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松蔭先生の課外授業
No.004
東京都江戸東京博物館 特別展「徳川の城〜天守と御殿〜」
ゲスト:アーティスト/NAOMI YUKIさん
松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)先生が毎回さまざまな若手アーティストと都内の文化施設で行う「課外授業」で、展覧会の見方、楽しみ方を学びます。今回は第4回TANコンペで特別賞を受賞したNAOMI YUKIさんをゲストに、東京都江戸東京博物館で開催中の二つの展覧会を訪れます。
駿府城天守模型 撮影:松蔭浩之

松蔭浩之先生とNAOMI YUKIさんは、両国にある東京都江戸東京博物館へとやってきた。YUKIさんは、昨年の「第4回 トーキョー・アート・ナビゲーション・コンペティション」で特別賞を受賞した新進アーティスト(受賞時の名前はNY)だ。

NAOMI YUKI(以下、NY) 学校を卒業してまだ6年目で、まだまだキャリアは浅いんですが、今日はよろしくお願いします。

松蔭 こちらこそ、よろしく! 学校はどちらへ?

NY イタリアのローマ国立美術院です。

松蔭 日本の美大には行かず、いきなりイタリア?

NY ええ、30歳を過ぎてから美術を学ぼうと思ったんですが、その歳じゃセンター試験とか日本の大学制度は無理だろうと思って。で、ふとイタリアの学校を検索したら、いいところが見つかって。イタリア語もできないのに試験に受かってしまいました。

松蔭 そりゃ、すごい行動力だ。

そして二人は、特別展「徳川の城〜天守と御殿〜」の会場へ。同館学芸員の齋藤慎一さんにご案内を願った。

左から、会場を案内いただいた学芸員の齋藤慎一さん、松蔭先生、YUKIさん
左から、会場を案内いただいた学芸員の齋藤慎一さん、松蔭先生、YUKIさん

齋藤 本展はタイトルどおり、城がテーマですが、お二人は城と聞いて、まずどんなことをイメージします?

NY お濠とか。

松蔭 天守閣とか。

齋藤 ええ、壕や天守閣が城の代表的なイメージでしょうね。そして次には、戦争が出てくると思います。でも、実は戦国時代には立派な石垣で固められた水堀はまだなくて、そのような水堀が登場するのは江戸時代からなんですよ。逆にいうと、江戸時代になると戦争はなくなったので、戦うための城ではないんですね。それで御殿にも注目し、会場の入口は御殿風に装飾しました。

NY この入口、木の香りが素敵ですね。

「江戸図屏風」江戸時代前期 国立歴史民俗博物館蔵[展示期間:8月4日〜8月30日]※ただし、9月1日〜9月27日は複製この屏風のなかに、家光が何人もいる?
「江戸図屏風」江戸時代前期 国立歴史民俗博物館蔵
[展示期間:8月4日〜8月30日]※ただし、9月1日〜9月27日は複製
この屏風のなかに、家光が何人もいる?

齋藤 こちらをご覧下さい。この「江戸図屏風」が描かれたのは三代将軍の家光の頃です。江戸城と町の様子が描かれていますが、実は父や母の墓を建てたことなど家光が取り組んできたことも描かれているんですよ。

松蔭 偉いっ! 家光は親孝行だ!

齋藤 それから、さらに仕掛けがあって、前に流行った「ウォーリーを探せ!」のように、この屏風の中に家光がいっぱい描かれているんです。

NY えっ、家光がいっぱい!?

齋藤 たとえば、この椅子に座っているのが……。

松蔭 これが家光か!

齋藤 あと、この朱傘(しゅがさ)を差しているのが……。

NY ここにもいるんですね!

松蔭 なるほど、そういうふうに見ると面白い。やっと見方がわかってきた。解説がないとぼんやりと見てしまいがちだからね。

それから一行は、さまざまな屏風や調度品、高精細コンピュータグラフィックスで再現された江戸城の御殿の様子などを見て回った。

縦3.72m×横4.65mの巨大絵図「江戸城御本丸惣地絵図」(江戸東京博物館蔵)など、絵図や城郭図が多数展示されている
縦3.72m×横4.65mの巨大絵図「江戸城御本丸惣地絵図」(江戸東京博物館蔵)など、絵図や城郭図が多数展示されている

齋藤 この一角では、江戸時代に全国各地に建てられた城の絵地図や城郭図を展示しています。こちらは駿府城、あちらは大坂城ですね。

松蔭 えっ、ということは、いまの大坂城は復元されたものだけど、あれは豊臣秀吉が建てた大坂城じゃないということ?

