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トーキョー・アートエッセンス
No.040 人生を賭けて、とことん作家と付き合う 山口晃 《子の字行形柱》 2010年 紙にペン、水彩 35×24cm 撮影:宮島径 (c) YAMAGUCHI Akira
語り手:ミヅマアートギャラリー代表 三潴末雄さん
会田誠さん、天明屋尚さん、山口晃さんら、日本の現代アートシーンを語る上で欠くことのできない作家を世に送り出してきたミヅマアートギャラリーの三潴末雄さん。事務所には、連日ポートフォリオやファイルが山のように送られるそうです。いったいどのように作家を発掘しているのか? 今回のインタビューでは、作家との出会い方、作品で見るポイントなどをお聞きしました。また、ギャラリストを目指す方に必要な心構えも教えていただきます。

作家になるための必須条件

 前回の内容を踏まえた上で、日本の若い作家に助言したいのは、アーティストになったら飯が食えるのか? もしそういうことを考えるなら、やめた方がいいと言いたい。アーティストはサラリーマンじゃないんだから、甘い世界じゃないし、才能が全ての世界です。先日、都内の某美術大学で講演をした時、学生から「画廊の人に、今はビデオインスタレーションは売れないから、絵でも描いた方がいいと言われたんですが、どう思いますか?」と聞かれて、なぜ作品が売れるといったマーケットの話が先にくるんだろうなと。自分がやりたいことをやればいいじゃない。表現したいことがあるなら、そのために全精力を傾けて欲しい。売れる売れない食える食えない、そんなレベルで作品をつくって、貸し画廊で個展を開いても中途半端だと思います。やはりエネルギーを溜めに溜めてやりたいことを爆発させないと、本当の才能は開花しないし、他人には伝わりません。

 僕は作品の何を見ているかというと、エネルギーと過剰さ、その2点を重視しています。テクニックは同じことを繰り返していれば誰でもうまくなるものだし、そういう作家はゴロゴロいる。技術力ある者がみんなプロのアーティストになれるかと言ったら、なれません。村上隆君は、もの凄く厳しい競争世界の中で成功したから、若い人にもアーティストで飯が食えるという話をするかもしれない。でもそれは針の穴を通るくらい、本当に難しい話。でも、自分が表現したいもの、これでやっていきたい、これを表現したい、そういうものがあるんだったら、売れようが売れまいが続ける。これが重要だ。今の時代に受け入れられなくても、もしかして10年後に評価されるかもしれない。そのためには自分を信じるしかない。自分の才能を確信して、未来を信じる。アーティストはそういうナルシシズムやクレイジーさがないと生き残れません。強靭な精神力に裏付けられた、深く思想した作品をつくって欲しいと思います。

 ギャラリーには、作家からどんどんファイルが送られてくるし、ネットから外国の売り込みもある。だけど、そんなに才能は転がっていません。美大の卒展なんかでも作家を探したりしますが、1年にひとり見つかればラッキーな方。逆に言うと、ギャラリーも10年かけなければ作家を充実させることができない。ひとりの作家でギャラリーを1年間維持するなんて、できっこないんだから。DMやハガキもちゃんと見ていて、例えば池田学君から「ペンで大きな絵を描いてます……是非見てください」というDMが2004年に来て、面白そうだなと思って、実際3日間ギャラリーに通って作家を口説いた。俺に人生預けろと言って。女性を口説くようなもんだね(笑)。それでギャラリーにも話をつけて、作家にもOKをもらいリプレゼントすることになった。藤田桃子という若い作家もハガキに書いてあった番号に電話して、どこで個展するのか聞いたら沖縄で(笑)。結局行きましたが、たった1枚のハガキからつながることもあるわけです。

池田学 《予兆》 2008年  紙にペン、インク  190×340cm  撮影:久家靖秀  (c) IKEDA Manabu
池田学 《予兆》 2008年  紙にペン、インク  190×340cm  撮影:久家靖秀  (c) IKEDA Manabu


作家たちが、ギャラリーの財産になる

 アーティスト同様、ギャラリストもお金儲けがしたいなら、やめた方がいいですね。欧米のリプレゼント制度のように、ギャラリーは所属作家の資料をアーカイブし、責任をもって推す。そういった役割もあるので、ギャラリーを開くということは、作家の全人生に責任をもつことでもある。簡単に開いて簡単に閉じられるようなものじゃないんですよ。この作家に出会って、この才能のために、自分は人生を賭けるんだ。そう思える作家に出会えたら、ギャラリーを開けばいいんです。うちの場合、作家のマネジメントを含めて、ありとあらゆることを一緒にやっています。ときどき飲み会を開いて、作家同士の横のつながり、作家、コレクター、ジャーナリストのコミュニケーションの場をつくったりもしています。作家に子どもが生まれれば、病院まで行くしね。売れない時代を一緒に経てきたからというのもあるけど、やっぱり作家が第一だし、うちの財産は作家ですから。

