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キュンチョメのアートデート
No.004
東京都美術館 「楽園としての芸術」展
ゲスト:アーティスト/開発好明さん
キュンチョメのホンマエリさんと、おじさまアーティストとの「アートデート」。前回に引き続き、開発好明さんと東京都美術館で開催中の展覧会を楽しみます。「楽園としての芸術」展では、どんな作品との出会いが待っているでしょうか?
撮影:林道子


描いている瞬間が歓び

東京都美術館でデート中のキュンチョメのエリと開発好明さんは、続いて「楽園としての芸術」展に足を運んだ。学芸員の中原淳行さんの解説で出品作を巡った。

中原 当館が2012年にリニューアルした際、新しいミッションを掲げました。それは、「新しい価値観に触れ、自己を見つめ、世界との絆が深まる『創造と共生の場=アート・コミュニティ』を築き、『生きる糧としてのアート』と出会う場とします」というもの。そこで、その実現のための取り組みのひとつとして、障害を持つ人たちの表現活動を継続的に紹介しようと考え、その第1弾が本展です。

エリ この作品、すごく色がきれい!

中原 鹿児島にある知的障害者援護施設「しょうぶ学園」の野間口桂介さんの作品です。ここでは障害者が自発的に楽しんでものをつくる環境が大切と考え、材料や道具を用意して、とくにつくり方を教えず、障害を持つ人がつくり始めるのを待つんです。野間口さんは既製のシャツに糸を縫い付けていきました。

開発 シャツのサイズ、かなり小さいですけど、これは子供用なんですか、それとも大人用のシャツが小さくなったんですか?

中原 シャツの生地が引っ張られて小さくなっているようですね。

「しょうぶ学園」の野間口桂介さんの作品を見る
「しょうぶ学園」の野間口桂介さんの作品を見る

エリ 野間口さんのような制作方法だと、いつ完成だとわかるんですか?

中原 本人がやらなくなったら完成なんですよ。野間口さんはとにかく寡作な方で、1作品に4年も費やすことがあるほど。その一方、創作意欲がとても旺盛な方もいて、その一人が濱田幹雄さん。とにかく1日中、帆布や段ボール、紙に絵を描いていて、紙とかがなくなると、前に描いた作品の上から描いてしまうほど。

開発 じゃあ、この方は完成がなくて、描く行為そのものが楽しいわけですね。

中原 ええ。描いている瞬間が最高の喜び。床に布や紙を置いて描くんですが、描く位置も変えるので、天地左右もはっきりとはわからない場合があります。

濱田幹雄さんの作品。描き重ねられた痕跡も見える
濱田幹雄さんの作品。描き重ねられた痕跡も見える

濱田幹雄(しょうぶ学園) 無題 2009年 © Shobu Gakuen
濱田幹雄(しょうぶ学園) 無題 2009年
© Shobu Gakuen


会期中にも制作は続く

本展は、「しょうぶ学園」のみならず、三重と東京にある「アトリエ・エレマン・プレザン」のダウン症の人たちの作品も揃う。

中原 「エレマン・プレザン」は障害者施設ではなくて、ダウン症の人たちを中心としたアトリエです。三重県志摩市と東京の経堂にあります。絵画教室とはいえ、こちらも指導はいっさいなく、スタッフは画材と道具を用意し、ダウン症の人たちの制作を見守っています。

倉俣晴子さんの作品は、パッチワークのように貼り重ねられたテクスチャが特色
倉俣晴子さんの作品は、パッチワークのように貼り重ねられたテクスチャが特色

エリ この作品、かわいい。

中原 倉俣晴子さんの《サンドイッチの入れ物》です。

開発 これ持ってピクニックに行きたいね。サンドイッチ持って。

中原 倉俣さんはフェルトや布を好んで、家具や段ボールに貼るようになりました。やはり、スタッフが指示したわけではなく、自発的に手がけたんです。ところで、ここにステージがありますが、展覧会のオープン間際に4人に100号のパネルへ絵を描いてもらいました。会期中も制作を続けていただく予定です。

開発 いま、絵が増えている途中なんですか。

中原 ええ、増えている真っ最中です。15点のつもりが、すでに13点も完成して、予想以上の驚くべきスピードです(取材したのは、オープン4日後だった)。

開発 早っ!

