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トーキョー・アートエッセンス
No.030 いいと思ったものは、自分で世に出す
語り手:編集者/クリエイティブ・ディレクター 後藤繁雄氏
編集者として、著名なアーティストの本を数多く制作している後藤繁雄さん。現在は、若手アーティストの発掘・発信にも尽力し、さまざまなコンペティションの審査員を兼任。ご自身がディレクターを務めるG/P galleryでは、今後の活躍が期待される写真家たちの展示を行っています。今回は、実際どのように審査をするのか? そのポイントについてお話しいただくとともに、アートプロデュースする立場として必要なことは何か? アーティストとの接し方などについてお聞きしました。 ディレクターを務めるG/P galleryのあるNADiff A/P/A/R/T

G/P gallery コンテンポラリーフォトとグラフィックアートのギャラリー 後藤氏がこれまでに発掘してきた作家が在籍し、作品発表の場となっている
G/P gallery コンテンポラリーフォトとグラフィックアートのギャラリー
後藤氏がこれまでに発掘してきた作家が在籍し、作品発表の場となっている

才能へのリスペクトと審査方法

 編集者という仕事と新人発掘は、自分の中では切り離してる感じはないね。育成すると言うよりも、話し相手って言うのかな。僕は編集者でもあるけど、インタビュアーでもあるから、まだ不定形で未分化な状態の作家からものを聞き出して、君が言っている内容はこういうことなんだろうか、みたいなことを確認させながら、対話を通じて作家を形にしていくっていうタイプですね。先日僕の学科を卒業したての佐藤允君の初作品集を出したけど、とてもうれしかった。才能というのは最初はとても脆弱なものだから、長い目で丁寧にケアしていってあげないと、うまくいかない。そういった意味では、才能をどう編集するかみたいなところもある。主役はあくまでアーティスト、真ん中にアーティストがいたら僕はお仕えするというスタンス。それはずっと変わってないと思う。

 やっぱり、才能に対する尊敬みたいなものが基本にある。だから審査をするとき、自分が偉そうに高みに立って人を裁くということは、できるだけ避けたいです。自分が権威になったり、先生面して誰かの人生左右するみたいなことはやりたくないんだけど、実際に審査員が判定することによって、作家が一喜一憂したりはあるわけじゃない。影響力はすごく大きいわけです。ということは、審査にもれがないように、作品の表現が、古今東西、昔にあったかなかったか、今のアメリカ、イギリスにあるものかとか、いろんなことを把握してなきゃいけない。権威じゃないのに、全部知ってなきゃいけない。スタンスとしては、プロよりうるさいアマチュア。おまけに全ジャンルというのが僕の売りです。志高いわけだよ(笑)。

(c)Yumiko Utsu, Courtesy of G/P gallery
(c)Yumiko Utsu, Courtesy of G/P gallery

(c)Taisuke Koyama, Courtesy of G/P gallery
(c)Taisuke Koyama, Courtesy of G/P gallery


新人アーティストの発掘と発信

 審査員は好きでやってます。なぜかと言うと、誰よりも先に才能に触れる口実だから。今やっている「アートアワードトーキョー」なんかは、自分たちで卒展まわって作品を選んじゃう。こっそり行って「すごい!」という作品を見つけたら、「なんとかさんいますかー」って作家を探し出す。本人を見つけたら「お前やるな、公募出せ」って説得(笑)。今年は美大15校に行きました。面白かった。ただ、審査をするときは、自分では100万回テストと呼んでるんだけど、この人はいけるかどうか。どんな感じか。作品をじろじろ見て、分析してメモに書いたり、眼の光とか手の大きさ、歩き方、全てをシビアにテストして判断してますね。

 以前、「ひとつぼ展」という公開審査を依頼されたことがあって、これは燃えた。アーティストがプレゼンして、それに対する審査員の話を卵たちが聞いてるんだよ。言葉の責任は大きいなと。それでその時決めたのが、自分がいいと思ったものは自分で売り出すってこと。今どうしてG/P galleryやってるかというと、小山泰介もうつゆみこも頭山ゆう紀も、そのとき見つけた作家たちだから。有言実行しているわけです。だけどそれは、予告ホームランをするしかなくなってしまったということでもあって。来年の木村伊兵衛賞の候補に上がるだろうと思った作家がいたら、必ず口説きに行かなきゃいけない。僕がいいと思うものが、世の中をつくっていってくれたらいい。


