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木島櫻谷

アーティスト解体新書

No.019

明治後半から昭和初期に活躍した日本画家、木島櫻谷(このしま・おうこく)。徹底した写生に基づく叙情的な動物画で高い評価を受けるも、後半は画壇から遠ざかり、半ば忘れられていた存在でした。しかし近年、調査・研究が進み、櫻谷作品の再評価が進んでいます。


Illustration:豊島宙
Text:合田真子

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2017.01.19

木島櫻谷(このしま・おうこく 1877-1938)

明治10年(1877)、京都府京都市に生まれる。本名・文治郎。日本画の伝統的技法を軸とした精緻な描写力で、歴史画や風俗画、静物画、動物画などの幅広いテーマを手がけた。代表作に《寒月》《柳桜之図》《獅子図》など多数。長らく所在不明だった明治43年(1910)の大作《かりくら》が平成25年(2013)に発見され、平成29年(2017)修復完了・初公開された。


京都の経済と文化の中心地・三条室町に生まれた櫻谷は、芸術家や文化人の出入りする商家で育った。16歳のとき、京都四条派の画家・今尾景年(1845-1924)の画塾に入門。20代で頭角を現し、「文展の寵児」と呼ばれるまでになった。しかし40代後半からは次第に画壇から距離を置き、京都・衣笠の自邸で制作に専念するようになる。近年発見された作品からは、後半生の充実ぶりもうかがえる。

今尾景年塾では写生が重要視され、動物など実物のモチーフを画室に持ち込んでの写生も行われており、櫻谷は生涯、写生帖を片時も手放すことがなかったという。大小674冊にも及ぶ写生帖からは、観察を重ねて同じ対象をくり返し描く、櫻谷の熱心な姿勢が見て取れる。文展で最高賞を獲得した《寒月》(1912)は、夏目漱石が酷評した作品としても知られるが、近年の研究で革新的な技法を用いていたことがわかり、注目を集めている。

櫻谷の動物画から浮かび上がるのは、動物たちへのあたたかいまなざしだ。櫻谷は、自宅で可愛がっていた犬や猫はもちろん、牛や馬などは近くの農家へ、猪や鹿などは神使として飼育されている寺社へと、実際に足を運んで写生した。また、虎やライオンを観察しに、京都や大阪の動物園に足繁く通っていたようで、櫻谷の遺品からは、京都市立記念動物園(現・京都市動物園)より贈られた優待観覧券(年間パスポート)が見つかっている。

<完>

住友コレクション 泉屋博古館分館

所在地:東京都港区六本木1-5-1
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
入館料:一般800円/高大生600円(中学生以下無料)
※団体(20名以上)2割引、障がい者手帳ご呈示の方は無料
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日休館)

http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/

豊島宙(とよしま・そら)

イラストレーター。1980年茨城県生まれ。パレットクラブスクール卒業。

国内外問わず、雑誌、広告、WEB、アパレルを中心に活動中。サッカー関連のイラストレーション、メンズファッションイラストレーション、似顔絵を得意とする。

http://soratoyoshima.net

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