齋藤 秀吉は立派な石垣の城を築いたんですが、豊臣家の権威を消滅しようと考えた徳川家は、その石垣を土で覆って、そこにまた新たな石垣を組んだんですよ。

松蔭 そうだったんですか!

齋藤 当時の大阪の民衆に、豊臣家のシンボルだった大坂城よりもすごい城をつくるさまを目の当たりにさせたわけです。つまり、徳川家の権威を見せつける舞台装置といったところですね。

松蔭 えげつないことするなぁ。

高校生が卒業制作で再現した「駿府城天守模型」。設置されているタブレットを通して模型を見ると、四季の変化などを表した3D映像が重なって見える

高校生が卒業制作で再現した「駿府城天守模型」。設置されているタブレットを通して模型を見ると、四季の変化などを表した3D映像が重なって見える

高校生が卒業制作で再現した「駿府城天守模型」。設置されているタブレットを通して模型を見ると、四季の変化などを表した3D映像が重なって見える

齋藤 そしてこちらは、静岡県立島田工業高校建築科の学生たちがつくった駿府城天守の模型です。卒業制作でつくったんですよ。

NY 模型の石垣の素材は何ですか?

齋藤 石です。軽石を削って形を整えたそうです。

NY すごく大変だったでしょうね。時間もかなりかかってそう。

齋藤 7月から始めて、秋の文化祭に出したと聞いてます。でも、中はからっぽです。そもそも天守って、外から見るときれいですが、実際の建物でも内部は単なる倉庫だったり、機能としてはあまりないんですよ。人々に見せるためだけの、いわばシンボリックなタワーなんです。

松蔭 そりゃ、天守みたいな高いところで寝泊まりしたら落ち着かんしな。それにしても、小倉で生まれ育ち、子どもの頃から小倉城に親しんできた城好きのおれにとって、これはたまらん展覧会だ。うん、満足した!

次回は東京都江戸東京博物館で開催中の企画展「くらべてみよう江戸時代」(9月27日まで開催)を巡ります。江戸っ子が当時の流行を見立て番付でランキングするなど貴重な展示です。

「大広間」「松の廊下」などを高精細コンピュータグラフィックスで再現。大画面で上映されている。映像制作はNHKエンタープライズ
「大広間」「松の廊下」などを高精細コンピュータグラフィックスで再現。大画面で上映されている。映像制作はNHKエンタープライズ

明治時代初期の旧江戸城を映した写真のガラス原板も展示。横山松三郎の手で、本丸内景観、本丸・二の丸ほかの、竹橋門、外桜田門などの城門が撮影された。「当時のカメラだから、写真に写っている人は撮影のあいだ体を止めていたのだろうか。興味深い」と松蔭先生も引き込まれる
明治時代初期の旧江戸城を映した写真のガラス原板も展示。横山松三郎の手で、本丸内景観、本丸・二の丸ほかの、竹橋門、外桜田門などの城門が撮影された。
「当時のカメラだから、写真に写っている人は撮影のあいだ体を止めていたのだろうか。興味深い」と松蔭先生も引き込まれる


構成/新川貴詩

「徳川の城〜天守と御殿〜」

徳川家康らが全国の統治を強化するため、各地の要所に築いた数々の城。権威の象徴としての天守、江戸城の松の廊下や大奥に代表される荘厳な御殿など……。屏風や絵地図、工芸品など貴重な資料で「徳川の城」の魅力に迫る展覧会。東京都江戸東京博物館で9月27日(日)まで開催。
http://tc2015.jp/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「日常採取〜A DAY IN THE LIFE」(ギャラリー サイトウファインアーツ、神奈川、2014)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

NAOMI YUKI

大阪府生まれ。2009年にイタリアのローマ国立美術院卒業。以来、国内外の展覧会に参加多数。2011年、日本文学館 アート部門特別賞、2014年、第4回 トーキョー・アート・ナビゲーション・コンペティション 特別賞、2015年、ACT Art Award 2015 優秀賞3位など受賞多数。
http://www.ny-artwarp.com

NAOMI YUKI

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