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トーキョー・アートビジョン
No.020 全く役に立たないものを、わかってもらう
語り手:アーティスト 明和電機・土佐信道(とさのぶみち)氏

品川区にある明和電機アトリエ
品川区にある明和電機アトリエ
「魚コード」や「ノックマン」、「サバオストラップ」など、一度は目にしたことがある明和電機の作品。その魅力は、現代美術に興味の無かった人にまで伝わっています。量産された作品を多くの人が購入することで、日常生活にアートが入り込む。そんな今の状況をつくったのが、明和電機の土佐信道さんです。前回に引き続き今回は、明和電機とはどんなアートなのか。作品誕生までのプロセスや、マスに向けて作品をつくる方法、つくった作品を広く伝えるテクニックについてお話しいただきました。

明和電機はプレゼンテーションアート
「製品デモンストレーション」と呼ばれるライブパフォーマンス
「製品デモンストレーション」と呼ばれるライブパフォーマンス

 現代美術は大好きなんですが、そのマーケットに納得できなかったんです。銀座の画廊を借りて50万円払って、お客さんが30人しか来なかった、作品が売れなかった、みたいなことはしたくなかった。高校のとき、お兄ちゃんと一緒にヤマハのポピュラーミュージックコンテストに出たことがあるんです。成り上がるため、早く世に出るためには、コンペやオーディションを受けることが必要だと思っていました。だから僕は、そういうマスに向けての音楽業界のやり方のようなものがしっくり来ていたんですね。

 ただ、コンテストを受けてグランプリをとっても、そのあとが問題。そこで目立っても続かなければいけないんです。みんなに受け入れられるようなものを現代美術作家がつくるには、才能がいるんですね。美術ってすごいナロー(狭い)な世界で、すごく厳しいものじゃないですか。まず自分の作品を知ってもらうのが難しい。ひとり黙々と作品づくりをする一方で、つくったものを大衆に対してものすごいプレゼンテーションするなんて。「どうもー、明和電機でーす!」って。ふつう作家の人はそんなに明るくないから大変ですよ。僕の特殊性はそこにあると思っています。つまり明和電機はプレゼンテーションアートです。


近所のおばちゃんにまで伝えるテクニック

 明和電機の作品は、大衆に広めるための手法を取っています。まず、アート作品としてつくりますよね。それから量産のマルチプル(複製された)作品、最後に販売できるグッズへ展開していきます。グッズになっても、最初につくったアート作品と同じコンセプトにつなげていく、というようにしています。つまり、打楽器のシリーズから、ノックするキャラクターをつくって、マルチプルのオモチャ「ノックマン」を出していく、というようなプロセスです。

KnockMan Family(音の出るゼンマイのおもちゃ。前列左からノックマン、ケロタマ、チャチャ。後列左からコロン、ポロロン) Photo : Jun Mitsuhashi
KnockMan Family(音の出るゼンマイのおもちゃ。前列左からノックマン、ケロタマ、チャチャ。後列左からコロン、ポロロン) Photo : Jun Mitsuhashi

 作品をつくるとき、最初はぐじゃぐじゃなんです。作家ってどろどろしたもの、情念があるでしょ。それがないと創作のエネルギーにならない。でも、そのまま吐き出すのがいやなんです。たとえばエミール・ガレがなぜあんなに有名になったのかというと、アーティスト半分、化学者半分だったからでしょう。それまで偶然に任せていたガラスの色を、徹底的に完璧なデータをつくることで、同じ色のガラスを再現できるようにした。それによって、芸術品と呼べるガラス製品を量産できた。そういう感じですね。ですので、まず思いついたイメージや論理を、ひたすらスケッチしていきます。その後、量産できるものにすると。工学部の人なら設計図から考えるのでしょうが、僕には完成図が先に見えてしまったんだもん(笑)、という感じです。

魚コード(魚骨型の電源用延長コード) NAKI-DX 76×1010×50mm 250g Photo : Jun Mitsuhashi
魚コード(魚骨型の電源用延長コード) NAKI-DX 76×1010×50mm 250g Photo : Jun Mitsuhashi