(c)Ryo Fuzimoto, Courtesy of G/P gallery
(c)Ryo Fuzimoto, Courtesy of G/P gallery

アートプロデュースに必要な条件

 アートをプロデュースする側に必要なのは、コンテクスト(文脈)を理解するということ。サッカーの試合で、蹴るのがうまいからって急に選手が乱入してきたらサッカーはできない。つまり、ちゃんとルールを知らないとダメだという話。コンサバティブに聞こえるかもしれないけど、今のコンテンポラリーアートでは、ルールというか価値の基準、そういったなかで作品が化けたり、評価されたりする。視覚プレイじゃなくて、頭脳プレイの時代なわけだよ。スーザン・ソンタグが「芸術とは一連の成功した逸脱行為である」と言ったんだけど、ただ乱暴なことをやる破壊者じゃダメなんだ。成功した逸脱行為を継続するには、ストラテジー(戦略)に精通しなければいけない。そこが、アートプロデュースの条件だろう。

 これからは、アートが社会のなかでどう機能するか、ということも考えなければいけないわけだけど、あくまで主役はアーティストであり作品であるってことを忘れてはいけない。現代アートは難解だ、こんなものわからないとか、いろいろ言われるわけですが、アートはみんなが既にわかってしまった答えではなく、問いなんだよ。その問いについてみんなで考えることができるかっていうことが、プロデュースで一番重要だね。あとは、小林秀雄が言っていて鼻につくなこのオヤジって子供のころ思ってた言葉があるんだけど、「一流の仕事をする人間と仕事をしないと一流になれない」。その通りなんだよな(笑)。自分のレベル設定を上げるということは、人生永遠に勉強。だけど、それこそが一流アーティストの才能に対するリスペクトになるわけです。

information

佐藤允作品集『はつ恋』
佐藤允作品集『はつ恋』

■アートビートパブリッシャーズ新刊情報
京都造形大学在学中にギャラリー小柳の展示で注目を浴び、海外でも人気上昇中の佐藤允、初のドローイング集『はつ恋』が限定500部で販売中のほか、注目の作家うつゆみこの写真集も今秋発売予定!

■NEW DIRECTION:exp.
若き才能を発掘・育成するため、トーキョーワンダーサイトと京都造形芸術大学が連携。京都造形芸大教授の後藤繁雄さんが中心となり、東京藝大教授の木幡和枝さんとの共同キュレーションで、全国の美術大学・大学院卒業者の中から、「新たな動向」を予感させる才能を選抜し、グループ展を構成。
会期/2009年9月5日(土)〜9月27日(日)
時間/11:00〜19:00 (入館は閉館30分前まで)
休館/月曜日(祝日の場合は翌日)
会場/トーキョーワンダーサイト本郷(東京都文京区本郷2-4-16)
http://www.tokyo-ws.org/

■Paris Photo 2009
毎年パリで開催される写真作品のアートフェア。世界23カ国から88のギャラリーが集結し、G/P galleryでは篠山紀信、上田義彦、小山泰介、うつゆみこを出品。
会期/2009年11月19日(木)〜11月22日(日)
http://www.parisphoto.fr/

次回は…
日本橋馬喰町にあるギャラリー、ラディウム―レントゲンヴェルケ代表、池内務さんのインタビューを掲載します。[10月22日(木)アップ予定]
後藤繁雄(ごとうしげお) 後藤繁雄(ごとうしげお)

1954年、大阪府生まれ。編集者、クリエイティブ・ディレクター、京都造形芸術大学教授。「独特編集」をモットーに、坂本龍一、荒木経惟、篠山紀信、蜷川実花など、数多くの写真集やアートブックを編集。インタビュアーとして『high fashion』でアーティスト・インタビューを連載するほか、展覧会企画、キュレーション、アートアワードトーキョー丸の内コミッティ、magical, ARTROOMスーパーバイザー、AMUSE ARTJAMなど、コンテンポラリーアートの分野で若手アーティストを発掘・育成するさまざまなプロジェクトに携わっている。2008年、恵比寿にオープンした写真とグラフィック専門のG/P galleryではディレクターを務め、新進作家を精力的に紹介。2009年度第13回文化庁メディア芸術祭では、エンターテインメント部門の審査員も務める。
http://www.gotonewdirect.com/

 
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