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松蔭先生の課外授業
No.012
東京都庭園美術館
ゲスト:アーティスト/地主麻衣子さん
松蔭浩之先生がさまざまな若手アーティストをゲストに都内の文化施設で展開する「課外授業」。東京都庭園美術館を訪ねた後、松蔭先生と地主麻衣子さんは美術と映像の関係性をめぐって語り合いました。
東京都庭園美術館近くのカフェにて

松蔭浩之先生と地主麻衣子さんは、この日が初対面。まずは、美術と映画の話題となった。

松蔭 絵画科出身なのに映像を撮ってるんだ。

地主 はい、最初は油絵を描いてました。でも、体質に合わなくて……。

松蔭 もはや地主さんは映像作家といってもいいよね。映画祭にも出品しているし。

地主 ええ。でも、美術と映画って近いようでまったく違う。

松蔭 うん、違う違う。携わってる人たち、お互いに見向きもしないし。だから、両者をリンクさせるのは大変。その点、地主さんは美術と映画の両方の文脈で活動していて新しいと思う。

地主 そこ、まさに核心です! 私は美術と映画、両方をやっていきたい。小さい頃から物語に興味がありました。一方で絵も好きで美大に入ったんですが、絵は時間芸術じゃないから、自分のやりたいことが100パーセントできない。そこで、物語を書いてみたんですが、誰も読んでくれる人がいなくて、朗読のパフォーマンスをしてみたんです。

松蔭 そういう理由でパフォーマンスを始めたんだ。

地主 はい。そして、パフォーマンスの模様を記録したのが、初めての映像作品だったんです。

松蔭先生が、地主さんの作品をじっくりと観察。「黄金町バザール2014」(横浜)で発表した《馬が近づいてくる音》だ。

《馬が近づいてくる音》2014 ヴィデオ・インスタレーション 82分

地主 一般的に映画って、監督と俳優が何度も撮影を重ねて、ベストなシーンを選んで編集しますよね。この作品では、監督と俳優のやりとりのプロセスをそのまま全部記録したんです。出演者がドラムを叩く撮影の模様から公開して制作しました。

松蔭 「ダブル・フォーカス」だね。地主さんが監督として出演者を見ていて、そのさまを他の人たちが見てる。で、地主さんが撮ってる映像と他のカメラマンが撮ってる映像が編集されているわけか。

地主 そうですそうです。そして、公開撮影の後、インスタレーション作品として仕立てて展示しました。

松蔭 この作品、長さはどれくらい?

地主 一時間半です。一般的な映画と同じくらい。ですから、映画であり、インスタレーションだから美術でもあるんです。私は、新しい種類の文学を目指したいんです。

松蔭 最新作はどんな感じ?

動画に見入る松蔭先生
動画に見入る松蔭先生

地主 《遠いデュエット》と言います。ロベルト・ボラーニョというチリの作家で詩人がいるんですけど、その人の痕跡を追い求めて、スペインの各地で撮影した作品です。出演してくれたのは、現地でたまたま会った人たちです。

松蔭 スペインで制作したんだ。

地主 そうです。トーキョーワンダーサイトの「クリエーター・イン・レジデンス」に選ばれて、マドリードを中心に滞在制作をしました。

松蔭 滞在はどれくらい?

地主 一ヶ月半です。美術や演劇、映画など複合的な文化施設に滞在して、集中して制作に取り組めましたね。

松蔭 スペインはその手の施設が充実してるからね。

地主 その施設も気に入りましたが、スペインの感覚、ちょっと暗い感じが自分に合ってました。

松蔭 スペインが暗い? 多くの人はスペインというと明るい印象を持ってるけど。

地主 暴力の匂いがするんですよ。

松蔭 なるほど、いい着眼点だ。

《遠いデュエット》2016

《遠いデュエット》2016

そして、松蔭先生と地主さんの話はとても弾んだ。やがて二人は、アーティストとしての姿勢について語った。

松蔭 ぼくが若かった頃、インスタレーションという性格柄、作品が売れなかった。評価してくれる人もいるのに、お金が伴わない。でもそのぶん、純粋に作品制作に向き合えた。それがよかった。

地主 私も映像だから作品が売れなくて。しかも制作には費用がかかって……。でも、映像は自分に合っている。

松蔭 自分の表現手段として映像がフィットしてるということだよ。夢中でいられること、集中できること、苦しいけど楽しいこと、それがすでに見つかってるんだから、徹底的にやればいいんだよ。

地主 ありがとうございます!


構成:新川貴詩

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

1965年、福岡県生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。在学中に平野治朗とアート・ユニット「コンプレッソ・プラスティコ」を結成し、90年にベネチア・ビエンナーレに参加。以来、個展やグループ展多数。主な個展に「『著者近影』 松蔭浩之・文芸家の肖像写真展」(男木島図書館、香川、2016)など。アーティスト・グループ「昭和40年会」会長も務める。今年度の「瀬戸内国際芸術祭2016」に出品。
ミヅマアートギャラリー
http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)

地主麻衣子(じぬし・まいこ)

1984年、神奈川県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。映像作品を中心に、展覧会出品多数。主な個展に「おおきな口、ちいさな手 もしくは ちいさな口、おおきな手」(Art Center Ongoing、東京、2015)など。主なグループ展に「リターン・トゥ トーキョーワンダーサイト レジデンス2015-2016」(トーキョーワンダーサイト本郷、東京、2016)、「Zero Gravity」(Matadero Madrid、スペイン・マドリード、2015)など。
http://maikojinushi.com/
5月28日〜6月25日、HAGIWARA PROJECTS(新宿)で個展『新しい愛の体験』を開催

地主麻衣子

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