と同じポーズをとってもらい、撮影したところから始まりました。土偶は解明されていない部分も多いですが、縄文の偶像である「土偶」と、現代の偶像である「読モ」は相性が良いと思いました。

――一方で、収益化の面も気になるのですが、現在3万部発行されているとのこと。出版にかかる費用はどうされていますか?

第1号はほとんど広告収入もないなかで6千部刷ったのですが、ありがたいことに1ヶ月ではけて増刷しました。それで、2号目からは徐々に部数を増やし、いまは3万部になりました。それだけの部数になると広告収入がないと厳しくて……。印刷費や配送費はなんとか広告収入でまかなっています。ですが、収益化の面がうまくいっているとはいえません。縄文とお金は相性が悪いんですね。

――第1号を出されてから6年ほど経ちます。縄文好きが増えたという実感はありますか?

私自身、縄文好きの友達がふえました。『縄文ZINE』のおかげというわけではないのですが、「縄文ってダサい」という人は減ったような気がします。

1号からスタートした、読者モデルに土偶と同じポーズをとってもらう、通称「ドグモ」の企画。表紙も同じコンセプトで撮影
1号からスタートした、読者モデルに土偶と同じポーズをとってもらう、通称「ドグモ」の企画。表紙も同じコンセプトで撮影

縄文に現代を重ねると、見えてくること

――東京で、縄文が楽しめるおすすめの場所をお伺いしたいです。

たくさんありますよ。まず、品川区〜大田区にある大森貝塚は考古学発祥の地です。それから、映画『天気の子』の最後のシーンで描かれた北区の中里貝塚とか。余談ですが、『天気の子』は「縄文映画」という自説があります(詳しくは望月さんのnote https://note.com/22jomon/n/ne498035fb378を参照)。ただ遺跡にいっても何もないことが多いので、「見る」というより「感じる」という楽しみ方がおすすめです。考古館や博物館に資料を見て、遺跡に行って「ここで昔の人が暮らしていたんだな」と想像するのがいいと思います。考古館や博物館も都内にはたくさんあります。都心で貴重な資料が充実しているのは渋谷にある國學院大學博物館。それから多摩にある東京都埋蔵文化財センターは、遺跡が発掘された場所に建てられていて、展示物もユニークです。サンリオピューロランドにも近いのでセットで行くのがおすすめですよ。東京都江戸東京博物館では毎年「発掘された日本列島」が開催されていますよね。さらに今年は、縄文時代にスポットを当てた「縄文2021――東京に生きた縄文人――」展(2021年10月9日〜12月5日予定)と、分館の江戸東京たてもの園の「縄文2021――縄文のくらしとたてもの――」展(2021年10月9日〜2022年5月29日予定)が開催されるとか。そちらも楽しみです。

望月さんの著書。『縄文ZINE』をきっかけに出版した『縄文人に相談だ(縄文ZINE Books)』(国書刊行会、2018年/角川文庫、2020年)ほか、最新号『蓑虫放浪』(写真:田附勝、国書刊行会、2020年)など
望月さんの著書。『縄文ZINE』をきっかけに出版した『縄文人に相談だ(縄文ZINE Books)』(国書刊行会、2018年/角川文庫、2020年)ほか、最新号『蓑虫放浪』(写真:田附勝、国書刊行会、2020年)など

――最後に『縄文ZINE』の誌面企画「『縄弱』(縄文弱者)のための質疑応答」のオマージュとして、縄文についていくつか質問してもよいでしょうか。ひとつ目の質問は、縄文時代に疫病はあったのでしょうか。

あったと思いますよ。西洋医学のなかった縄文時代にとって病気は抗えないものだったと想像できます。ですが、いまほど人の移動は激しくなかったので、感染拡大の範囲は現代ほどではなかったかもしれません。

――2つ目に、縄文時代に娯楽はありましたか? スポーツも映画も小説もなく、インターネットも動画配信サービスがなかったなんて、どのように楽しみをつくっていたのか……。

