20年の歴史がある「写真新世紀」は、かつての受賞者が第一線で活躍をしています。大森さんも佐内さんも蜷川さんも「写真新世紀」で受賞経験がありますが、彼らが今までの審査員に見出されたように、彼らの新しい感覚、視点で次の世代を発掘してくださればと考えています。このように、新たな審査員によって選出された写真家が将来活躍して、また次の展開につながればすばらしいなと。先進性があって、常に新しいジェネレーションに引き継がれていくコンテストにしていきたいですね。審査員の引き継ぎをお願いした時、最初はみなさん「え?」と戸惑っていらっしゃいましたが、「写真新世紀」は巣立った場だからと覚悟を決めてくださいました。椹木さんにも清水さんにも、快くお引き受けいただけました。応募者がこの変化をどう受け止めるか、その反応は作品でわかると思います。傾向が変わっても、応募が減っても増えても、これまでの「写真新世紀」を全肯定で次のステップへ踏み出そうと考えました。
キヤノンとしては、写真というキーワードで表現の可能性にチャレンジしてほしいと考えているのが「写真新世紀」です。賞の授与は、その後の作家生活を保証するものではありませんが、評価されることによって自分がいままでやってきたことに自信がもてたり、モチベーションを上げるきっかけになります。受賞できなくても、それが悔しいとか、なぜあの作品が受賞して自分の作品が受賞しなかったのか。その理由を考えることが、新たなパワーを生むこともあるでしょう。結果が不本意でもめげず、自分の信念を貫き、柔軟に前に進んでいただきたい。そのために「写真新世紀」を利用してもらえたら嬉しいですね。ですから、どんどん自由に、気軽にご応募いただきたいです。それが、写真の表現を深める近道かもしれません。また、新しい表現というのは奇をてらうことではなく、今あるものでどういう表現が自分にできるのか。そのチャレンジの成果こそ、次世代の写真表現に結びつくのではないかと思います。
 「写真新世紀東京展2009」(東京都写真美術館)展示風景
 2008年度グランプリ受賞者 秦雅則新作個展「幼稚な心」展示風景
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