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オリジナルの対話型鑑賞を体験する

東京都写真美術館のティーチャーズプログラム[後編]

イベント・レポート

No.023
event report 23

東京都写真美術館で開催されたティーチャーズプログラム。今年は都内の小・中・高等学校や特別支援学校で働く15名の先生たちが参加しました。前編では「フォトグラム」という技法による写真のプリント体験を紹介。後編では対話による鑑賞プログラムをレポートします。東京都写真美術館が独自に開発したゲームも必見です。


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2017.01.23

会話を弾ませるためのオリジナルゲーム

「美術って難しい」。「どうやって楽しんでいいかわからない」。
そんな人に、対話による作品鑑賞は有効です。複数人で作品を見ながら、思ったことや気づいたことを話し、作品の見方を深めていく鑑賞方法。作品を見たときの個々の感じ方を尊重できるため、美術館や学校の授業などに導入されています。

特に東京都写真美術館の鑑賞プログラムは、作品を見る前に準備運動としてゲームを行うのがポイント。好きなように感じ、好きなように言葉を発してもいい。そう言われても、作品を目前に言葉がなかなか出てこない児童や生徒もいるかもしれません。そこで東京都写真美術館が考えたのは「色と形と言葉のゲーム」です。

event report 23
「からい」と感じたパーツを持って、なぜそう思うのかを説明

使うのはさまざまな形に切られた色紙のパーツと、言葉が書かれたカード。ファシリテーター(進行役)があるお題を出しました。
「この中から『からい』と感じるパーツを選んでみましょう」。
テーブルに並べられた30枚以上のパーツから「からい」と思うものを一つ選びます。次になぜそう感じたのか、参加した先生たちは順番に発表していきました。
「刺さりそうな形で強そうだから」「黄色い色がスパイスのイメージがあります」とさまざまなコメントが出ます。

event report 23
さまざまな⾔葉のカード。ファシリテーターが提⽰したパーツを⾒て、イメージされる⾔葉を選ぶ
event report 23

続けて今度は一つの色紙のパーツからどんな言葉がイメージできるか、言葉のカードを選ぶゲームを行いました。
「このゲームは、見えているイメージと自分の言葉をつなぐために行っています」と、教育普及プログラムを担当する学芸員の武内厚子さん。
「抽象的な形や色と、具体的な言葉をつなぐ練習です。何を選んでも正解ではないし間違いでもないから自由に発言していい。その経験があると、作品を見たときに、より言葉が出るようになります」
このあと、いよいよ展示室で作品を鑑賞します。

作品について、それぞれの考えを引き出しみんなで話す

コレクション展を開催中の2階の展示室へ。鑑賞するのは写真家・北島敬三の作品シリーズ〈PORTRAITS〉。ある3人のモデルのポートレートが4~5枚ずつ展示されていました。

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北島敬三〈PORTRAITS〉展⽰⾵景(総合開館20周年記念 TOPコレクション「コミュニケーションと孤独」、東京都写真美術館、2017年)

はじめの1分間で作品を自由に観たあと「何か気づいた人はいますか?」と武内さん。約10分間の対話が始まりました。

「同じ人の写真ですが、同じ人でもそれぞれ髪型が違います」とそーっと発言する参加者の先生。
「そうですね。見え方が違いますね」(武内さん)
「どれも無表情なので、はじめは髪型の違いに目がいきましたが、だんだんとシワやシミなどの違いもあることに気づきました」(参加者)
「無表情なので、表情以外の部分の違うところ、同じところが見えてきますね。ほかに何かありますか?」(武内さん)
「年齢が違うみたいです。左から若い順に展示されています」(参加者)
こうした武内さんのファシリテート(ナビゲート)で限られた時間でも、言葉が次々と出てきました。

「対話によって自分の見方だけではなく、ほかの参加者の気づきも知り、作品の見方が変わっていきます」と武内さん。気づかなかったことや別の感じ方を、ほかの人の言葉を通して知る。それも対話による鑑賞の面白さの一つです。

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教育普及プログラムを担当する学芸員の武内厚⼦さん(左)と参加者。

学校の授業や校外学習に活かせるティーチャーズプログラム

「どのように子供が反応するだろう、普段の授業にどんなふうに生かせるだろう、と想像しながら取り組めました」と、参加した小学校の先生が今日の感想を語りました。
さまざまな教科の授業や校外学習に役立てるほか、ミュージアムやホールで働く学芸員や職員に出会い、学校での活用の機会を探れるティーチャーズプログラム。今年は東京都写真美術館のほか、5つの施設で開催しました。
・東京都美術館(上野):アート・コミュニケーション事業の紹介と展示鑑賞ワークショップ体験
・江戸東京たてもの園(武蔵小金井):昔くらし体験、「けんちく体操」体験、園内見学
・東京都江戸東京博物館(両国):ワークシートのつくり方
・東京芸術劇場(池袋):演劇ワークショップ
・東京文化会館(上野):音楽ワークショップ
都内の小中学校や高校、特別支援学校で働く教員であれば、公立・私立にかかわらず参加ができます。各施設の特徴を生かし、毎年夏に開かれるこの特別プログラムをぜひ一度体験してください。(平成29年度のプログラムは終了しました)

文・構成:佐藤恵美
写真:中川周

東京都写真美術館

◎東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内
◎TEL:03-3280-0099

https://topmuseum.jp

東京都写真美術館のスクールプログラムについてはこちらから

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学校と文化施設をつなぐティーチャーズプログラム2017

小中高等学校、特別支援学校の教員を対象に、各施設の教育普及事業を体験できるプログラム。
2017年度は6施設で実施。
◎対象:都内小中高等学校・特別支援学校教員
◎定員:各プログラム20名程度
◎参加費:無料

http://www.rekibun.or.jp/education/index.html

[これまでのプログラムの紹介]

◎2016年の様子
・先生たちがつくる、鑑賞ワークシート <前編> ◀イベレポNo.41へのリンクを貼る
・先生たちがつくる、鑑賞ワークシート <後編> ◀イベレポNo.42へのリンクを貼る

◎2015年の様子
・「ティーチャーズプログラム」とは ◀イベレポNo.30へのリンクを貼る
・「昔くらし体験」石臼ひき、火おこし等 ◀イベレポNo.31へのリンクを貼る
・身体を使って建築を知る「けんちく体操」 ◀イベレポNo.32へのリンクを貼る

[お問い合わせ]

東京都歴史文化財団 事務局総務課企画広報係
◎TEL:03-5610-3503

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