現代は「オン/オフをわける」というように、仕事/プライベートと切り分けたりしますが、縄文時代はオンもオフもなく、すべてが生活だった。出土物を見ていると、その生活自体を楽しんでいたのではないかなと思います。歌や踊りだったり、誰かと会話することだったり、土器の装飾を凝ることだったり、楽しいことってたくさんあったんじゃないかなと。サービスや物がなかったとしても、現代人だってきっとそのなかで楽しみを見つけられるでしょう。

――縄文時代にとって、芸術とはなんでしょうか。

縄文時代には芸術の概念はなかったと思いますが、「芸術」とはそれを享受する人がいる。美術も音楽も見る人・聞く人がいますよね。ですが、縄文時代の焼き物や歌などは「祈り」と密接に関わっていた。つまり、人に向けていたのではなく、自然や世界という意味での「神」に捧げるものでした。そこが現代とは違うのかなと思います。

――改めて、望月さんにとって縄文の魅力とはなんですか?

一つではないのですが、まずは「わからないこと」です。わからないと知りたくなりますよね。縄文時代は解明されていないことばかりなので、まだまだ魅力は続きそうです。それから縄文時代は移動が少なかったので、地域独自の文化が発展していました。地域性の違いを各地に見に行く楽しみもあります。そして歴史上に残る文化というと、江戸をのぞいて武士や貴族の文化が多いのですが、縄文時代は階級がなく庶民の文化。身近に感じることも、大きな魅力の一つです。

『縄文ZINE』編集長で、株式会社ニルソンデザイン事務所代表の望月昭秀さん
『縄文ZINE』編集長で、株式会社ニルソンデザイン事務所代表の望月昭秀さん

■『縄文ZINE』株式会社ニルソンデザイン事務所発行 ・創刊年:2015年8月 ・年1〜2回発行(不定期)
・本文頁数:30頁
・判型:210×148mm
・発行部数:4万部
・URL:http://jomonzine.com/index.html

PASSI0Nな2冊
誰に頼まれたわけでもないのに、つくらざるを得なかった。そんな情熱で、「好き」「面白い」を詰めたフリーペーパーを紹介。
■『灯台どうだい?』不動まゆう発行

『灯台どうだい?』不動まゆう発行

灯台マニアが自費で発行するフリーペーパー。灯台の魅力や楽しみ方を伝え、共有することを目指して創刊。キャッチコピーは「灯台のマニアのための崖っぷちマガジン」。海外を含む各地の灯台を紹介するほか、灯火、レンズ、煉瓦など灯台にまつわる多様なトピックを深掘りしている。 ・創刊年:2014年9月 ・年4回発行
・本文頁数:11頁
・判型:A5サイズ
・発行部数:3000部
・URL:https://toudaifreepaper.jimdofree.com/
■『手紙暮らし』えもりみずほ、岸田カノ発行

『手紙暮らし』えもりみずほ、岸田カノ発行

手紙という文化を未来にも伝えていきたいという思いから、SNSを通じて知り合った2人の高校生が創刊した。実際に海外と文通する経験から「ペンパルに教えてもらった世界の料理」や、文具を紹介するコラム、手紙にまつわるブックガイドなど、手紙の楽しさを伝える内容が充実している。 ・創刊年:2017年夏 ・年1〜2回(不定期)発行
・本文頁数:14頁
・判型:A5サイズ
・発行部数:5000部
・URL:https://tegamigurashi.wixsite.com/tegamigurashi
※各データは2021年7月現在。 ※上記のフリーペーパーは、フリーペーパー専門店「ONLY FREE PAPER TOKYO」にて入手できます。(在庫がない場合もございますのでご了承ください)
ONLY FREE PAPER TOKYO
無料で配布されるZINE、リトルプレス、インディーズマガジンといった全国のフリーペーパーを多数置いている。
住所:東京都目黒区中目黒3-5-3 Space Utility TOKYO内
TEL:03-3792-2121
営業:13:00-20:00/日、月、火休(イベント開催時の日曜は営業)
http://onlyfreepaper.com/

選書・監修:松江健介(ONLY FREE PAPER)
Text:佐藤恵美
Photo:畠中彩(インタビュー記事内)

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