 アジアのマーケットが盛んだという話をしましたが、オークション主導型なので危険な部分もあります。高く売れるようになると、オークションに作家が直接作品を売ってしまうなんてことも、実際中国でありました。あまりにも早くそういう時が来ると、つぶれてしまうのも早かったりします。そういう時に、プライマリーギャラリーがしっかりサポートする。これも大切なことですね。うちのスタッフも作家を第一に考えていて、こんなエピソードがあります。昔、作家への支払いが遅れていた時「そのボーナス、先にあの作家に払ってください」と言われたことがあった。凄いなと思いましたけど、これがうちのカルチャーでしょう。ミヅマから独立した無人島プロダクションの藤城里香なんかは、そういうDNAを一番強く引き継いでいます。今後もこういった文化は守り続けていきたいですね。

 やりたいことはたくさんありますが、会田誠の個展を美術館で見てみたいと強く思っています。しかしながら本人から「向こうが頭下げてくるまでお願いするのはやめましょう」と言われたので、「俺の眼が黒いうちは美術館での個展はないのかな」と思ったりしています。

会田誠 《美しい旗(戦争画RETURNS)》 1995年  襖、蝶番、木炭、大和のりをメディウムにした自家製絵具、アクリル絵具(二曲一双屏風)  各169×169cm  撮影:宮島径  (c) AIDA Makoto
会田誠 《美しい旗(戦争画RETURNS)》 1995年  襖、蝶番、木炭、大和のりをメディウムにした自家製絵具、アクリル絵具(二曲一双屏風)  各169×169cm  撮影:宮島径  (c) AIDA Makoto

Courtesy Mizuma Art Gallery


Information

丸田斎 《世界平和(部分)》 2009年  紙、ロットリングペン、アクリル絵具  116.8×1000cm  撮影:宮島径  Courtesy Mizuma Art Gallery  (c) MARUTA Sai
丸田斎 《世界平和(部分)》 2009年  紙、ロットリングペン、アクリル絵具  116.8×1000cm  撮影:宮島径  Courtesy Mizuma Art Gallery  (c) MARUTA Sai

ロバート・ウォーターズ 《Man at Computer》 2008年  Brown packaging tape installation  Courtesy of Artium  (c) Robert Waters
ロバート・ウォーターズ 《Man at Computer》 2008年  Brown packaging tape installation  Courtesy of Artium  (c) Robert Waters

■Mizuma Action
・丸田斎展「平和と波動」(ミヅマ・アクション2F)
平和への祈りを込め、1日10時間1年かけて制作した10メートルの大作を公開
・ロバート・ウォーターズ展「MAN」(ミヅマ・アクション5F)
様々な媒体を用い、現代社会における男性像の矛盾を追及した作家のアジアでの初個展

会期: 7月14日(水)〜8月14日(土)
時間: 11:00〜19:00
休館: 日曜・月曜・祝日
会場: 目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
交通: 中目黒駅より徒歩3分、代官山駅より徒歩6分、恵比寿駅より徒歩12分
ジュン・グエン=ハツシバ 《1940年8月8日‐2009年9月8日、その後(インスタレーション部分)》 2010年  7mフラッグポール、ロープ、セメント、アルミニウム、植木鉢、土  Courtesy the artist and Mizuma Art Gallery
ジュン・グエン=ハツシバ 《1940年8月8日‐2009年9月8日、その後(インスタレーション部分)》 2010年  7mフラッグポール、ロープ、セメント、アルミニウム、植木鉢、土  Courtesy the artist and Mizuma Art Gallery

■Mizuma Art Gallery
・ジュン・グエン=ハツシバ展「Thank you ありがとう Cam on」
亡き父へ感謝を込め父と子の関係、また二人の人生の記憶をテーマにした展覧会

会期: 7月28日(水)〜9月8日(水) ※8月12日(木)〜18日(水)は夏期休廊
時間: 11:00〜19:00
休館: 日曜・月曜・祝日
会場: 新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F
交通: 有楽町線、南北線、市ヶ谷駅出口5より徒歩5分
JR飯田橋駅西口、東西線、有楽町線、南北線、飯田橋駅出口B2aより徒歩8分

http://mizuma-art.co.jp/

三潴末雄(みづますえお) 三潴末雄(みづますえお)

東京生まれ。成城大学文芸学科卒業。1980年代からギャラリーでの活動をはじめ、1989年、西麻布に最初の画廊をオープン。1994年、青山でミヅマアートギャラリーを創設し、2002年、ギャラリーを中目黒に移転。2008年、北京にMizuma & One Galleryを開廊。2009年より現在の市谷田町を活動の拠点とする。中目黒のスペースは、主に若手作家を紹介するミヅマ・アクションとして企画展を開催している。1990年代から、青山エリアでアートイベント「MORPHE」を主催するなど、美術展のプロデュースに携わる。TV番組『たけしの誰でもピカソ』のアートバトルコーナーでは審査委員を務めた。2000年以降は、海外のアートフェアにも積極的に参加し、近年ではアジアでの活動も展開している。主な作家に、会田誠、O JUN、鴻池朋子、天明屋尚、山口晃など多数。
http://mizuma-art.co.jp/

撮影:松蔭浩之
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