 制作を終えてからは、伝えることを考えます。僕は大衆に興味があるんです。現代美術は一部の人のものという感覚があるのですが、そういうポッシュな傾向に納得がいかない。近所のおばちゃんにまでわかってほしい。そこで、作品のタイトル、名前というのが重要になると思うんです。製品とか商品とか、つくった作品が世界のどこにはまるというのはネーミングによって決まるので、相当考えないといけない。「コンポジションA」とかだめなんですよ。「無題」とかありえないんです(笑)。「ナニを放棄してるんだ!」って怒りたくなりますね。

Zihotch(ダイヤルを回し時報で時間を確認する時計) Photo : Jun Mitsuhashi
Zihotch(ダイヤルを回し時報で時間を確認する時計) Photo : Jun Mitsuhashi

 もうひとつ、僕は筑波大学でメディアアートを学びました。20世紀の芸術って何? と歴史を紐解いたとき、メディアの利用があるんですね。20世紀に入っていろいろなアートが出てきましたが、メディアを利用して製品をつくるようになった。たとえばCDをつくったり、ビデオをつくったり、マスプロダクトをつくったり。そういうものをつくるときには、テクニックがいるんですよ。量産のおもちゃをつくろうと思ったら機械加工のテクニック、デザインのテクニックが必要です。レコーディングしようと思ったら音楽の知識もなくてはいけない。もしそういうマスプロダクト、マスに向かって伝えたいなら、テクニックを学ばないといけない。路上で絵を描いて、「みんなに売りたーい!」というだけでなく、マーケットのことを勉強したり、複製するにはどうしたらいいか、というテクニックを学ぶべきですね。


プロデュース的な企画も作品をつくることと同じ
アトリエで開催されたワークショップの様子 Photo : Takayuki Magata
アトリエで開催されたワークショップの様子 Photo : Takayuki Magata

 先日「制作のプロセスについて話をしてくれませんか」というオファーが、南アフリカからありました。そう、世界は広いんです。15年やってきて、いろいろな国や地方に行きました。ライブで行くことが多いのですが、どんな国でもお客さんに通じるみたいで、ゲラゲラ笑って見てる、ウケるんですね。あと「オモケン(ナンセンス・オモチャ研究所)」というナンセンスなオモチャを本気でつくるワークショップを、明和電機のアトリ工でやっています。〈魚器〉シリーズをつくったノウハウを元に、全く役に立たないものを発想してつくっていくのですが、子どもだけでなく、大人にも好評でしたね。

 現在は、こうした「バカロボ」とか「オモケン」とか、これまで明和電機がやってきた制作のノウハウを、世の中に問う、ひろく募集するということをしています。そういったことは、制作、つまり内向的なものが外に向かう作業とやっていることは変わらないんです。やりながら「自分とはなにか」を考えて、自分の制作プロセスを厳密にしてるんです。そう、みなさんも、自分の中へのダイビングは定期的にするべきですね。中途半端に、答えをGoogleで探さずに、メディアのダイエットというか遮断をして、ずぶずぶとまずは自分の中に落ちろ、と。そうしたら核が見つかるんですよ。これだな、っていうものをつかんだら、浮上して外に出ろ、という感じですね。

インタビュー・文/藤田千彩
(C)Yoshimoto Kogyo Co., Ltd./Maywa Denki

次回は…
アーティスト、西尾康之さんを紹介します。[12月11日(木)アップ予定]

 
土佐信道 写真
Photo : Jun Mitsuhashi
 
土佐信道
(とさのぶみち)

1967年、兵庫県生まれ。1992年、筑波大学大学院芸術研究科修士課程修了。1993年にアートユニット「明和電機」を結成。青い作業服を着用し、作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼ぶなど、日本の高度経済成長を支えた中小企業のスタイルで活動。代表作品に、魚をモチーフにした〈魚器〉シリーズ、オリジナル楽器〈ツクバ〉シリーズなどがある。2003年、アルスエレクトロニカ・インタラクティブアート部門准グランプリ受賞。近年は日本にとどまらず、海外でも展覧会やライブパフォーマンスを行っている。また、CDや映画制作、本の執筆だけでなく、ロボットコンテストのプロデュースや日本各地でワークショップを開催するなど、既成の芸術の枠にとらわれることない活動を展開。2006年より、明和電機から独立させた〈EDELWEISS〉シリーズの作品制作も手がけている。
http://www.maywadenki.com/

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