エリ 早すぎっ、それ!

中原 ダウン症の方は何故か、多くの人が描き上げるのが早いんですよ。

会場内にある制作スペースの前で解説をする中原淳行さん(右)。 うしろのほうにナブチさんも写っています
会場内にある制作スペースの前で解説をする中原淳行さん(右)。
うしろのほうにナブチさんも写っています


「楽園」がそこにある

中原さんのていねいな解説のおかげで、エリと開発さんは何度もうなずきながら会場を巡った。

開発 説明によって作品の背景も理解できて楽しめました。作品を目の前にするだけじゃなく、作者がスタッフの方たちといる光景や環境を想像すると、よりピースフルな感じになれましたね。

エリ すごい気持ちよかったですね。作品をつくっている間の、今日は気持ちがアゲアゲって感じや、逆に今日はツラいって感覚がむっちゃわかる気がして。ところで、アウトサイダーアートって言葉をあえて使ってないなと思ったんですが、どうなんですか?

中原 アウトサイダーアートという言葉は、本展に対して何の説明にもなっていないと思います。どうして、この人たちがアウトサイダーなんだ、と。アートにおいてインサイドとアウトサイドに隔てることは、まったく意味をなさないと考えています。

エリ ですよね。

中原 それに、今回の出品者はみんな「オレは成功してみせるぜ!」とか「どうだ、うまいだろ!」といった考えが皆無なんです。人と競争や比較する気がない。自我とは根本的に違う、もっと深いところで表現が成り立っている。例えば、一緒にいる人たちと気持ちのいい時間をすごしたい──そんな思いから作品が生まれたりする。そして、彼らのことを知らない人たちにも、そんな思いが伝わる。つまり、楽園としかいいようのない空間と時間が「制作の場」にはあるんです。

もちろん、エリと開発さんも、気持ちのいい空間と時間がすごせた。

ナブチ いやあ、東京都美術館で展覧会のハシゴした経験、初めてですよ。

エリ&開発 ナブチ、いたんだ!


構成/新川貴詩

もっと知りたい! 東京都美術館

1926年に開館した歴史ある美術館。全面改修を経て、2012年にリニューアルオープンした。アートを媒介として、人々のつながりを育む活動も始まり、より身近な美術館として多くの人の「アートへの入口」となっている。「楽園としての芸術」展の特設サイトではデザイナーの吉岡徳仁やファッションデザイナーの皆川明といったクリエイターたちが展覧会の魅力を語るスペシャルインタビューを掲載。展覧会は2014年10月8日(水)まで。
http://www.tobikan.jp

キュンチョメ

ホンマエリ(1987年、横浜生まれ)と、元引きこもりのナブチ(1984年、水戸生まれ)による二人組アート・ユニット。結成は2010年。今年2月、「第17回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」で、最高賞にあたる「岡本太郎賞」を受賞。それ以前にも「群馬青年ビエンナーレ2012」(群馬県立近代美術館)に入選。主な個展に「ここではないどこか」(2013年、素人の乱12号店 ナオ ナカムラ)、「なにかにつながっている」(14年、新宿眼科画廊)など。
http://kyunchome.main.jp

キュンチョメキュンチョメ

開発好明(かいはつ・よしあき)

1966年、山梨生まれ。多摩美術大学大学院修了。ニューヨークやベルリンなどでのレジデンス生活を経て、現在は日本を拠点に活動中。毎年開催されている「サンキューアートの日」の企画者としても知られる。主なグループ展に「ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展(2004年)」、「中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス」(14年)など多数。
http://www.yoshiakikaihatsu.com

開発好明(かいはつ・よしあき)

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