東京のアートシーンをアーティストとともに創り、発信する Tokyo Art Navigation
展覧会・イベント情報 アーティストファイル エッセンス ビジョン スポット
マイページ サイトマップ
Tokyo Art Navigationとは?
TOPICS
TOP
トップ > トーキョー・アートエッセンス
トーキョー・アートエッセンス
No.025 市場価値がゼロと言われようとコレクションする
語り手:精神科医・コレクター 高橋龍太郎 氏
精神科医の高橋龍太郎さんは日本屈指の現代美術コレクターのひとりで、奈良美智、村上隆をはじめとする90年代以降の日本の若手アーティストの作品を1000点以上もコレクションしています。上野の森美術館で5月20日(水)からはじまる「ネオテニー・ジャパン−高橋コレクション」は、高橋さんがこれまで収集した作品によって構成された展覧会。日本の現代アートシーンを俯瞰する内容は必見です!

日本の現代アートをひも解くキーワード、ネオテニー

 展覧会のタイトルの「ネオテニー」という言葉は、動物学者のユリウス・コルマンが名づけたもので、「幼形成熟」という意味です。例えばアホロートルは、陸上に移動する過程などで変態しサンショウウオになるんですが、アホロートルという幼形のまま姿を変えることなく、性的に成熟することも少なくない。ネオテニーというのは、こういった幼いまま大人になることを指しています。私がコレクションをはじめた90年代後半、日本の若手アーティストたちの作品には、サブカルチャーと呼ばれるマンガやアニメの影響が色濃く反映されていました。表現された幼さ、子どもの王国のような感性。「日本の現代美術はネオテニーだ」と当時から漠然と頭にはあったのですが、展覧会をするということになってから「ネオテニー・ジャパン」と名づけました。

 そもそも美術史というのは、西洋美術が主体となってつくられています。その文脈から見ると、日本の美術は、単に西洋の文脈からはずれていただけだったのに、自分たちの美術を稚拙な表現ととらえるようになってしまった。明治の文明開化とともに、当時の日本の美術界は洋画というジャンルを確立して、西欧から技術を輸入しようと努める。その結果、洋画は洋食のように、それがそのまま西欧で食べられることがないよう、日本国内だけの独特の表現世界にとどまってしまったんですね。この状態から100年経って、ようやく日本美術は洋画壇とは離れたところでゆっくりと成熟の過程を歩み始めた。ネオテニー・ジャパンというのは、そういった意味合いもあるんです。

加藤美佳《パンジーズ》2001年

奈良美智《In the Deepest Puddle》1995年

作品左より、加藤美佳《パンジーズ》2001年、奈良美智《In the Deepest Puddle》1995年
Courtesy Tomio Koyama Gallery


この展覧会は、作品によって押し出されたもの

 1990年に自分のクリニックをオープンしたんですが、その頃は、版画やポスターのようなアートワークを壁にかけていました。ギャラリーを見て回るということは当時からしていて、1997年、会田誠の《群娘図'97》に遭遇した。手に入れたいと思ったんですが、既に売約済みだったんですね。それに、これは診療所に置けないなあと(笑)。それから、学生時代から気になっていた草間彌生の油彩《インフィニティ・ネット》を購入し、少しずつ集めるようになりました。コレクション作品は、クリニックに置いたり自宅で楽しんだりしていました。ところが、コレクションの数が増えてきて、倉庫に入れたままとか美術館への貸し出しなどでしか作品を見ることが難しくなってきてしまったんです。それで、全体像を整理する意味でも、一度展覧会をしたいと考えるようになりました。作品によって押し出されている、という感覚ですね。

