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レオナルド・ダ・ヴィンチ〈後編〉

アーティスト解体新書

No.035

「万能の天才」と謳われるレオナルド・ダ・ヴィンチですが、現存する彼の真筆絵画は未完のものも含めて16点。2019年で没後500年を経た現在も、4,000枚もの手稿や同時代人の記した評伝や書簡を手がかりに、今も世界中の研究者によって調査研究が行われています。後編では、時代を超えて人々を魅了するレオナルドの思考の秘密を探ります。


Illustration:豊島宙
Text:浅野靖菜

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2020.03.11

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)

イタリア中部フィレンツェの郊外にある小村、ヴィンチ村で公証人の父と農民の母との間に生まれる。14歳の頃に芸術家ヴェロッキオの工房で修行を始め、30代からはミラノやフィレンツェの宮廷でマルチに活躍した。世界的な名画《最後の晩餐》(1495〜98年頃)や《モナ・リザ》(1503〜1505年頃)、手稿に記された多岐にわたる研究の記録は、現在も多くの人々を惹き付けてやまない。


分野横断的な思考法

レオナルドは、形の似ているものから対象の性質を類推するアナロジーの思考で、異なる分野の研究成果を結びつけていった。特に、水はさまざまな思考の出発点となった。水の流れを観察することで、鳥が風の流れをうまく捉えて空を飛ぶ仕組みや、実際には見えない体内における血液循環の仕組みを考察した。渦巻く水の造形は人物の巻き毛に展開され、清らかな聖母や天使、魅惑的な洗礼者ヨハネの顔を柔らかく繊細に飾った。

常に脳内をブラッシュアップ

経験と実践を重んじていたレオナルドだが、30代からは独学でラテン語を学び、書物からも知識を得ようとしていた。また、58歳の時には解剖学者マルカントニオ・デッラ・トッレと共同で医学書の制作を試みている。広がり続ける知的好奇心を満たすために、書物や他分野の専門家の力も借りながら学ぶ姿勢は、現代の私たちも見習いたいところだ。

鑑賞者を惑わせる微笑み

《モナ・リザ》は1503年から生涯手を入れ続け、レオナルドが人生をかけて探究してきた知識と技術の集大成となる一作だ。薄く溶いた油絵具を1mm以下の厚さで何層にも重ね、指で輪郭をぼかすスフマート技法などで描かれている。そのため、異なる絵具の層から跳ね返った複数の光が目に入り、見る角度や照明の種類によって目に映る像が微妙に変化する。レオナルドの謎に迫る者たちを500年ものあいだ見つめてきた彼女は、何を思って微笑むのだろうか。

<完>

協力:池上英洋(東京造形大学教授)

豊島宙(とよしま・そら)

イラストレーター。1980年茨城県生まれ。パレットクラブスクール卒業。

国内外問わず、雑誌、広告、WEB、アパレルを中心に活動中。サッカー関連のイラストレーション、メンズファッションイラストレーション、似顔絵を得意とする。

http://soratoyoshima.net

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