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トーキョー・アートエッセンス
No.016 やりたいこと、好きなことを見つけ、そこに自分を託す 山下洋輔氏 写真
語り手:ジャズピアニスト 山下洋輔氏
海外のミュージシャンとも、数々のコラボレーションをしているジャズピアニストの山下洋輔氏。小さい頃から、ピアノのいたずら弾きが大好きだったといいます。作家の筒井康隆氏や、タレントのタモリさんなど、ジャンルを超えた楽しいネットワークを持っている山下氏に、60〜70年代の新宿、ピットイン時代のエピソードを語っていただきました。

「山下洋輔:ピアノ協奏曲第1番《エンカウンター》/佐渡 裕×山下洋輔」
演奏:山下洋輔(p) 、植村昌弘(締太鼓) 、佐渡 裕(cond) 、イタリア国立放送交響楽団
「山下洋輔:ピアノ協奏曲第1番《エンカウンター》/佐渡 裕×山下洋輔」
演奏:山下洋輔(p) 、植村昌弘(締太鼓) 、佐渡 裕(cond) 、イタリア国立放送交響楽団
めざせ! 新宿のシンボル「ピットイン」

 家にはピアノがあったので、子どもの頃からいたずら弾きをしていました。母親が近所の子どもにピアノを教えていたので、それを耳にしてはそのまま弾いていたんです。でも、ぼくがどうしても譜面を見て勉強しないので、母親はヴァイオリンを持ってきて「やりなさい」と。おとなしく譜面を見てやりましたね。楽器との相性のあらわれ方は面白いですね。そのうち兄がジャズバンドをやり出して、その練習を毎日のように聴いていました。ある時、仲間に入れてもらってやったら、ちゃんとついていけたんですね。みんなが驚いてほめてくれるから、うれしくなってますますのめり込んでいった。いたずら弾きの楽しさが、ジャズという音楽の中にもあるんです。そういう音楽と出会ったから、続けることができた。ジャズという音楽があって本当によかったと思っています。やがて、これをやって暮らせたら何といいだろうとエスカレートした。

 駆け出しの頃は、バーとかキャバレーで演奏するダンス音楽、BGMの仕事をしていました。もちろん、やりたいジャズではないけれど、それでお金はもらえるんですね。客がいない隙をみてモダンジャズをやったりするんですが、そうすると、店のマネージャーが飛んできて止められたりする。その頃は、純粋にジャズ喫茶で演奏していたのは、ジョージ川口さんや白木秀雄さんなど、先輩格の有名バンドの人たちだけでした。若手がジャズ演奏を聴かせられるようになったのは65年頃からのことです。銀座の「ジャズ・ギャラリー8(エイト)」や、新宿の「ピットイン」でも週末に生バンドを入れるようになったんですね。ちょうどその頃、唐十郎さんが花園神社に赤テントを立てる前ですが、ピットインに芝居をやりに来たことがありました。寺山修司さんもやりに来たり、すまけいさんが前の駐車場でやったりして、ピットイン争奪戦の観があった。当時、ジャズは新しい表現の象徴みたいなところがあったのでしょうか。その中心のピットインにさまざまな人が集まって来たんですね。


好きなことを無理矢理にでも見つけてやる

 他のジャンルの人たちから影響受けるのは、大事だと思っています。文学だったら筒井康隆さんですね。高校生の時にSFに出会ったんですが、当時は翻訳ものばかりでした。でもやがて星新一、小松左京、筒井康隆という人たちが現れてきたら、こちらの方がすぐに好きになった。この辺、ジャズと似ていると思います。ジャズファンの中には、日本のジャズは絶対認めないなんて人もいますよね。でもぼくはそのときに、日本の方が面白いと思いました。特に筒井さんが大好きになったんです。やがて知りあうことが出来て、筒井さんが「ピットイン」のライブによく来てくれるようになりました。ライブが終わるとそのまま新宿で朝まで飲み明かすんです。お互いにあらゆる面白い話をするわけですが、筒井さんはジャズマンのバカ話によく耳を傾けてくれるんです。一度「ジャズみたいに即興で書く」とおっしゃって、確か『ビタミン』という作品を書かれました。

 ぼくはそれまでに、病気で演奏中断の期間を利用して、音楽学的な論文を一つ書いたことがありました。演奏再開後に出版社の人が来て今度はジャズマン旅日記みたいなものを書かないかといわれた。その時にすぐに筒井さんの文体を思い出したんですね。筒井さんの作品で一人称でおれっていうのが出てくると、必ず突拍子もない結末になる。あの感覚が好きで、仲間のジャズマンの行状などレポートしながら自分も珍道中をするようなエッセイを雑誌に連載したら、それが本になったんですね。以来、書かせてもらっています。

 最近では、クラシックオーケストラとの共演など特別企画もいろいろとやっていますが、やっぱり、ジャズクラブでやるのがぼくのルーツですね。あそこに戻ってくるとホッとします。自分を見失わないためにも大事だと思います。落語家と寄席のような関係かな。コワイ客がちゃんと見てくれているという感覚ですね、自分のホームグラウンドでもあって、本当にやりたいことをやるわけです。実験的なことや初めてのことも、ここでまずやってみる。そういう場所を持つことは大切ですね。それは、これからアーティストをめざす若い人たちにも同じことがいえるのじゃないかと思います。アーティストにとっての「寄席」がどういうところかは分かりませんが、やりたいこと、好きなことを見つけて、それに自分の表現を託すのは素晴らしいことです。そして続けることです。好きなことだったら、もっと知りたくなって一生懸命勉強するでしょう。じゃ、好きなこととどのようにして出会うかということですが、それは、無理矢理にでも好きになるという手もありますよ。漠然と待っていても好きなものは現れません。自分から突進するのです。おれはこれを好きになってやる! そういうのもあると思います。それがやがて一生邁進できるだけの好きなことになるかもしれません。是非チャレンジしてほしいと思います。

『山下洋輔のジャズの掟』全音楽譜出版
DVD「ラプソディ・イン・ブルー」 演奏:山下洋輔ニューヨーク・トリオ&スペシャル・ビッグバンド
『山下洋輔のジャズの掟』全音楽譜出版   DVD「ラプソディ・イン・ブルー」
演奏:山下洋輔ニューヨーク・トリオ&スペシャル・ビッグバンド

山下洋輔(やましたようすけ) 山下洋輔 写真
東京生まれ。1969年、山下洋輔トリオを結成。自由かつエネルギッシュな演奏で、ジャズ界に衝撃を与える。88年、山下洋輔ニューヨーク・トリオを結成。国内のみならず世界各国で演奏活動を展開し、世界中で圧倒的な支持を受ける。99年、芸術選奨文部大臣賞(大衆芸能部門)、03年には紫綬褒章受章。2000年に発表したピアノ協奏曲「即興演奏家の為のエンカウンター」を、佐渡裕の指揮により04年にイタリア・トリノで、05年にはNHK交響楽団と再演する。06年3月オーネット・コールマンと共演。11月、特別編成のビッグバンドによるDVD『ラプソディ・イン・ブルー』をリリース。07年2月、セシル・テイラーとデュオ・コンサート開催。08年1月、佐渡裕指揮の東京フィルハーモニー交響楽団と「ピアノ協奏曲第3番<エクスプローラー>」発表。3月ニューヨーク・トリオ結成20周年記念アルバム『トリプル・キャッツ』リリース。母校国立音楽大学の招聘教授、名古屋芸術大学の客員教授を務める。多数の著書を持つエッセイストとしても知られる。
URL. http://www.jamrice.co.jp/
 
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