 近代美術までの作品にはある程度価値が定まっていますが、現代美術はそうもいきません。ゼロになってしまう、ということもあり得る世界。ですが、今年のVOCA展を見て、にぎにぎしくて面白いと思いましたし、現代美術の素晴らしさはなにものにも変えがたいのです。購入するときはアーティストには会わないで、作品だけを見て購入します。なぜならアーティストは天賦の才能を持った人、私にはそんな彼らと語り合う言葉を持ち合わせていません。それに作家支援という気持ちで買っているわけでなく、あくまで私が欲しいから、見たいからということで買っています。だから、すべてみんな私の子どものよう。この展覧会の出品作で、どれが好きとかオススメなんて言えませんよ(笑)。


「ネオテニー・ジャパン−高橋コレクション」展覧会概要

名和晃平《PixCell-Gazelle#2》2006年
名和晃平《PixCell-Gazelle#2》2006年
Courtesy SCAI THE BATHHOUSE

 世界から注目を集める1990年代以降の日本の現代アート
33名の作家の作品を一堂に展示

 日本屈指の現代アートコレクター、高橋龍太郎氏。本展では、氏が収集した1000点以上のコレクションから、日本のアートシーンを語る上で欠かせない作家33名の作品(絵画、立体、映像、インスタレーション)約80点を一挙公開。世界から注目を集める1990年代以降の日本の現代美術の動向を展観します。時代とアーティストの感性を鋭く切り取る「高橋コレクション」。会期中には高橋龍太郎氏と出品作家のトーク、アーティストトーク、ワークショップ、ライヴなど多彩なイベントを開催します。詳細は、展覧会公式ホームページよりご確認ください。

<出品作家>
会田誠、青山悟、秋山さやか、池田学、池田光弘、伊藤存、小川信治、小沢剛、小谷元彦、加藤泉、加藤美佳、工藤麻紀子、鴻池朋子、小林孝亘、佐伯洋江、さわひらき、須田悦弘、高嶺格、束芋、千葉正也、できやよい、照屋勇賢、天明屋尚、奈良美智、名和晃平、西尾康之、町田久美、Mr.、三宅信太郎

会場/上野の森美術館(JR上野駅公園口より徒歩3分)
会期/2009年5月20日(水)〜7月15日(水) ※会期中無休
時間/10:00〜18:00(金曜日は〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
料金/一般1,200(1,000)円、大学生・高校生1,000(800)円、中学生以下無料
※( )内は前売券及び20名以上の団体料金
電話/03-3833-4191(上野の森美術館)
展覧会公式ホームページ
http://www.neoteny.jp
次回は…
引き続き高橋龍太郎さんに、世界を視野に日本の現代アートを発信することなどについてお聞きします。[5月28日(木)アップ予定]
高橋龍太郎(たかはしりゅうたろう) 高橋龍太郎(たかはしりゅうたろう)

1946年生まれ。精神科医。医療法人こころの会理事長。専門は社会精神医学。東邦大学医学部を卒業後、慶応大学精神神経科入局。国際協力事業団の医療専門家としてペルーへ派遣などを経て、1990年、タカハシクリニックを東京都蒲田に開設し院長となる。田町、目黒、品川、川崎などに診療所をもつ。1997年より日本の若手アーティストを中心に現代美術のコレクションを開始し、所蔵作品は現在約1000点を数える。2004年、コレクションを公開するアートスペース「高橋コレクション」を神楽坂にオープン。2008年、白金に新スペースを開設し、2009年4月には日比谷へ移転拡大する。主な著書に『あなたの心が壊れるとき』(扶桑社文庫)、『人生にはいらない人間関係がいっぱいあるー気持ちをラクに生きるヒント』(青春出版社)など多数。

 
創作活動サポート
メンバー登録
東京のアートシーンを共に創造するメンバーを募集しています!
アーティストの方はこちら
あなたの作品や活動をTokyoから世界に向けて発信してみませんか?
サポーターの方はこちら
創作活動をサポートするギャラリーや稽古場の登録、展覧会やイベントを投稿できます。
メールマガジン登録申し込み
デジタルミュージアム
東京・ミュージアム ぐるっとパス2007
詳しくはこちら